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N-RAW × RED LUT 色調整の裏側を公開!
Nikon Z6III × RED LUTs for N-LOG で撮影した、Vlog 作品『RETROSPECTIVE TOKYO』のカラーグレーディング(色調整)作業の工程を、DaVinci Resolve の画面をもとに解説していきます。
1. はじめに
この記事で紹介する Vlog 動画は、Nikon Z6III の N-RAW で収録した撮影クリップを、Mac 版の DaVinci Resolve 19 Studio で色調整をして、仕上げたものになります。
Nikon Z6III
6K(6048×3402)12-bit Nikon RAW・標準圧縮
DaVinci Resolve のプロジェクト設定は、以下の通りになります。
Color Space & Transforms
Color science:DaVinci YRGB
Timeline color space:DaVinci Wide Gamut
Output color space:Rec.709-A
3D lookup table interpolation:Tetrahedral
![](https://assets.st-note.com/img/1733573774-3mU1lYpXZnq9JG0eO8h74QAx.jpg?width=1200)
2. DaVinci Resolve のノード構成
まずはじめに、DaVinci Resolve のノード構成を紹介したいと思います。
複数の撮影クリップをグループ化して、まとめて処理をする Groups の機能を利用しているので、ノードを配置する Node Editor 画面は、4 階層に分かれていますが、今回は Clip、Group Post-Clip の 2 階層のみを使用しています。
・Group Pre-Clip
・Clip
・Group Post-Clip
・Timeline
撮影クリップのグループ分けに関しては、徐々に変化していく太陽光の色温度を考慮して、Daylight(日中)、Evening(夕方)の大きく 2 種類に分類して、それぞれ異なる LUT を適用しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733636479-z8wKYXalxrf4NZgOB0Mebp1J.jpg?width=1200)
グループ全体に作用する Group Post-Clip の階層では、作品全体のルックを設計していますが、今回使用している RED LUTs for N-LOG は、Log to Log 形式ではない昔ながらの LUT なので、Color Space Transform 機能は使わないノード構成となっています。
具体的な手順としては、まず最初に、最後部のノードに LUT を適用した上で、ホワイトバランス、コントラストの調整をしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733574058-YEO7fsuG04jKSo3xBz2IM5Jn.jpg?width=1200)
今回は撮影時に、NiSi TRUE COLOR ND VARIO という可変 ND フィルターを使用していますが、ホワイトバランスに関しては、その可変 ND により起こるカラーシフトを解消するような意味合いで、調整をしています。
Color Temp: -500.0 / Tint: -10.00
![](https://assets.st-note.com/img/1733576445-vF756VJSow9HhZCTc80IkAfe.jpg?width=1200)
コントラストに関しては、質感になるべく影響が出ないよう、トーンカーブは使わずに、Primaries のコントラストの項目でざっくり調整をしています。
Contrast: 1.050 / Pivot: 0.350
![](https://assets.st-note.com/img/1733576487-ke2WrXLCzKZYuaThVJyPmlAQ.jpg?width=1200)
また LUT に関しては、Daylight(日中)のグループでは、FILM BIAS という LUT を適用していますが、それにより、標準的な Rec.709 のルックよりも極端に彩度が低くなるので、イメージ全体の彩度を上げる処理をしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733586372-sSDN5WMzHyuAdmoKVPT2ZJf7.jpg?width=1200)
彩度の調整に関しては、Saturation、Color Boost などいろいろな選択肢がありますが、今回は “減法混色” により、フィルムルックと相性よく調整ができる ColorSlice ツールで、Sat の数値を上げています。
ColorSlice - Sat: 1.30
![](https://assets.st-note.com/img/1733576679-X6Wu8bCHGQaOtZVTq9SAYhKJ.jpg?width=1200)
ただ、ColorSlice でイメージ全体の彩度を上げてもなお、植物(緑色)の発色に不自然さが残っていたので、Color Shift DCTL というプラグインを追加して、さらに緑色の発色をよくしています。
Color Shift DCTL
Green Sat: 0.800
Green Density: 0.800
Yellow Hue: -0.150
![](https://assets.st-note.com/img/1733576883-SqjnriDab5dKXuIsG0gH3ZVw.jpg?width=1200)
Color Shift DCTL は、ColorSlice と同じく 減法混色 の方式で、彩度を調整できるツールになりますが、青空、植物、肌色などの “記憶色” に関してはとりわけ意識をして、違和感のない色になるよう調整をしています。
