「ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門/原野守弘著」をよんで。rdl#2
大学で講義を担当しているが、授業をしていると学生の教えてもらって当たり前〜という超受け身な態度が散見され、心弱い教員の私は、そんな学生の姿をみるたびに心がバキバキと折れる。
勤め先の大学で、ベテランの先生の授業を見学しても、この話は自分には関係ありません、とばかりにスマホでインスタやゲームに勤しむ姿もみる。
わが身を振り返れば大学時代、自分も決して能動的な学生ではなかったが、美大という学校柄、否が応でも能動的にならねばならなかったのは、美大に進学して良かったことのひとつだ。
話が逸れたが自分にとっては、完全に受け身な学生たちにどうやっておもしろーい!と、感じてもらえる授業をするかは、死活問題だ。つまんなそうな学生を前に、90分の授業を約4か月やりきれるほど、私の心臓は強くないからだ。メンタルヘルスによくない。
前置きが長くなったが、本書はそんな私の悩みを解消してくれそうなヒントが満載だった。
著者の原野守弘さんは34歳までセールスマンからクリエイティブクリエイターになった方。
タイトルに惹かれて購入したがOK GoのI Won't Let You DownのMVをディレクションした方だというのを本書を読んで知った。この作品が大好きで何回も繰り返し観たMVだったので、余計に本書に書いてあることが心に沁みた。
説明はいらない
第一章を読んだ時の衝撃たるや、、なぜ授業がおもろくないのか、学生が受け身なのか、その答えを回収した気分だった。
本書によるとプレゼンで伝えたいことを理解をさせるために、こんこんと説明しても聞き手の心に響かないそうだ。
人間の本質は非論理的で、人間は感情でこそ「突き動かされる」のだと。感情に訴えかけることが良いプレゼンテーションの1番のポイントらしい。信念(why)を伝えることが一番大事なのに、説明だとwhatやhowばかりが語られるが、これが大きな間違い。whyを起点としたコミュニケーションをとって始めて、人は行動するらしい。
そもそも感動について脳は言語化できないという原理原則があるそうだ。だからwhyを伝えるのに、無理に言語するのではなく、聞き手の感情に訴えかけよ、とのこと。
超シンプルではあるが、言われてみれば身に覚えがある。説明じゃ人は動きまへんで〜ということは、子育てをしているとよくわかる。「歯を磨かないと虫歯になるよ!」といっても子どもは歯を磨いてくれない。それより「鬼が来るぞー、歯を磨くと鬼が来ないから早く磨こう!」といった方が歯磨きの成功率は高い。
年齢が上がって分別がついたように思えても、おんなじなのだ。
説明をしないで、プレゼンをする事が大切。ではどうやって授業したらいい?
とはいえ、授業の中で説明したいことはたくさんある。でも良いプレゼンテーションは説明ではなく、良い映画を観たような後味にすることが大切らしい。ではどうやって授業に活かすか、まずは仮説をたてて、次年度検証したいと思う。
仮説1、憧れを喚起する。
冒頭からテクニカルなことを説明するのではなく、実社会での先例を先に打ち出す。(興味を持たせる)
仮説2、作り手の想いや苦労を伝える
説明はいらないという本書の教えに従い、テクニカルなことに焦点を当てずに説明しすぎない。なるべく人間臭いこと(作業の大変さとか、自分の経験?)に焦点をあてる。最後にテクニカルなりことを説明するだけでもよい?
仮説3、学生の体験と学びの内容を紐付ける
実習して身体で覚えることができればいいのだが、施設の問題で実習ができない。代わりにプレゼンの機会を設けて、学生一人一人を打席に引っ張り出す。来年度から新規で担当する講義は、必修で70名ほどの学生相手に授業を行うので毎回全員に振るのは無理かもしれないけれど、緊張感をキープさせるためにランダムに当てていきたい。
まとめ
ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門はビジネスパーソンはもちろんクリエイティブを目指す人は必読書。
前回の読書記録でとりあげた「クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST」とも共通点が多く、クリエイティブを目指す人の足元を照らすような本。
私の仕事も行く末を照らしてくれるはず。
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