365日メイド服で生活する日記 2024年1月1日
今回の年末年始は、「らしさ」を感じない。
少し仕事が忙しく、今年は有休を繋げたりせずに少ない休日をまったり過ごそうと決めたからか、それとも家にテレビがないからなのか。
なんとなく実家で寿司を食べ、その日のうちに自宅に戻ってネギを刻んだり大根の葉を茹でたりしていたら、あれよあれよという間に年が明けてしまった。
布団から這い出し、黒いドレスを着込む。
今日からメイド服を着て暮らすのだ。
軽く身支度を済ませ、とりあえず床に掃除機をかけ始めることにした。
大きな掃除機を持って家の中を歩き回る姿はそれなりに「らしく」見える。
街中やコスプレ写真で見るメイド服を着た人はいつも真っすぐ突っ立っていて、メイド服の本懐であるはずの、あちこちに忙しく動き回る姿を見たのはこれが初めてのように思う。
猫やらクッションやらを片手でどかしつつ、床に散らばった抜け毛と埃を吸い集めていると、だんだんと気になってくることがある。
腕の可動域が狭いのである。
今着用しているメイド服は伸縮性のない硬い生地で作られている。
袖は長く、肩から手首までを一直線に覆っている。
少しかがんで遠くに手を伸ばすたび、脇のあたりが妙にギシギシいって動きづらい。
決してきついわけではない。肩のあたりが突っ張るとかそういう感覚は一切ない。
ただ、このメイド服はどうやら「仕事」をするためには作られていないようだった。
メイド服の本懐は「仕事着」である。
ヴィクトリア朝時代の貴族の暮らしを保つために雇われた人々のための仕事着。
仕事着であると同時に、統一された格式高い見た目により主人の高貴さを示す役割もあったと聞く。
そんな仕事着が、果たしてこんなに動きづらくて本当にいいのだろうか。