休学日記③
福島県での豊かな里山での暮らしを経験した後は、本当に大好きな場所である、長野県諏訪市にある、Rebuilding Center JAPANの長期サポーターとして活動させていただきました。
リビセンの長期サポをした理由
※休学決意までの過程などは、休学日記①に書いています。
私は、今回の休学期間を、ぼんやりとしていた将来の方向性や考え方をブラッシュアップし、やるべきことは何か、ステップを考えるために経験をするために使いました。その、ぼんやりとしていたものは、ざっくりと食や農業に関わることでしたが、大学3年生が終わったころの春休みに、以前ゼミで学んだ環境問題や地域のコミュニティ、ローカルなビジネスについての関心から、長野県諏訪市にある「リビルディングセンタージャパン(通称リビセン)」に行ったことがありました。そこで得た衝撃で、ワクワクが止まらなくなり、その後も何回かサポーターズ(ボランティア)をやらせていただいていました。その途中に休学も決めたこともあって、スタッフの方たちにお声がけもいただき、今度は長期で関わってみようと思いました。
リビセンとの出会い
私は、ゼミ活動で徳島県上勝町に行ったとき、ゼロウェイストセンターに併設されていた「くるくるショップ」のアイデアに影響され、これをビジネスにしてカフェなどの飲食できる場所も一緒になっていたら、人も集まるし、なんだか良さそう!という直感をもとに、すでにそういう場所が日本にあるのかなと思いながら検索をかけてみて、出会ったのがリビセンでした。
なんだ、この素敵な場所は!?と思いながら見てみると、ちょうど採用情報も出ていました。私は当時25年卒の予定だったので、まだ時間があるけどどうしようと思いながら連絡をしてみると、「あと1年での関わり方次第で選考ができる可能性もあります!」とのお返事をいただいたので、応募しました。その後、「スタッフになるという希望には沿うことができず申し訳ありませんが、ぜひ一度来てみてください!」という内容のとても丁寧なメールをいただき、早速春休みにサポーターズをしてみました。
私が初めて行ったときに、一緒にサポーターズをした女の子たちが偶然にも同世代で、意気投合し、同じ趣味や悩み、キャリアについても話して、こんなに聞いてくれる人がいて、理解してくれる人がいて、似たような志を持つ人と話すことができたことが、そのときすごく嬉しかったのを、今でも鮮明に覚えています。
リビセンで働くスタッフの方たちも、まだよくわからないけど、オープンな明るさで、優しいし、イキイキしている!と感じました。リビセンでの取り組みに感動したことはもちろんですが、スタッフの方たちとも、まかないをいただく時間にお話しすることができて、私が話す興味関心に合わせていろいろなことを教えてくださったり、他のサポーターズの方と意外な共通点があったり、ビビッとくることがたくさんありました。そして1番驚いたのが、私が今秋から短期スタッフとして働かせていただく「ブラウンズフィールド」のスタッフの方がお友達を連れてリビセンに遊びに来ていたのです!(そのお友達もブラウンズフィールドの元スタッフさんで、そのうちのひとりは、なんと地元も中学校も同じで、姉の先輩だったという本当に驚きの偶然です笑)オンライン面接でしかお会いしたことがなかったけれど、リビセンスタッフさんのお力をお借りして、声をかけさせていただき、少しだけお話をして、とても嬉しく、にこやかな時間になりました。
そして、リビセンで食べさせていただいたまかないが、とても美味しくて、作ってくださっている方にも自分から話しかけ、このお話でもまたピンと来たり、町に素敵な小商いがいくつもあることに感心したりと、リビセンの事業内容だけではない、リビセンを中心とした、さまざまな事柄を取り巻くコミュニティに運命を感じてしまったのでした。
長期サポで何をしたのか
通常のサポーターズさんたちと変わらず、フロアやディスプレイ掃除、古道具掃除、古材メンテナンス、ガラスや古材のやすりがけなど、いろいろなお仕事をやらせていただきました。床板レスキュー(レスキュー:古いお家や取り壊し予定の建物に行き、買取をさせていただくこと)に以前行ったことがあったのですが、今回も何度か行きました。古道具のレスキューにも何度か行かせていただき、長期サポという立場から、自分でレスキュー、お掃除、ディスプレイという一連の流れを実際に体験することができました。依頼主の方たちにも、それぞれ想いがあって、スタッフの方がそれに合わせた丁寧な対応を心がけていらっしゃったのが印象的です。話をすること、コミュニケーションをとることの大事さを学んだとともに、スタッフのみなさんがやりがいを感じているところを、隣で一緒にサポートさせていただくことができてよかったと思っています。
何を感じたか
最初にリビセンに伺った頃から、ここに来れば、たくさんの刺激・エネルギーと、学びを得ることができると実感していました。訪れるたびに、言葉にできない感情が渋滞するような感じで、いつかしっかりと言語化して、伝えていきたいなと思っていました。