参考までに、Rec.709 のイメージと比較をしてみると、こんな感じになります。Rec.709 のルックを見るてみると、特に緑色の発色が弱くなるような傾向も見られないので、このあたりの発色の悪さは、LUT の特性によるものと考えられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1733661803-r2sGbITARnzlgMqZjLcS7fDH.jpg?width=1200)
露出の調整に関しては、Camera Raw の現像設定にある Exposure(露出)の項目で、クリップ単位で調整をしています。これはあくまで想像ですが、感覚値としては、 Exposure の数値を -1.0 に設定すると、露出が -1 STOP 暗くなるイメージです。
![](https://assets.st-note.com/img/1733577494-to2FyI9wpMvEYmeXBHS6QniL.jpg?width=1200)
また、クリップ単位で個別に作用する Clip 階層 では、Power Window を利用したノードを中心に、個別のクリップに対して気になる部分の調整をしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733577726-ldqP6pNBW2fkxDeKRTY719jg.jpg?width=1200)
一方、Evening(夕方)のグループでは、FILM BIAS の LUT を適用すると発色が渋くなり、自然なニュアンスが損なわれる感じがあったので、FILM BIAS OFFSET という LUT を適用しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733578288-antP2xoDXQWejEByOGF3Tcwv.jpg?width=1200)
FILM BIAS OFFSET は、中間域からハイライトが暖色になり、シャドウ域が寒色になる、いわゆる Teal and Orange っぽい色あいになる効果がありますが、夕方のオレンジ色の太陽光と組み合わせると、肌色がリッチになり、シャドウが青くなることで、ルックにめりはりが出るような感じが見られます。
![](https://assets.st-note.com/img/1733478867-Wpvazhi6wScZR2EGom08Ldnb.jpg?width=1200)
逆に、FILM BIAS OFFSET を適用すると、ハイライトが暖色になり、ルックが濃厚になってしまうので、自然光のすっきりした透明感 を出したいような場合は、FILM BIAS が適していると言えます。
![](https://assets.st-note.com/img/1733478928-eH5TjCk7QbrGP82lyUsB1Ft3.jpg?width=1200)
3. Film Grain の調整
動画を YouTube にアップロードすると、再エンコードされるため、映像の細かなディティールが認識できなくなることもありますが、映画用フィルムの質感を再現するために、今回は FilmConvert Nitrate というプラグインを使用して、Film Grain の効果を追加しています。
FilmConvert Nitrate
Film Size: 35mm Academy
Grain Strength: 75.0
Grain Size: 14.0
Grain Saturation: 100.0
Image Softness: 0.0
![](https://assets.st-note.com/img/1733578498-SNHeI8uWkZTEgJzfvql4R5VQ.jpg?width=1200)
イメージを拡大してみると、以下のようになります。
![](https://assets.st-note.com/img/1733659082-KhQ5812vDxJGUSeMbZHdTYzN.jpg?width=1200)
また作品の冒頭のカットでは、8mm フィルム っぽい質感を再現するために、Film Grain の効果を強くして、さらに解像感をソフトにしています。
FilmConvert Nitrate
Film Size: Super 8
Grain Strength: 25.0
Grain Size: 70.0
Grain Saturation: 100.0
Image Softness: 67.5
![](https://assets.st-note.com/img/1733659069-IBHoUqYpfcmwGahtEe8C9rJj.jpg?width=1200)
同じような効果は、DaVinci Resolve 19 から追加されたエフェクト機能である、Film Look Creator でも再現ができるようです。
![](https://assets.st-note.com/img/1733578918-NS2zBrWdi487E6gVxPYTFvhM.jpg?width=1200)
また作品のラストカットに関しては、日没後の暗い環境で撮影しており、シャドウ域の RGB ノイズが気になる感じがあったので、ノイズ除去 の処理をした上で Film Grain を追加しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733659075-KeUfgxo8dsMO2JNhupialq4L.jpg?width=1200)
ノイズ除去の処理には、これまで Neat Video というプラグインを使用していましたが、今回のケースではうまく機能しなかったので、DaVinci Resolve の純正エフェクトである Noise Reduction を使用しています。
Noise Reduction ツールは、これまで数値の調整がかなり面倒でしたが、DaVinci Resolve 19 から搭載された、AI 解析による新機能 UltraNR を使用することで、ワンクリックで自動処理ができるなど、かなり便利になっています。Noise Reduction は、Clip 階層の最初のノードに適用しています。
Noise Reduction
Temporal NR -
Frames Either Side: 3
