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演色評価指数 CRI は信用できるのか?
光の色を秒速で評価する? CRI、Ra、Ri、TLCI、CQS、SSI、TM-30-18 など、大量にある「演色評価指数(Color Rendering Index)」のどの部分を見て、どう判断すればいいのか? そのポイントを整理していきます。
発行部数:18
1. 演色評価指数とは?
演色性というのは「光がどれだけ色を忠実に表現できるか?」をあらわす用語です。それを数値化したのが “演色評価指数” と呼ばれるもので、1965年に CIE(国際照明委員会)が最初の規格をリリースして以来、今日までさまざまな規格が濫立しています。
LED ライトの説明欄で、よく「CRI 95 の高演色性」みたいなフレーズを目にしたことがあると思いますが、その数字は一体何なのか?
この記事では、代表的な 6 種類の演色評価指数のデータを読み解くための基礎知識と、そのポイントを整理していきたいと思います。
2.スペクトロメーター
この演色評価指数を測るには、スペクトロメーター という計測器を使います。代表的なモデルとしてはセクニック社の Spectro Master などがありますが、感じとしては露出計のカラー版みたいなものです。
測定結果はこんな感じで表示されます。さまざまな数値、グラフが羅列していて、基礎知識がないと何がなんだかさっぱり分からない不思議な単位と用語が並んでいます。
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これまでのカラーメーターはわりとシンプルな機構で、❶ どれだけ赤いか?青いか?を評価する色温度、❷ どれだけ緑か?紫か?を評価する CC の2種類の指標しかなかったんですが、なぜこんなに複雑になったのか?
その最大の理由が、デジタル化 です。
カメラの CMOS イメージセンサー、ライトの LED 化など、映像がデジタルで構築されるようになると、フィルム撮影向けに設計されたアナログな測定器(カラーメーター)では評価しきれなくなり、このスペクトロメーターが誕生したという話です。
フィルム撮影というと遠い昔の話のように聞こえますが、ほんの10年前までは、デジタルシネマの世界ではフィルム撮影が主流でした。そして、ここ数年で LED ライトも急激な進化を遂げ、これまでのライティングの教科書が塗り替えられつつあるのが 2021 年の現状です。
3. 平均演色評価数 Ra
演色評価指数の中で最も代表的なものが、1937年に CIE が定めた 演色評価数(CRI)という マンセル表色系 の色をサンプルとして、人間の視覚 を基準につくられた規格です。
その評価には大きく2種類の方式があり、❶ 8色(R1〜R8)の色ズレの平均値をみる 平均演色評価数(Ra)と、❷ 15色(R1〜R15)の色ズレを個別にみる 特殊演色評価数(Ri)が一般的に使われています。
❶ Ra = average of Rendering Index
❷ Ri = Special Color Rendering Index
CRI(Ra)の評価に使われるサンプル色は、以下の 8 色です。低彩度の色ばかりが並んでるのが特徴的です。
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CRI(Ra)は何度か改訂をくり返しながら標準規格として世界中に普及していて、家庭用・オフィス用のライトを評価する上では問題ないものの、写真・映像分野では信頼性の低い指標とされている という点がポイントとなります。
4. 特殊演色評価数 Ri
平均演色評価数(Ra)の進化版として 1974 年にリリースされたのが、特殊演色評価数(Ri)という規格です。この Ri は Ra のサンプル色に高彩度の色を追加した計15色の サンプル各色を個別に評価する もので、Ra と同じく人間の視覚を基準につくられています。
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Ri に使われるサンプル色は、以下の 15 色です。高彩度の色とあわせて、肌色のサンプルが追加されている点が特徴的です。ライトのレビュー記事によっては Extended CRI(Re)という Ra の派生版となる指数を紹介するものもありますが、Re はこの 15 色の平均値を意味します。
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CRI の評価ポイントとしては、肌色の再現に関わる R9(赤)の重要性が指摘されており、NHK 技研の検証でも同じような結果が出ています。CRI を利用する場合は R9 の数値、肌色のサンプルである R13、R15 あたりの数値を参考にするのがよさそうです。ただし、Ra の平均値にはこれらのサンプル色は含まれない ので、その点は注意が必要です。
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▶︎ CRI の最高評価 95≦ の意味
CRI の数値は 95 以上が高品質とされています。たとえばライト製品のスペック表記に 95≦ という表現がありますが、あえて具体的な数値を書かないのは、CRI など人間の視覚を基準にした測定法(Standerd Observer)では “明確な色差として出るのが ±5 程度で、それ未満の差はあまり意味がない” というのが、その理由としてあるようです。
5. カメラ基準の標準規格 TLCI
この CRI の評価方法に異論を唱えるテレビ業界の技術者により、映像に特化した規格として作られたのが、TLCI(Television Lighting Consistancy Index)です。
TLCI は 2012 年に EBU(欧州放送組合)が定めたテレビ業界向けの演色評価指数で、Color Checker チャートの 18 色をサンプリングした、人間の視覚ではなく 3CCD カメラを基準にした規格となっています。
