DaVinci Resolve 彩度を上げる方法まとめ
自然なニュアンスで彩度を上げるには?Node Based の色空間を活用した応用メソッドを含め、DaVinci Resolve で映像の彩度を思い通りにコントロールする方法を探っていきます。
1. Node-Based の色空間の設定
カラーグレーディング作業の中で色空間(Color Space)の設定といえば、一般的にはプロジェクト全体だったり、撮影クリップごとに設定するというイメージがありますが、DaVinci Resolve ではそれを Node Editor 上にある個々の ノード に対して設定することもできます。
前回の記事では、ノードの色空間の設定を Rec.709 から ARRI Wide Gamut、DaVinci Wide Gamut などに変えることで、色やコントラストに関するパラメーターの効き具合がどう変化するか?を検証してみました。
今回の記事では、Node-Based の色空間を活用した応用メソッドを含め、彩度の調整に使われる DaVinci Resolve のさまざまなツールを比較しながら、映像の 彩度 を思い通りにコントロールする方法を探っていきます。
2. 彩度の上げ方まとめ
DaVinci Resolve には、映像の彩度を調整するためのツールがたくさん存在していますが、それぞれどんな違いがあるのか?まずは、その効果の違いをカラーチャート画像で比較していきたいと思います。
DaVinci Resolve で、彩度を調整する上で定番のツールとなるのが、プライマリー調整の Saturation です。
その他にも DaVinci Resolve には、Color Boost、RGB Mixer、Sat vs Sat、Hue vs Sat、HDR Tool など、映像全体の彩度を上げるためのツールはたくさんありますが、結論からいうと、その中で他とは異なる独特な効果が得られるのは、Color Boost と HDR Tool の 2 種類で、残りのツールの効果は基本的にすべて同じとなります。
以降、Truecolor が提供する LUT Stress Test のカラーチャート画像を利用して、その効果を比較していきます。はじめに彩度を上げる前の無調整の状態が、こちらになります。
これに対して、プライマリー調整の Saturation で彩度を最大値まで上げてみると、以下のようになります。
Saturation の数値を上げていくと、彩度は色が飽和するまで直線的に上がり続けていきます。続いて、Hue vs Sat ツールの Saturation を試してみます。Hue vs Sat で、全ての色に等しく効果がかかるように Saturation の数値を最大値まで上げてみると、以下のようになります。
結果としては、プライマリー調整の Saturation と全く同じになります。次に Sat vs Sat で同じことを試してみると、以下のようになります。
こちらも、結果はプライマリー調整の Saturation と全く同じになります。続いて、RGB Mixer を試してみたいと思います。RGB Mixer は、本来は RGB 各チャンネルのバランスを変えるために使われるツールですが、各チャンネルの数値を等しく上げることで、映像全体の彩度を上げることができます。
RGB Mixer は、たとえば水中など極端に色に偏りのある場面での WB の調整では、プライマリー調整の Lift、Gamma、Gain よりも効果的に色を補正することができますが、映像全体の彩度を上げるという使い方をすると、得られる結果はプライマリー調整の Saturation と全く同じになります。
比較のために、プライマリー調整の Saturation で彩度を上げたものを再び掲載しておきます。
続いて、プライマリー調整の Color Boost を試していきます。Color Boost は、基本的にはプライマリー調整の Saturation と同じ原理で彩度をコントロールしますが、Photoshop の “自然な彩度” と同じように、彩度が低い色により強く反応すると言われています。Color Boost の数値を上げてみると、以下のようになります。
結果としては、プライマリー調整の Saturation とは異なる状態となっています。仮に Color Boost の数値を最大値まで上げていくと、Saturation と同じく色が飽和するレンジまで彩度は上がりますが、低彩度の色を基準に調整していくと、Saturation よりも高彩度の色の発色を抑えることができます。
原理的には、Saturation がリニア処理により効果が直線的に変化するのに対して、Color Boost は曲線による ノンリニア な処理により Saturation とは異なる反応が得られる、とされています。また Sat vs Sat で 左肩上がり の曲線を描くと、Color Boost と同じような効果を得ることもできます。
続いては、HDR Tool の Global Saturation を試してみます。
HDR Tool は、基本的には高輝度・広色域な HDR 映像を制作する際に、明るさを 6 つの領域に分けて、露出や彩度のコントロールをしやすくするためのツールですが、SDR 環境でも使用することができます。映像全体の彩度を調整するには、Global ホイールの Saturation を使用します。実際に Saturation の数値を上げてみると、以下のようになります。
結果としては、プライマリー調整の Saturation と Color Boost の中間のような状態となっていますが、パラメーターの数値を最大値まで上げても、色が飽和するまで上がりきらない(高彩度な色がビビッドになり過ぎない)設計となっています。
HDR Tool の処理は、LMS 色空間でおこなわれるため、HLS 色空間のカラーモデルを利用したプライマリー調整の Saturation、Color Boost などとは異なる反応が得られる、という原理になっているようです。最後にプライマリー調整の Saturation で彩度を上げたものを再び掲載しておきます。
3. 実際のイメージで試してみる
彩度を調整する各ツールのおもな特徴が理解できたところで、続いては、それを実際のイメージに適応して、その効果の違いを確認していきたいと思います。まずは、彩度を上げる前のイメージがこちらになります。
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