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【短文】スージー・リー『せん』の印象

 絵に描かれたスケーターが滑る。

 一本の線が残る。

 そのとき、一本の線を描く(作者の)手自体がスケーターになっている。

 手によって、白い画布の上を滑る。どこまでも自由に、旋回する。

 画家とは、手のダンサー。

 わたしたちは? 地球上の画家。足跡の画家。スケーターはスケートリンクに線を描き、わたしたちは地上に線を描く。

 絵を描くとき、あるいは地上を歩くとき、白い画布の上を気持ちよく滑る感じを忘れないでいたい。

 冬。まだだれもいないつるつるのスケートリンク。または、屋外の雪景色。

 いま、静かな高揚感から、リンクに、積雪に、曲線が、足跡が生まれる。

 そして、ひろがっていく。

 無数のスケーターが、無数の曲線をスケートリンクに刻む。線が微笑む。地球のあらゆる場所が、そんな軽やかな線たちで刻まれることを願う。

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