【無料公開】 Aputure 2021 年モデルは買いなのか?
Cine Gear 2021 で発表された 1200W 級の高出力 LED ライト『LS 1200d Pro』をはじめ、LS 600x Pro、NOVA P600c など、リリースラッシュが続く Aputure の最新モデルは買いなのか? その製品情報を整理していきます。
当記事は、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』で公開されたものです。公開日:2021.9.29
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393
1. LS 1200d Pro の基本性能
Aputure Light Storm の最新モデルとなる『LS 1200d Pro』は HMI M18(1.8kW)に迫る光量を誇る、高出力の LED ライトです。
📽 A Storm is Coming|LIVE Product Announcement
その基本性能を LS 600d Pro と比較してみると、以下の感じになります。
光量としては、付属の Hyper Reflector 30° を装着した LS 1200d Pro は、フレネルレンズを付けた 600d Pro とほぼ同じ光量 しかなく、1200d Pro 用のフレネルレンズが発表されるまでは、まだそこまで大きなインパクトはなさそうです。
発売時期は 2022 年上旬。販売価格は未定ですが、同スペックの Nanlux Evoke 1200 の価格が 39.3 万円(B&H)なので、おそらくそのあたりの価格帯になると予想されます。
2. NANLUX Evoke 1200 との比較
Aputure の競合となる中国 NANLUX(南光)社は、2021 年 5 月にこの LS 1200d Pro に先駆けて、1200W 級の高出力モデル『Evoke 1200』を発表しています。
📽 Nanlux Evoke 1200 LED Spot Light|ALL THE LIGHT YOU NEED!
高輝度 LED ライトの開発を牽引する、両社のフラッグシップモデルの性能を比較してみると、こんな感じになります。
Evoke 1200 はライト単体の出力では、公称値で 2,373 lux @5m の光量があります。それに対して、LS 1200d Pro はライト単体の出力では、公称値で Evoke 1200 の約 1.18 倍 となる 2,802 lux @5m の光量があるとされています。
光の質感を変える “モディファイヤー” に関しては、Evoke 1200 にはフレネルレンズがあり、4 灯を連結できる「Multi-Light Frame」も発表されています。フレネルレンズを装着した Evoke 1200 の最大光量(11°)は 22,080 lux @5m となるようです。
それに対して、LS 1200d Pro では ARRI Orbiter と似た 3 種類のリフレクターの発表があります。光の直進性を上げる Hyper Reflector 15° 装着時には光量が 28,340 lux @5m となり、フレネルレンズを装着した Evoke 1200 より、約 1.28 倍 高くなる計算になります。
Evoke 1200 の性能に関しては、Newsshooter がかなり詳細なレビュー記事をあげています。
3. LS 1200d Pro は買いなのか?
LS 1200d Pro の使いみちとしては、たとえば窓外の太陽光であったり、天井バウンスの光源など、LS 600d Pro を置き換えるかたちでの活用が想定されます。
また Light Storm はその光量が注目されがちですが、実際に運用する上で意外と重要なポイントになるのが、ライトの重量 と ケーブルの長さ です。
ライトの光量が強くなると、その分だけライトと被写体との距離は離れがちになります。また被写体との距離が離れると、ライト位置はより高くなり、灯体とバラスト(Control Box)の距離も離れがちになります。
そこで気になる灯体とバラストを接続するケーブル(Head Cable)の長さに関しては、1200d Pro は競合の Evoke 1200、600d Pro よりも 1.5 倍長い 7.5m のケーブルを採用しています。
重量に関しては、1200d Pro は 600d Pro よりも約 2 倍重いため、ライトを載せるスタンドが変わります。汎用性のあるセンチュリースタンドが使えなくなり、ひと回り大きな 28mm 径のコンボスタンドが必要になるので、ワンオペや少人数で現場を回すような撮影では、1200d Pro を無理に導入するよりは、600d Pro でコンパクトにまとめる方が有利な場面もありそうです。
LS 1200d Pro の期待値:★★★☆☆
4. LS 600x Pro の基本性能
2021 年 8 月に発表された『LS 600x Pro』は LS 600d Pro の派生モデルとなる、高出力のバイカラー型の LED ライトです。
📽 Announcing the LS 600x Pro & Light Dome 150|LIVE Announcement Premiere
その基本性能を LS 600d Pro、前モデル LS 300X と比較してみると、こんな感じになります。
LS 600x Pro の特徴として、まずは 600d Pro より光量が約 1.5 倍低い という点が挙げられます。バイカラー仕様により 2 種類の LED チップを使用してるので、構造的に全てのチップを同時発光できないというのがその理由として考えられます。
色温度と光量の関係に関しては、たとえば 300X の場合は 4300K で光量が最も高くなりますが、600x Pro は光量のピークが 5600K になる よう設計されています。これは暖色系、寒色系の 2 種類の白色 LED のチップの割合が、300X は均等であるのに対して、600x Pro では寒色系の比率が高いことによるものと推測されます。
