市民センターでおもしろ動画を探してたあの頃、おそらく人生で一番ハングリーだった。
遡ること十数年前。
小学三年生の僕の家にはパソコンが無かった。
無いといえば嘘になるけど、あるのはもはやガラクタ同然、時代に取り残されたボロボロのパソコン。
パソコンがあったって、インターネットが通ってなければ意味がない。
当時同級生のほとんどがインターネットに触れて居て、自分が知らない情報、知るには早い情報、あんな情報、、、、、どんどん知り始めて居た。
しかし自分はどうだろう。
インターネットがない僕は手元にあるコロコロコミックと自由帳ぐらい。お絵かきしかできない。想像力ばかり磨かれる(それで十分なんだけど)。
なんとなく悶々としていた僕に耳寄りな情報が。
「あそこの市民センターのパソコン、ネット使えるらしいぞ!!!」
勝利を確信した。俺の時代だ。遅すぎたヒーローの見参だ。
友達を引き連れ、大地を踏みしめ、いざ市民センターへ。
入り口過ぎたあたりのホールの奥、それは存在した。
パソコン、、、、!!!!
高まる気持ちを抑えながら、電源を押した。
憧れの「窓」が青い画面と共に現れた。
迷わず「e」のアイコンをダブルクリック。
現れるはGoogleの文字、そして横長の四角形!!!!!
ここに、知りたい情報を打てばいいんだな、、
心臓が震える。手に汗握る。頭が冴え渡る。
文字を打ち込む。。。。
「おもしろ動画」
(スマホ版だけど、まあこんな感じ)
当時の同級生のなかでは一つのホットワード、トレンド、キーワード、もはや合言葉だったその言葉を!!!!打ち込む!!!!!
Enter!!!!!!!
ッターーーーン!!!
「YouTube」なるサイトに宝の山のようにおもしろ動画があるらしい、、、、
あった、、、この文字をクリックすれば、宝の山に、、、、
カチッ、、、、、
うわー、宝の山、、、ん、、???
「最新のフラッシュプレイヤーをインストールしてください」
はあああああああああああああああ??????
ちょっと、市民センターのおばさん!フラッシュプレイヤーって????
「ふらっしゅ、、?何、、?知らないねえ」
終わりだ。
慈悲はない。
さようなら、宝よ。
また会う日まで。
ブラウザバックし、最初のページへ戻る。
もはや光など失せた目を、ただただ下に流す、、
、、、、ん?
おもしろフラッシュ、、、?
もはや力など残されてない人差し指を二回、振り絞って押す。
そこには。
動き出す刺激。
宝の山。
残された戦士たち。
聞こえるのは「チバ、シガ、サガ」
まだ終わっちゃいなかったんだ。
俺たちの本当の戦いはこれからだ。
次回作にご期待ください。
いや、終わらない!!!
おもしろフラッシュにたどり着いたあの日が、はじめてのインターネットだった。
それからは狂ったようにおもしろ動画フラッシュを漁った。それはもう、おかしくなるくらい。
びっくり系のフラッシュに何度びびらされたか。
ウォーリーを探さないで。 絶対許さん。
あれから時は過ぎ、今じゃスマホ片手に好きなだけYouTubeみてる。
幸せだ。
あの頃の俺に伝えたい。
「おもしろ動画」で検索してもあまりおもしろい動画は出てこないぞ、と。