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DaVinci Resolve × Apple Silicon:処理を高速化するための基礎知識

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再生がカクつくのはなぜ?? Mac 環境で DaVinci Resolve のパフォーマンスを最適化するために覚えておきたい Apple Silicon、CPU、GPU、Neural Engine に関する基礎知識を紹介していきます。


発行部数:30


1. DaVinci Resolve を高速化するには?

DaVinci Resolve で動画の再生がカクつきを解消するには、❶ レンダーキャッシュを使用する、❷ デコード品質を下げる などの方法がありますが、そうした対処療法ではなく、より根本的に解決するにはどうすればいいのか?

一般的に PC には、複雑な演算処理をする CPU、AI・グラフィック処理など単純な処理を大量におこなう GPU の 2 種類のプロセッサーがあります。

NVIDIA

DaVinci Resolve は、GPU に依存した編集ソフトとして知られています。GPU を活用することで、高解像度の映像の処理に優れており、その最新版となる DaVinci Resolve 18 では 8K 映像のリアルタイム再生を実現しています。また Blackmagic Design によると、とりわけ VRAM(グラフィック処理のためのメモリ)の性能が、DaVinci Resolve の映像処理に大きな影響を与えるとされています。

一般的に Windows 環境では、CPU、GPU など各パーツを自由に選んでカスタマイズ(BTO:Build to Order)ができるので、VRAM の数値の高い GPU を PC に組み込むことで、DaVinci Resolve のパフォーマンスを上げることができます。

Mac Studio - Apple

一方、Mac の場合は、組み合わせられるパーツに制限があり、購入時に Apple が用意する選択肢の中からパーツを選ぶ(CTO:Configure to Order)ことで、GPU の性能を高めることができます。

これまでの Mac では、CPU は Intel、GPU は AMD など、外部メーカーの製品がそのまま Mac のプロセッサーとして使用されていましたが、2020 年発売の MacBook Air、MacBook Pro 13inch、Mac Mini より、Apple は自社開発の M1 チップ を搭載することで、Mac の処理性能を高めています。


2. Apple Silicon のしくみを理解する

Apple が独自開発した M1 チップは、iPhone などモバイル端末向けに開発された Apple Silicon の Mac 版となるシリーズで、CPU、GPU など、異なる種類のプロセッサーを 1 個のチップ(SoC:System-on-a-chip)に統合している、という特徴があります。

M1

その仕組みとして、M1 チップでは CPU、GPU など異なる種類のプロセッサーが同じメモリ(Unified Memory Architecture)を共有することで、高速化・省電力化を実現しています。そのため、M1 チップを搭載した新型 Mac には VRAM という概念がなく、Unified Memory の数値が DaVinci Resolve のパフォーマンスを左右する要素となります。

Unified Memory Architecture

CPU、GPU と並んで、AI 機械学習のための演算装置 Neural Engine が配置されている点にも特徴があります。Neural Engine は DaVinci Resolve にも搭載されていますが、DaVinci Resolve の場合は AI 処理のアルゴリズムとして機能しています。

Apple Neural Engine

また 2021 年発表の M1 Pro、M1 Max 以降のチップには、H.264、H.265、ProRes、ProRes RAW の処理を高速化する Media Engine という、映像処理に特化したプロセッサーも搭載されています。

Media Engine

CPU、GPU、メモリを別々に配置している従来の PC とは構造が大きく異なるので、スペック(数値)だけでは性能の単純比較をすることができないという点が、Apple Silicon 搭載の Mac を見る上でのポイントとなります。

Apple Silicon

現在、Apple Silicon は Mac 向けに 5 種類のチップがリリースされています。


3. Mac ではもう eGPU は使えない?

過去に Apple は、eGPU(External GPU)という外付けの GPU を推奨している時期がありました。この eGPU は、プロセッサーを自由に交換できない Mac の性能を補ったり、ノートブック型 PC の性能を上げるために活用されるもので、過去には Apple 公式サイトで Blackmagic eGPU Pro が、大々的に紹介されていました。

Blackmagic eGPU Pro

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