今回は、3つほどに分けて書いていきたと思います。
1つ目は、リビセンスタッフは、生き方そのものが働き方ということです。近年では、理想的なライフスタイルの一例として、「ワーク・ライフバランス」という言葉をよく耳にします。私は、自営業の家庭で生まれ育ったことも影響しているのか、自身が就職活動で迷っている中、働き方に敏感になっていたのか分かりませんが、この概念に少しだけ違和感がありました。私は切り分けないほうが、あっているかもしれないと思っていたのです。
リビセンのスタッフは、みなさんが主体性を持って働いていると感じていて、そのイキイキとした姿にいつも魅了されてきましたが、今回は長期ということもあり、みなさんのリビセンで働く理由だったり、これまでの人生のプロセスだったり、ライフヒストリーを聞かせていただく機会に恵まれました。(私が「なぜ今の仕事をしているのですか?学校では何を学んだのですか?」と常に聞き回っていたのもありますが笑)
それぞれの方に聞いてみて感じたことは、心の声を大事にしているということです。自分の経験談に対する感情を元に行動に移していました。
例えば、あるスタッフさんは、別の仕事をしていたとき、学生時代の海外旅行で迷ってしまい、やっとの思いで辿り着いた宿のお母さんが、初対面にも関わらず「おかえり」と抱きしめてくれた経験を思い出したことで、自分も「おかえり」と言える仕事がしたいのだと気付いたそうです。その後、ゲストハウスに勤めていましたが、ご縁がありリビセンで働かれています。リビセンでも、お店の全体を見るような役割を果たしていらして、ものや人を通してさまざまな「おかえり」を実現できているなと感じました。
他にも、前職が理学療法士のスタッフの方がいらっしゃったのですが、リハビリに携わる中で、患者さんにとってリハビリの時間というのは、その日のほんの一部でしかないことについて考え、より日常的に改善できることはないのかと、普段から使っている椅子などの家具に目を向けるようになったそうです。今は、リビセンの制作チームとして働かれています。
自分の現状から、物事を観察したり、深く考えたりする中で、きっかけを無意識的に作っているのではないかと、私は考えました。誰かから言われたことや、外側からの圧力によるきっかけも、行動を変えるかもしれませんが、そうではなくて、自分の感情を、自分の意思の表現として、行動に移しているからこそ、楽しさややりがいにつながり、けっして自分と切り離すことができない主体的な働き方ができるのであって、単なる労働にはならないのです。
こうして考えてみると、自分の心の声に従って、仕事を選択していくことって、案外当たり前であり、本来あるべき形なのかもしれないとも思いました。世の中が近代化するに連れ、自分のできることを商いにしていた時代から、離れて行ってしまったのかなと感じていて、自分と仕事の距離が遠くなればなるほど、目的を見失い、考えることや喜びを感じることさえできなくなれば、人間らしさも薄れていってしまう気がしています。このような社会のシステムの流れのなかに、学校教育も含まれている部分があるから、やりたいことがわからない学生も多いのではないかと思います。
2つ目は、人と人をつなぐコミュニティのあり方についてです。1つ目の内容と関連していますが、このような主体的な働き方を実践されている中で見つけた、ある共通点がありました。それは、自分たちの仕事を通して関わる「人」を知ることや、その「人」のことを伝えるということを原動力としていることです。
リビセンでは、レスキューやカフェ事業の他にも、古材を活用した店舗設計やリノベーション事業をしていたり、リビセンのようなお店が全国に広まるようにスクールを開講していたりもしています。一般的なデザインの会社やビジネスのスクール(偏見かもしれませんが)は、大規模な会社であればあるほど、事業が分断されていて、ともに活動する一定期間だけの関わりだけで終わりになってしまうようなイメージがあります。しかし、リビセンでは、その人たちのことを深く知って、どんなお店にしていきたいのかとか、その目的はなんなのか、それに至った考え方はどんなものなのか、など、深く知るわけです。だからこそ、思い思いのお店ができるようになり、問題をともに解決し、開業後も支え合う、濃い関係性が生まれるということです。
私はこのことを、リビセンのカフェスタッフさんに教えてもらいました。そのスタッフさんは、リビセンのそういうところを、心から誇りに思っているとおっしゃっていて、カフェスタッフとして、そういう魅力を伝えていきたいとのことでした。また、彼女はカフェで扱っているお米やお野菜の生産者さんのことを知るために、お休みの日に援農に行っています。私も同行させていただき、ここまでする理由を尋ねると、カフェでのお仕事は、飲み物や食べ物の販売だけではなく、お店の伝える場でありたいから、そのためにまず私ができることは農家さんを「知る」ことだし、そうしていかないと私のやりがいのモチベーションを保つことができなくなるとお話ししてくださいました。農作業に全く関心がなかったそうですが、何をするかというより、それをしている人の想いや、その人自体に興味があるのだと強調されていました。
