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「なぜアリティアは「聖王国の盾」とまで言われていたのか~ファイアーエムブレム「アカネイア大陸の海と地政学」~

 主人公マルスの父・コーネリアスが国王を務めているアリティアは、「聖王国の盾」といわれている。
 しかしながら、国としての規模はあまり大きくなく、少なくとも騎士団(陸軍)の規模から考えればグラと合わせてもグルニア軍の一部隊(黒騎士団)と同規模である。(メニディ川の戦い当時、グルニア軍の主力はアカネイア城を包囲していたと思われる)
 では、「とてもじゃないけど聖王国の盾といわれるほどの軍事力はない」といえるのかというと、そうではないと思われる。アリティアには別の力があるのだ。
 その力とは「海軍力」である。少なくともアリティア城が陥落した際にも、マルス王子が追撃を振り切ってタリスまで逃げ切れるだけの海軍力があったと思われる。(アリティア海軍の一定数が日和見を決め込んでいたと思われるため、ごく一部だと思われるが)仮想敵国であるグルニア・カシミア(相当な海軍力を保有していた独立都市)・マケドニアヴァイキング(マケドニアの西岸を拠点としていた)・ドルーアといった国を海上で食い止めるうえで、アリティアという国は不可欠な国であった。海軍そのものは国土の規模に関係なく「貿易」と「立地(良港があるかどうかも含む)」によって決まるといってよいものである。そして、アリティアにもし良港が集中していたとしたら、アカネイア大陸内でも随一の海軍力を保有していたと思われる。
 しかしながら、アリティア軍の中に海軍というものは見当たらない。しかも、アリティア海軍というものがまとまっていれば陸軍を陸路ではなく海路で運び、アドリア峠の北あたりに上陸するという手もあったと思われる。
 それをしなかった理由としては、アリティア海軍・ひいては当時の海軍がほぼすべて「独立した商人による武装商船」か「海賊」であったためと思われる。独立した武装商船の集まりだとすると、船ごとに日和見を決め込んだり、あるいはどちらかに味方したりするということを判断できる。そういう独立性は「船」という単位が強力な海軍のほうが陸軍よりもずっとやりやすい。
 結論を述べると、アリティアは武装商船を中心とした海軍国であり、その海軍力を持って「聖王国の盾」と呼ばれていた。そして、その「聖王国の盾」はアリティアという国のまとまりのなさによって「バラバラ」になっていた。それでも、一部の海軍力だけでマルス王子を逃がせるくらいの力があり、アリティアの海軍力はまとまりさえすれば大きなものだったと筆者は推測するのである。