Mo. Est. Type: Better
Motion Range: Small
Spatial NR -
Mode: UltraNR
![](https://assets.st-note.com/img/1733581097-WVKyHJA8fZw5G2urYQ3XINad.jpg?width=1200)
4. N-RAW の現像設定
N-RAW の撮影クリップを DaVinci Resolve で開いてみると、Camera Raw の設定の中に、色温度、コントラストなどの基本的な項目と合わせて、Lens Distortion、Lens Vignette という、すこし珍しい項目があることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1733583528-uiLeTNE6xqzob7GwJ4mp2lOF.jpg?width=1200)
レンズの歪み補正、周辺光量の補正などは、Adobe Lightroom をはじめ、写真の現像ソフトには当たり前のように搭載されている機能ですが、DaVinci Resolve の Camera Raw 設定の中では、他社のカメラには見られない、Nikon 独自の設定項目となっています。
Lens Distortion に関しては、レンズの歪曲を調整するもので、OFF にすることで、歪みの自動補正を解除することが可能となります。
![](https://assets.st-note.com/img/1733584107-E3Wxe5ur7AKM6gQfmVnFUGzJ.jpg?width=1200)
歪みの補正値はレンズごとに異なり、その効果も使用するレンズごとに変わりますが、被写体のサイズ感を自然なニュアンスで調整できるという点では、この Lens Distortion ツールはわりと便利で、今回の Vlog 動画でも有効活用しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733585976-obuiO6tZWs8qzNrVDeJvmkYd.jpg?width=1200)
一方、Lens Vignette は、レンズの周辺光量補正をするもので、数値を上げていくとイメージの周辺部が明るくなります。数値を最大にすると、イメージの周辺光量落ちが完全になくなる印象です。
![](https://assets.st-note.com/img/1733584371-RN89Twoa1lEfuSvBchX3jikY.jpg?width=1200)
イメージの周辺光量(Vignette)は、シネマ作品のグレーディング作業の中でも、よく調整する要素ですが、それをパラメーター上で簡単に調整できるという意味では、この Lens Vignette ツールはかなり便利で、今回の Vlog 動画でも活用しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1733585985-jVwGq7aUpstxmQEFNCi5J1Be.jpg?width=1200)
その他、Camera Raw の設定では、Sharpness の数値を 0 にするという処理をしています。
NIKKOR Z のレンズは非常にキレがよいので、フィルムルックを再現する上では、その解像感をすこしマイルドにして、オールドレンズっぽい質感に歩み寄ることで、映像の “生っぽさ” を軽減できる感じがあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1733584323-bvVgKTxM6D7HoQN24ujm3GaJ.jpg?width=1200)
5. あとがき
RED はこれまで、髑髏マークのロゴを掲げ、顎ひげを蓄えたマッチョな男たちが製品を紹介する、みたいな世界線でブランド展開をしてきた歴史があります。
RED LUTs for N-LOG にも少なからず、そうしたニュアンスが含まれており、LUT を適用すると、彩度が極端に低くなるという側面があるので、もし色あいに自然なニュアンスを残したい場合は、ColorSlice ツールなどでの彩度の調整が、必須といえそうです。
一方、Nikon RAW に関しては、品質もよく、レンズの歪み補正、周辺光量補正などのツールを含め活用することで、グレーディング作業がかなり楽になる印象があります。またシネマティックな質感を目指す上では、高解像度な Nikon Z レンズの Sharpness を低減できる、という点も RAW 撮影のメリットと考えられます。
※ 当記事は、必要に応じて加筆・修正を加えアップデートをおこないます。
---------- Reference ----------
🗒️ RED監修のN-Log用LUT無料配布を開始|Nikon
https://www.nikon-image.com/products/info/2024/0912.html
🗒️ N-Log 用 LUT|Nikon
https://downloadcenter.nikonimglib.com/ja/download/sw/258.html
🗒️ Z6III|Nikon
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z6_3/
🗒️ NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S|Nikon
https://www.nikon-image.com/products/nikkor/zmount/nikkor_z_24-70mm_f28_s/
🗒️ 可変 ND TRUE COLOR ND VARIO|NiSi Filters Japan
https://nisifilters.jp/pages/vario
🗒️ Color Shift|mononodes
https://mononodes.com/color-shift-dctl/
🗒️ FilmConvert Nitrate|FilmConvert
https://www.filmconvert.com/nitrate
🗒️ Neat Video|Neat video noise reduction
https://www.neatvideo.com/