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Canon デジタルシネマ・カメラの基礎知識

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ビデオグラファー誕生の道筋を開いた名機『EOS 5D Mark II』から、RF マウント搭載の最新モデル『EOS C70』まで。ドキュメンタリー分野で世界 No.1 のシェアを誇る、Canon のデジタルシネマ・カメラの基礎知識を紹介していきます。

当記事は、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』で公開されたものです。限定公開を目的に有料化しています。公開日:2022.1.11
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393

1. キヤノンの歴史まとめ

1933 年、Canon の歴史は写真用小型カメラの開発を目的とした小さな町工場(精機光学研究所)からはじまります。そして 1936 年、Nikon の技術協力により誕生した日本初となる 35mm フォーカルプレーンシャッターカメラ「ハンザ・キヤノン」を皮切りに、Canon は写真用カメラとレンズの開発を本格始動していきます。

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📷  1933年 - 1936年|Canon Camera Museum

動画に関しては、1954 年より NHK 技術研究所と テレビカメラ の共同開発をはじめ、1956 年に 映画用 8mm フィルム・カメラ『Cine 8-T』を発売、1958 年には テレビカメラ用のズームレンズ を発売するなど、その初期段階から多方面での開発をしていたことがわかります。

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📷  Cine 8-T|Canon Camera Museum

1960 年代には、電卓・ワープロ・FAX・PC・プリンターなど、OA 機器を中心に Canon はその事業を多角化していきますが、デジタル領域に関しては、1995 年に発売した『EOS DCS 3』を皮切りに、デジタル一眼レフカメラの開発がはじります。

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📷  EOS DCS 3|Canon Camera Museum

デジタルカメラの市場は 2010 年をピークに縮小傾向にありますが、2003 年から現在に至るまで、Canon の レンズ交換式デジタルカメラは 18 年連続で世界シェア No.1 を獲得しています。

また Canon 全体の事業構成を見ると、2020 年度はプリンター関連の売上が 57%(1兆8,044億円)なのに対して、カメラ事業は 17%(5,413億円)と、カメラ開発以外の事業が総売上の 80% 以上 を占めているようです。

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📷  キヤノンの事業構成は?|Canon Global

そして、この記事で紹介する Canon のデジタルシネマ・カメラに関しては、2008 年に発売された名機『EOS 5D Mark II』を皮切りに、その開発の歴史がはじまります。

📔 Canon の名前の由来とは?
キヤノン(Canon)の由来は、創業者の吉田五郎が “観音様” を信仰していたことによるもので、英語では「聖典・規範・標準」の意味があります。創業時に試作された 35mm フィルム・カメラのプロトタイプ機には『KWANON(カンノン)』という名前が付けられていたりもします。
https://global.canon/ja/c-museum/history/story01.html

2. 動画撮影の常識を変えた EOS 5D Mark II の誕生

2008 年、Canon は業界初となる HD 解像度の動画撮影ができるデジタル一眼カメラ『EOS 5D Mark II』を発売します。発売当時は、ビデオカメラで撮影するテレビ業界と、フィルムカメラで撮影する映画・CM 業界の間には、ルックの面で越えられない大きな壁がありましたが、5D Mark II はその壁を壊した革新的なモデルといえます。

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📷  EOS 5D Mark II|Canon Global

5D Mark II の何が画期的だったのか? 35mm フルサイズ規格の CMOS イメージセンサーによる、被写界深度の浅い “ボケ感” のある描写も注目を集めましたが、最も画期的だったのがその “価格 です。

5D Mark II の発売価格は 28 万円。当時は ARRI 社などの高価なフィルムカメラでしか得られなかった “シネマルック” な映像が、数十万円のデジタル一眼で撮れる?ということで、5D Mark II は爆発的なヒットを記録します。そして、この流れが今日の “ビデオグラファー誕生” への足がかりとなります。

3. CINEMA EOS SYSTEM

2011 年、Canon は映画・CM・MV などデジタルシネマ作品の撮影に特化したデジタルシネマ・カメラ『CINEMA EOS』を開発すると、映画産業への本格参入を宣言します。

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2021 年で 10 周年を迎えた CINEMA EOS シリーズには、合計 11 種類のデジタルシネマ・カメラがありますが、この記事ではそれを 4 世代に分類した上で、その進化の歴史を辿っていきます。

・EOS C300(2012)
・EOS C100(2012)
・EOS C500(2012)
・EOS C100 Mark II(2014)
・EOS C300 Mark II(2015)
・EOS C700(2016)
・EOS C200(2017)
・EOS C500 Mark II(2019)
・EOS C300 Mark III(2020)
・EOS C70(2020)
・EOS R5C(2022)

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