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TLCI は Ra と同じく演色性の平均値を 100 点満点の数値として評価します。また TLCI には、異なるライト同士の色ズレ(マッチング率)を測る TLMF(Television Luminaire Matching Factor)という指標もあります。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45629282/picture_pc_f3b306a027ff90dcc2fa8c0b59d4b946.png?width=1200)
人間の視覚とカメラのイメージセンサーでは、色に対する特性が異なるので映像に特化した指標を作り直そう、という設計思想が TLCI を見る上での重要なポイントとなります。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45673359/picture_pc_4c6935329215bc7f328eb8e0874174f0.png?width=1200)
6. 分光スペクトルの評価指数 SSI
SSI(Spectral Similarity Index)は、2018 年に AMPAS(映画芸術科学アカデミー)が定めた演色評価指数で、人間の視覚やカメラなどの基準を持たない規格 のためサンプル色はなく、分光スペクトルのデータ比較による相対的な評価 を行うものとなります。
比較したい光源を選び、分光スペクトル上で波長(色の成分)がどれだけ近いか?を確認するものなので、SSI の数値は常に「比較する光源の名前」と一緒に表示されます。比較対象は D65 などの標準光源以外にも、ライト同士の比較をすることもできます。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45629512/picture_pc_782932effe238290085b40bbbafe2382.png?width=1200)
この SSI は TLMF の機能と似ていますが、TLMF が Color Checker チャートの色で評価するのに対して、この SSI は光の波長(色の成分)を分光スペクトル上で評価する点が異なります。
7. 彩度・色相の評価指数 TM-30
TM-30 は 2015 年に IES(照明技術協会)が定めた演色評価指数で、リアルな生活空間にある 99 色 をサンプリングした、人間の視覚を基準にした規格です。
TM-30 で使われるサンプル色は以下の 99 色で、コカコーラ、オレオなど実在する商品をサンプルしたものがあるのが特徴的です。
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測定項目はたくさんありますが、おもには色の忠実度を測る Rf(Fidelity Index)、色の鮮やかさを測る Rg(Gumut Index)の数値をグラフ化(Color Vector Graphic)して、視覚的に評価できる指数となっています。
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▶︎ 忠実度指数 Rf
Rf は色の忠実度を 100 点満点の数値として表示します。また数値以外にもグラフ化されたデータを見ることで、より細かな情報を得ることもできます。グラフは自然光を正円としたもので、円の形に歪みがある部分が色の再現性が悪いという評価になります。矢印は色のシフト具合を意味します。
▶︎ 鮮やかさ指数 Rg
Rg は色の鮮やかさを 100 点満点の数値として表示します。100 点を超える場合もあり、その場合は色が飽和してる、という意味合いになります。Rf と同じ自然光を正円としたグラフでは、正円より内側にある部分は色の鮮やかさが悪いという評価になります。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45673327/picture_pc_39d39ec73f6b6857a0807a2549434eb5.png?width=1200)
CRI では測れない色の鮮やかさ(彩度)、色のシフト具合(色相)を評価できる点が、この TM-30 の重要なポイントとなります。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45673319/picture_pc_21bf8093eb72888c5c21ddfeb6947733.png?width=1200)
下記の動画は、開発元 IES の技術者による解説動画になります。
8. CRIの高彩度対応版 CQS
CQS(Color Quality Scale)は 2010 年頃に NIST(アメリカ国立標準技術研究所)が定めた演色評価指数で、高彩度、低彩度の色を織り混ぜた独自基準の 15 色をサンプルに、人間の視覚を基準とした規格となります。
SSI と同じく LED の演色性を正しく評価することを目的としたもので、CRI の評価法を改良したものという位置付けになっています。CQS に使われるサンプル色は、以下の 15 色です。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45666040/picture_pc_031447986d87ae11834ac423c3006934.png?width=1200)
この CQS は市販のスペクトロメーターでは測れませんが、標準化関連の機関(NIST)が開発してるだけあって、ARRI 製品などのスペック表記にはこの指数の記載があったりもします。
9. 映像制作では、どの数値に注目すればいいのか?
ここまで、代表的な 6 種類の演色評価指数の説明をしてきましたが、じゃあ結局、映像の分野ではどの数値を見ればいいのか?
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