サイズ感は 600d Pro と同じようですが、こちらも灯体とバラストをつなぐ Head Cable が長くなり、7.5m に改善されています。
5. LS 600x Pro は買いなのか?
Aputure は LS 600x Pro と同時に、直径 150cm のドーム型ソフトボックス『Light Dome 150』を発表しましたが、たとえば、600x Pro と Light Dome 150 の組み合わせによる全身のポートレート撮影などは、その大きなユースケースとなりそうです。
Light Dome はテカりの少ない「ビューティ・ディッシュ」方式を採用してるので、被写体の近くで使用することで最大の効果を発揮します。
窓外の太陽光として使用する分には、より光量の高い 600d Pro に優位性がありますが、ポートレート撮影などクリアな発色が求められるような場面では、色調整のできる 600x Pro に優位性がありそうです。300X を置き換える存在として、またセンチュリースタンドで使える最大のモデルとして、600x Pro が活用できる場面はたくさんありそうです。
LS 600x Pro の期待値:★★★☆☆
6. NOVA P600c の基本性能
2021 年 9 月、Aputure のパネル型 LED “NOVA” シリーズの最新機種として発表されたのが 2×1 LED『NOVA P600c』です。
📽 Announcing the Nova P600c|Live Product Announcement
この NOVA シリーズはフルカラー仕様なので、青色 LED を搭載した Light Storm シリーズにはない光のカラーシフトを調整する Plus/Minus Green 機能 が搭載されています。これはスタジオ撮影や人物撮影など、クリアな白色光が求められる場面で、ライトの色を整えるために欠かせない機能となります。
また Astera Titan Tube のように、NOVA P600c には複数のライトエンジンが搭載されており、ライト面を 4 分割にしてそれぞれ別の色を発光できる、という面白い機能もあります。
設計としては、前モデル NOVA P300c を横に並べたような横長の形をしていますが、両者の基本性能を比較してみると、こんな感じになります。
P600c、P300c ともに RGBWW 方式 の LED チップが採用されており、P300c が色温度 5500K の時に光量が最大になるのに対して、P600c は 6500K で最も光量が上がる 設計になっているようです。光量は P600c が P300c の約 2 倍 高くなります。
ライトの重量に関しては、公称値で 13.74 kg とかなりの重さになるため、LS 1200d Pro と同じく汎用性のある センチュリースタンドは使えず、ひと回り大きなコンボスタンドを使う必要がある という、運用面での課題はありそうです。ダボは LS 1200d と同じく 28mm 径の Juniar Pin 規格となっています。
7. NOVA P600c は買いなのか?
デジタルシネマ撮影で世界的に人気の高い LED ライトに ARRI 社の『SkyPanel S60-C』というモデルがありますが、この Aputure NOVA P600c は、SkyPanel を置き換える存在として注目されています。
両者の基本性能を比較してみると、こんな感じになります。
全ての項目において、NOVA P600c が SkyPanel S60-C を数値で下回るものはなく、価格に関しても S60-C は 73.3 万円、P600c は 36.4 万円 と約 2 倍の差があるので、今後 SkyPanel は NOVA シリーズに置き換えられていく可能性が高い といえます。これはデジタルシネマ作品のライティングの常識を変える、大きな革命となり得ます。
この P600c の使用用途としては、フレア光として窓外に設置したり、スペースライトとして撮影スタジオの天井に吊るしたり、人物撮影のフィルライトに使用したり。これまで SkyPanel がその役割を担ってきた「広い面積をフラットに照らすパネル型ライト」として、今後さまざまな用途での使用が期待されます。
NOVA P600c の期待値:★★★★☆
※ 当記事は、必要に応じて加筆・修正を加えアップデートをおこないます。
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