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Cooke シネレンズの基礎知識

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Cooke Look とは? Speed Panchro、Varotal など数々の人気モデルを開発してきた、英国の老舗ブランド Cooke のシネレンズを使う上で、おさえておきたい基礎知識を紹介していきます。


発行部数:10


1. Cooke Optics の歴史

Cooke Optics は、映画用のシネレンズを開発する、創業 130 年を超える英国の老舗レンズメーカーです。Cooke のレンズの特徴を語る上では、Cooke Look、Speed Panchro、/i Technology など、いくつかの重要なキーワードがありますが、まずはその歴史を簡単にふり返ってみたいと思います。

Cooke Optics

1886 年、Cooke Optics は Taylor, Taylor and Hobson 社として創業をします。Cooke は、そもそもは Taylor-Hobson 社が開発するレンズのブランド名で、1893 年に写真用レンズの開発で最も重要な発明となる、3 群 3 枚のレンズでさまざまな収差を補正する特許技術 Cooke Triplet を開発し、以降、写真・映画・印刷業界向けにレンズの開発をしていくことになります。

Cooke Optics

そして 1930 年、Cooke はその代表作となる、単焦点レンズ Speed Panchro の初期モデルを発売します。その後、Speed Panchro は Series II、Series III と改良を重ね、1960 年代まで製造されることになります。以降、Cooke の単焦点レンズは S4、S7、S8 など、この Speed Panchro シリーズを発展させるかたちで、新製品が開発されていきます。

New Cooke Panchro Classics

一方、映画用のズームレンズに関しては、Cooke は 1932 年にそのプロトタイプとなる箱型の光学装置 Varo 40-120mm を開発し、1971 年には、現代的なズームレンズの原型となる Varotal 20-100mm T3.1 の製品化に成功します。以降、Cine Varotal、Cinetal など数々のモデルが開発され、Cooke のズームレンズは、 Angenieux 製品とともに映画業界で定番モデルとして普及していきます。

Cooke Varotal Zoom Lens History

また 2005 年、Cooke は “電子接点” からさまざまなレンズ情報を取得する /i Technology(インテリジェント・テクノロジー)を開発し、当時の人気モデルだった S4 に搭載します。以降、/i Technology は映画業界でレンズデータの標準規格として広く普及していき、Cooke のシネレンズに標準搭載されるようになります。

i Technology

続いて、Cooke の単焦点レンズの現行モデルをまとめて紹介していきます。


2. Cooke の単焦点レンズ

1920 年代にハリウッドで “同録撮影” の需要が高まり、より開放値の明るいレンズが求められる中で、Cooke は 開放値 f2.0(T2.3)の単焦点レンズとして、Series O f/2.0 OPIC という製品を開発します。

以降、Cooke は映画業界のニーズに合わせるようなかたちで、アナモフィックレンズ、マクロレンズ、イメージサークルの大きな 35mm フルサイズ対応モデルから、オールドレンズの質感を再現したモデルまで、さまざまな製品を開発していきいます。

Cooke's NEW Modern Tiny Speed Panchro Cine Lenses!! - CVP

1995 年に発売された Speed Panchro の第 4 世代となる S4 は、開放値が T2.0Super 35 仕様の単焦点レンズのシリーズで、12mm から 300mm までの 18 本のレンズで構成されています。Cooke のシネレンズの中では、焦点距離のラインナップが最も豊富で、12mm など広角レンズが開発されているのは、この S4 のみとなります。

レンズの前径は 110 mm、平均重量は 2.5 kg、性能としては開放 T2.0 で最高のパフォーマンスが得られる、という特徴があります。また 2005 年に /i Technology が開発されると、電子接点が搭載された S4/i がリリースされます。さらに 2017 年には、フロントエレメントをコーティングなしのガラスに変更した Uncoated 版 もリリースされています。

S4/i S35

S4/i は ARRI Ultra Prime、Zeiss Super Speed などとともに、フィルム撮影が盛んだった 1990〜2000 年代の映画業界で、人気のシネレンズとして普及していきます。有名なところでは、Wes Anderson 監督の映画『グランド・ブダペスト・ホテル』、ドラマシリーズでは『Breaking Bad』や『Sherlock』などで使用されています。


2009 年に発売された Speed Panchro の第 5 世代となる 5/i は、開放値が T1.4Super 35 仕様の単焦点レンズのシリーズで、18mm から 135mm までの 9 本のレンズで構成されています。

レンズの前径は 110 mm、平均重量は 3 kg 強と S4/i よりもサイズ感がひと回り大きく、重量も重たくなっています。外観としては、Cooke のレンズでは珍しいゴールドの帯と文字が特徴的なデザインとなっています。

5/i S35

同じく 2009 年に発売された Panchro/i は、開放値 T2.8Super 35 仕様の単焦点レンズのシリーズで、18mm から 135mm までの 10 本のレンズで構成されています。レンズの前径は 87 mm、平均重量は 1.5 kg 弱と Cooke の現行製品のラインナップの中では、SP3 に次ぐ小型・軽量なモデルとなっています。

この Panchro/i は、のちにそのモデル名が変わり、Mini S4/i と呼ばれるようになります。また 2011 年には、フロントエレメントをコーティングなしのガラスに変更した Uncoated 版 もリリースされています。

Mini S4/i S35

2014 年に発売された Speed Panchro の第 6 世代となる Anamorphic/i S35 は、開放値 T2.3Super 35 仕様のアナモフィックレンズとなります。25mm から 300mm までの 10 本のレンズで構成されており、65mm に関しては、接写撮影が可能なマクロレンズとして設計されています。

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