藍染というエンタメ
徳島はすくも藍の日本一の生産地。
徳島での藍染の体験はエンタメだった。
物が沢山あると、何かを作ることに意味が見出せない。下手くそで不慣れな自分がつくる、非効率的なモノより、高品質なものが安価で手に入るから。
しかし、モノをつくることは楽しい。
身体を動かして作業するとき、時間をわすれ没頭する楽しさがある。
綺麗なものができると尚さら嬉しい。
短時間でそれが出来たら最高だ。
それらを満たすモノのが藍染だ。
徳島をベースにする染物集団、BUAISOのところに、アメリカのセレブYe(カニエ・ウエスト)が訪れたニュースも記憶に新しい。(*2)
じつは藍染といっても化学染料とすくもで建てる本藍があり、Indigoとよばれるものは殆ど前者をさす。
この昔ながらのすくもを利用した天然灰汁建てを利用して染め物ができる施設が徳島県上板町にある技の館(*3)だ。
シャツなど自分の染めたいものを持ち込めることも特徴。
藍の葉っぱを乾燥させたものを発酵させできたすくもに硬い木を燃やした灰汁のうわずみをあわせ、藍染の液をつくる。藍の花とよばれる泡が水面に現れると、藍染ができる。この液は強アルカリだそうで、藍の花がさく=良く染まるとスタッフさんが話しておられた。
大変なのは、藍染できる状態を作って管理するところ。最終工程である染めは、1番おいしいところをいいとこ取りできる。
糸を染めるにしても布を染めるにしても、大きな寸胴を用意して、染料を調合して染めなければならないけれど、藍染は非常にお手軽。
染液が入っているおおきな浴槽のなかで1分ほど布をつけ、外にだす。液が空気にふれると酸化し色が染まる仕組みなので、染めたいものを藍瓶にぽちゃんとつけたり出したりを繰り返すだけ。
液につける回数を増やせば濃色になり、少なければ淡色になる。
どんな色も美しく失敗もないので、藍染体験者は大満足で体験を終えることになる。それはお手軽に「自分の作品づくり」ができる、という価値があるからだ。滞在したホテルでも藍染ができるコーナーがあったが、あまりにもお手軽すぎてあまりやる気が起きなかった。
藍染は徳島だけではなく、自分が知っているだけでも東京、埼玉、金沢、京都など全国各地にある。
が、日本一のすくもの生産地である徳島で染めることは、ジンギスカンを北海道で食すに等しい感動がある。
アパレルの国産比率1.5%(*1)だそうだ。
ほとんどの服が海外で生産されている。
誰もが毎日洋服を着るが、その生産工程を知ることは余程興味がない人でないかぎり知らないし、知る必要もない。
ただよくよく考えてみると、魔法ではないから必ずものつくりには工程がある。繊維から糸をつくって、織ったり編んだり布にして、染めて色をつけて・・・と洋服はかならず「染色」の工程を経ている。
今、日常生活のなかで染色を体験する機会はすくない。
SDGsでファッションが環境に負荷がかかる産業だ、っていわれてもやったことがないことを理解することほど難しいことはない。
藍染は染色工程を簡単お手軽に楽しく体験できる最高の教材である。
着古したシャツを持ち込み、染め直せばエコにもなる。
藍染目当てに徳島を訪れる人は少数だろうが、このつくる楽しさを凝縮した藍染体験は最高の学習コンテンツで、のびしろしかないと感じた。
きれいなものを生み出すことができる自分って、最高に自信になると思う。
*1)WWD2023/06/21公開の記事より
*2)WWD2019/04/01公開の記事より
https://www.wwdjapan.com/articles/838164
*3藍染を体験できる技の館
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