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差出人百面相

小野姉子、という人から手紙がきた。
小野妹子ではなく、小野姉子だ。
姉じゃ。姉者。姉者じゃ。なんてフレーズが不意に頭の中をよぎる。
小野妹子にはお姉様がおられたのだろうか。
小野妹子という名前でありながら、男性だったということをふまえるとお兄様かもしれない。

けれども、私の友人にそんな人はいない。

差出人の住所から、私の友人からの便りであることがわかる。
少し前から架空の差出人を演じる、そんな手紙のやりとりをしているのだ。
宛先は、配達員の方を悩ませてはいけないのでお互いに本名でだしている。

やまだへ
小野姉子です。
ジェンダーレスの姉子です。
春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山
気が付けば夏ですね。
最近はサクレという氷菓のレモン味を食べております。
大変美味です。冷たく甘く、爽やかな香り、何をとっても素晴らしいものですね。
なんとレモンの輪切りまでのっています。
種までついています。
ぜひお近くの問屋にてお買い求めください。
日差しが鋭く、肌をさすようになってまいりましたので熱中症にお気をつけくださいまし。
これにて、どろん。
                              小野姉子より


姉子殿、持統天皇の歌を読んでおられる。
なんだろう、ちょっと雅なのじわっと面白い気がする。
ほんでアイス食べてんかい。サクレとは、なかなか渋い。
さすがだ。
選ばれたのがパルムだったとしてもなんかいい。
問屋もどろん、という選ばれた言葉たちもなんだか好きだ。


私は、小野大町さんとして手紙を出そうとするかな。

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