バンクーバーの海に恋をした
18歳の夏休みに初めてカナダへ行きました。
念願だった、語学留学、初めてのホームステイ。
英検2級に合格したからと自信満々に出発したはずが、カナダに着くと私の英語は全然通じず、ホストファミリーの英語も、クラスメイトの英語も全く聞き取れなかったのです。
最初の頃はなんとか相手とコミュニケーションを図ろうと頑張っていました。
でも、いつもヘラヘラと笑って誤魔化して、会話の成立しない私に話しかけてくれる人はだんだんと減り、学校ではいつも一人ぼっち。
毎日、強烈な匂いの魚料理を作ってくれるホストファミリーとも距離は縮まりません。苦手な料理も苦手と言えず、必死に頬張り、飲み込み、食後はすぐに自分の部屋へ。
早く帰りたい・・・
あろうことか、念願だった海外留学だったのに、私は早く帰りたいと思い始めました。
全然楽しいと思えなかった。
泣きそうな毎日でしたが、唯一大好きな時間がありました。
私が通っていた学校はバンクーバーのダウンタウンにあって、ダウンタウンに行くためには「シーバス」という船に乗ります。
「シーバス」に乗って海を眺める時間が私は大好きでした。
泣きそうになりながら(実際にはほとんど毎日泣いていたのですけれど)シーバスから見るバンクーバーの街並みはとても美しくて、ガタンガタンと駅に到着したときのちょっと寂しいような気持ちを今でもよく思い出します。
あの時から、私は恋をしているのです。
バンクーバーの海に。
夏休みの語学留学から帰国した私は、本当は帰りたいと泣いてばかりいたことなど誰にも言わず、思いっきり楽しかった風を装いました(笑)
それから何年もして、私は当時働いていた会社で心身ともに疲れ切っていました。
再び、泣いてばかりの日々。いつからか、もう一度カナダの海を見たいと考えるようになりました。涙も尽きかけたある日、地元の海を見ながらカナダにもう一度行こうと決心したのでした。
そして、ワーホリビザで再びカナダへ。
飛行機が着陸し、空港への通路で思わず号泣してしまった私。何人もの人が「大丈夫?」と声をかけてくれました。
「大丈夫。嬉しいだけだから」そう言うと
困ったような、呆れたような顔で笑って、ギュッとハグをしてくれて
何かを言って立ち去る人達。(何て言ったかは、わからない)
ああ、カナダのこういうところ好きだなあ。
人がみんな優しいのです。
それからの1年間は私の人生で最高に幸せな1年間でした。
大好きな海にもたくさん行きました。
中でも私のお気に入りは「キツラノビーチ」
海鳥までも、励ましてくれているようです。
「ねえ、顔をあげて。世界はこんなにも素晴らしいのだから」
ワーホリの1年間はあっという間に過ぎ去り、日本に帰国してからも私はバンクーバーの海が忘れられず、お金を貯めて飛行機のチケットを買ってはバンクーバーへ向かいました。
あの海に会いたくて。
どんなに辛いことがあっても、人生に絶望していても、あの場所に行けば元気が湧いてくるのです。涙を拭いて、笑顔を取り戻すことができました。
大好きな、大好きな、世界で一番大好きな場所です。
最後にあの場所へ行ったのは10年前。
気づけばもう10年も経っていました。
もう一度会いたいな。
あの海に。
おばあさんになってしまうかもしれないけれど、必ずまた会いに行くよ。
必ず。