Panasonic デジタルシネマ・カメラの基礎知識
シネライクな映像を世界中に普及させた Mini DV カメラ『AG-DVX100』から、Dual Native ISO 搭載のハイエンドモデル『VARICAM 35』シリーズまで、教養として覚えておきたい Panasonic デジタルシネマ・カメラの基礎知識を紹介していきます。
当記事は、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』で公開されたものです。限定公開を目的に有料化しています。公開日:2022.3.19
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393
1. Panasonic カメラ開発の歴史
1918 年、Panasonic は大阪の小さな町工場「松下電気器具製作所」として創立をします。その事業は、電球のソケットの製造からはじまり、エアコン、洗濯機などの白物家電、照明器具などの住宅設備、リチウムイオン電池など車載機器まで、今ではあらゆる分野の電子機器の開発を手がける、世界有数の “総合家電メーカー” として成長を遂げています。
映像分野では、Panasonic は 1985 年に自社初となる VHS カメラ『NV-M1』を発売し、1988 年には世界初となる 光学手ぶれ補正機能 を搭載した小型ビデオカメラ『PV-460』を発売します。
その後、Panasonic は総合家電メーカーとして家庭用の小型ビデオカメラの開発を続けていきますが、2000 年代になると、本格的に写真用カメラの開発への取り組みを開始します。
2001 年、Panasonic は自社ブランド “LUMIX” を立ち上げると、コンパクトデジタルカメラの販売をはじめます。当時、Nikon、Canon など名だたる有名ブランドがある中で、Panasonic はドイツの名門 Leica と組んで、この LUMIX の開発を行います。
また 2005 年、Panasonic は OLYMPAS との協業を発表すると、マイクロフォーサーズ規格の小型デジタル一眼カメラの開発に乗り出します。2006 年にその初号機となるマイクロフォーサーズ・カメラ『DMC-L1』を発売し、2008 年には 世界初のミラーレス一眼カメラ『DMC-G1』が誕生します。
そして 2009 年、Panasonic は動画性能に優れた GH シリーズ の初号機『DMC-GH1』を発売。2014 年に発売されたその後継機『DMC-GH4』は、世界初となる 4K 撮影を実現したミラーレス一眼として、デジタルシネマ業界でも大きな話題となります。
映像の世界に話を戻すと、2002 年 に Panasonic は自社初となるデジタルシネマ・カメラ『VARICAM』を開発し、デジタルシネマの世界に本格的に足を踏み入れていきます。
2. VARICAM:デジタルシネマ開発のはじまり
2002 年に発売された Panasonic のデジタルシネマ・カメラの初号機『AJ-HDC27F(VARICAM)』は、バリアブル・フレームレート機能 により、HD 720P ながら最大 60 fps までのハイフレームレート撮影が可能で、ハイライト部の階調を拡張したシネマガンマ(F-REC)を採用しています。
📷 AJ-HPX3700|Panasonic Business
この VARICAM は、SONY が 2000 年に開発した HDW-F900 と並んで、デジタルシネマの黎明期に数々の CM・映画作品で使用されていました。日本では、2002 年公開の映画『突入せよ!あさま山荘事件』をはじめ、VARICAM の開発に携わる撮影監督の 坂本善尚 氏が手がけた作品が、その使用事例としてよく知られています。
3. AG-DVX100:シネマルックの民主化
2003 年発売の『AG-DVX100』は、世界初の 24P 撮影 を実現した Mini DV カメラです。DVX100 は 1/3 型 CCD イメージセンサーを搭載しており、SD 解像度ながら、シネマルックを再現したガンマ設定(CINE-LIKE)が話題となり、当時は MV など低予算のデジタルシネマ作品で人気モデルとして使われていました。
またこの DVX100 には、P+S Technik 社が開発した『Mini 35』というレンズコンバーターを取り付け、PL マウントのシネレンズを使用することで、被写界深度の浅い “シネマティックな映像表現” ができるというオプションがあり、この撮影システムは、2008 年に Canon EOS 5D Mark II が開発されるまで、デジタルシネマ業界の大きなトレンドとして続いていきます。
📷 P+S Technik Mini35 Digital Image Converter
この Mini 35 をはじめとする P+S Technik 社の Digital image Converter は、レンズアダプター内で回転する “粒子感のあるガラスの円盤” 自体を撮影することで、あらゆるビデオカメラで PL マウントのシネレンズが使える、という構造をしています。P+S Technik 社は、近年ではオールドレンズを Cine-Mod 版としてリハウジングする業者としても有名なドイツの企業です。
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