何処かではなく どれもが
日勤で働いている職場では、少し特殊な接客業をしている。
また、職場でのわたしは、自分で言うのもおこがましいけれど
明るく気配りしつつ仕事もこなし、滅多に落ち込んだところを見せない。
加えてよく喋るお調子者。
というキャラで通っている……多分。
多分、と言うのも
最初の1年半は仕事覚えが人一倍遅く
同じ間違いを繰り返しては叩き上げられてやっと人並みの仕事をこなすようになった
苦い経験を持っているからだ。
この先、わたしの後輩になるであろう人たちに同じ想いをさせまいと、試行錯誤した結果
このキャラが定着していった。
なので、多少へんな感じがするときもある。
よりによってこのわたしが、ベテラン扱いとは。
そりゃあ歳も取るはずだ。
当時のわたしを鍛えてくださった方々は少しずつ退職や異動をしていき
いまは数えるほどしか残っていない。
人員の入れ替わりのおかげか、わたしの過去を信じてくれる人はほぼ皆無。
良い意味で気を遣わず、のびのびと働けるのが良いけれどね。
そんなわたしがひとたび職場を出ると
口数が少なくなり、多少慣れた人の前でしか話さなくなる激変ぶり。
街頭のチラシやティッシュ配りの待ち構えたあの姿が苦手で避ける。
買い物の有無を問わず
ショップ店員に話しかけられると逃亡を図る。
5、6年ほどお世話になっているサロンでも、ここ1年くらいでやっと担当美容師と苦なく雑談出来るようになった。
その他、自己主張も目に見えて減る。
ただ得意な話題ではよく喋るので
わたし自身はかなりの内弁慶だとおもっているのだけれど。
職場の人からすれば、プライベートのわたしの姿など信じられないだろう。
逆にいつもの美容師やあのときのショップ店員は、職場におけるわたしのキャラなどもっと想像できないはずだ。
「のぞむさんには、『職場』という名の、強烈なペルソナがあるのだね」
と言われたことがあるけれど
全くもって、その通りだとおもう。
もう止めたのだ。
「どれが本当のじぶんなのか」を
わたしはもう探さない。
昔は沢山のじぶんに振り回されて
本当のじぶんがどれかと
探しては疲れ果ててきたけれど。
今はもう、大丈夫。
積み重ねた経験が教えてくれた。
どれもが本当のわたしで
望めばわたしは
どんなわたしにでもなれる。
そう知ったことで
すこし生きやすくなった。
今はどのわたしも、そんなに嫌いじゃない。
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