また、まかないを作ってくださっているスタッフさんは、管理栄養士のお仕事から実際に調理をするお仕事をするようになって、美味しさを突き詰めることも大事かもしれないけれど、食を通して人のことを知りたいのだと気づいたとおっしゃっていました。彼女も自ら畑に行くなどして、つくり手さんに寄り添うような、本当に心が温まる食事を提供してくださいます。私の現在の食・農に対する興味が、具体化していったきっかけの一つが、彼女自身の存在やご飯でもあります。
人と人をつなぐコミュニティと述べてしまうと、それ自体が良いものになってしまいそうですが、その良いコミュニティをどうやって作っていくかというプロセス・過程や手段が大事なのだと思いました。それを踏まえたコミュニティづくりが、リビセンの仕組みの根本になっていて、働くスタッフのみなさんも、それぞれが自分の仕事を通じて人をつなげていくことができているのだと実感できた気がしています。
3つ目は、リビセンがつくるのは、「社会のために」という心構えが必要ない仕組みであるということです。私がリビセンを知った理由のように、社会的な課題の解決にアプローチしたビジネスという見方があります。もちろんそれが、浸透していくことも大事ですが、一緒に1週間ほどサポーターズをしていた女の子とお話ししていた中で得たヒントがありました。そういう視点で行動するとなると、どこか苦しくなってしまうと彼女が言っていて、確かに、私も自分にできることから少しずつ始めたらいいのだけれど、現実的にできないことに対して悲観的になったり、無力感を感じたりしてしまうことに気が付きました。また、実際に行動できる人もいれば、無関心な人もいるというのが実情です。しかし、「社会のために」という心構えがなくても、「社会のために」なる仕組みづくりが大事なのだということがわかりました。彼女はケーキ屋さんで、持参した容器にケーキを入れてもらい、それを抱えて持ち帰ったことが、「自分と人(相手)、物」が離れているところから近づくような、壁や隔たりがなくなっていく感覚で心地よかったと言っていました。リビセンでもそれに近しいことが起こっているから心地よさを感じたそうです。
私もこのことは、とても腑に落ちる感じがしました。社会のあらゆることが切り離されてしまい、物事のつながりが見えなくなってしまっています。それがひとつの要因となって、さまざまな問題が起こっているのではないかと感じました。わかりやすい例では、野菜の生産と消費のギャップによって引き起こされる問題があります。大量生産や大量消費がもたらす環境問題や労働問題、食品ロスなどです。アプローチの事例としては、地産地消やCSA(みんなで農業を支える仕組み)などがあります。私の考えでは、これらが普及することはもちろん嬉しいですが、環境や社会に配慮したビジネスという表面的なところに重点を置きすぎると、本当に貢献できているのかわかりづらくなってしまうのではないかということです。また、それに力を貸している人は、周りの人にも伝えていきたいと思っていたとしても、相手の「熱心だね」「そんな余裕があっていいね」という態度で少し距離を感じることもあるかもしれません。
だからこそ、喜びや心地よさを感じられるような、人間らしい感情を引き出すことができるような仕組みを作っていくことが大事なのだと思います。当たり前かもしれませんが、人とのつながりや対話による「愛情」「喜び」「楽しさ」食べ物に対する「美味しい」にも、誰が作ったかわかるような「嬉しさ」「愛着」など、そういう部分を、私は大事にしていきたいなと思いました。リビセンの古道具や古材がつなぐ思いや、関わる人の思いへの共感、人との繋がり、何かをみんなで作り上げる喜びなど、たくさんのエネルギーを私自身の五感をフルに使って感じることができたのが、何より素晴らしい経験だったなと感じています。
最後に
長くなってしまいましたが、リビセンに携わる人たちが、本当にみなさん素敵な方達で、今回も私の興味を汲み取って話をしてくれたり、畑に連れて行ってくれたり、感謝してもしきれません。思っていることを話す機会や、それを似たような思いを持つ人が理解して聞いてくれる場がたくさんあり、その都度自分の考え方がアップデートされ、成長につながっていく、そんなリビセンという場所が私は大好きです。
きっとスタッフの方たちも、日々の業務の中で、そういう時間を大事にされていて、常に、現状と向き合い、一緒に考え、共有して、次のステップへ着実に進んでいくことができているからこそ、リスペクトしあいながら最高な場所を作ることに全力を注いでいるのだなと感心するばかりです。私が、人間らしさたっぷりの人たちに惹かれることにも気づくことができました。
いつでも帰りたい場所です。本当にありがとうございました!誰でもサポーターズに参加できるので、興味のある方は是非行ってみてください〜!