個展「ハピネス」に向けて今思うこと。
来年のギャラリーハウスMayaでの個展「ハピネス」のために描いている月の絵の連作。この画像はデジタルデータですが、現在この絵を3枚に分けてペインティングを施しています。
この個展を行うと決めた時、すぐに自分の小説と合わせて展示しようと決めた。そこは今でもぶれていなくて、毎日どんな絵を描こうか考えております。
自分は小説を書くこととイラスト描くことを自分の生き方としよう。
そう思っているのです。できるかどうかなんか全く関係ないし、欲張っているわけでもないけれど、でもただそう思ったし、ただそうしたい。
文章は元々お金になんかなってなかったことなので、これからもお金になんかならなくていいし、気楽に書いていくことでしょう。文章を書くことはただただ楽しい。自由を感じる。けれどイラストは生直、商売となってしまったことで、これからもドッタンバッタンとあれやこれやもがいていくことでしょう。
個展について。
今回の最大のテーマ「小説へ絵をつける」に対し、当初職業的に進めようとしたものの、全くしっくりこない。というかおれのスキルのボロボロさ加減に嘆きの連続……。
今までもお仕事で小説連載に絵をつけたり、プロの方々の小説の表紙も描かせていただいてきた。そう思い、埃のかぶったプロ根性を引っ張り出し、世の中にないような素晴らしい表紙を描くぞ。挿絵を描くぞ。と思ったものの、全く、びっくりするくらい全くなーんも描けない。
多分商売として、依頼を受けたのならば、なんとか形にするくらいはできるでしょう。編集さんや、著者の方々の思いがそこにはあるから。そこからの起点で描く。ということはとても大きなとっかかりというかヒントとなるのです。そしてイラストレーションというものは一人でなんて到底作れない。作れないのではなくて、一人で作ったら成り立たないものだと思っています。だから自分がスキルがなくたって、自分がこの仕事に対してきちんと意義を持って気持ちを持っていればきちんとご縁は流れてきて、そして関係する方々を頼りながら作り上げることができる。そしてそれはイラストレーションの醍醐味であると思うのです。苦しいことも含み。
しかし全く自由にやっていいという自己完結のイラストの場合、それは全く機能しなかった。自分には情緒豊かにその一節を飾るようなイラストを描くことなんて不可能だった。そいてしばらくその出来ない。に対してもがいていたら、あの自分のイラストレーターの小さな最盛期に苦しんでいた日々を思い出した。当然プロなら苦しみもその達成への道筋なわけで、苦痛にもならないはずだけど、自分は野球をやりたいのにサッカーをやっているような、そんな分離感をずっと感じていた。その感覚は正しくて、結局仕事を重ねるほど自分がやりたいこととは遠くずれていった。そしてある日もうイラストはやらない。というところまで行った。
そりゃそうだよね、野球やりたいのに、バットでボールを打ちたいのに、足であんなでかいボールを蹴らなきゃいけないなんてそんなのつまらないよ。
そこで決めたのです。いいやもう小説に絵をつけるなんてカッコつけてないで、その一文に対して「今自分が描きたいこと」見せたいことを描いていこう。そう思ったらスコンって。楽になった。というとカッコつけすぎだけど、ような逃げたのですよね。いいんです。やりたいことやろうがこの個展の趣旨なので、バンバン逃げてください。と自分に言った。
そしてその逃げた先には、自分が描きたいものがちゃんと待ってくれていた。自分がイラストレーターとしてデビューする前後は自分の内面としっかりつないで絵を描いていた。元々絵を描くスキルなんて皆無だし、デッサンもクロッキーもイカしてる描写なんてものは微塵もできなかった。けれど、自分の気持ちとつながる。そこには大きな広がりを感じた。なので描くたびに自分の気持ちが心地よくなる。それだけを追求した。構図も色も全て良い物、綺麗なもの。美しいもの。なんていう基準はなくて、ただただ自分の心の奥が疼くもの。そこだけを頼り描いていた。
例えばこんな絵です⇩
それがいつの間にか心と繋がれず、その最大の自分の特徴の絵がかけず、いつの間にか有象無象のひしめく技術勝負な世界に足を突っ込みだしてしまった。それは上手に絵を描くこと。それは自分がいる世界ではなかった。絵を上手に描こうなんて、そんな世界は本当に居心地が悪かった。偏差値38で東大に通うものでしょう。というヤケクソな比喩で言うとさ。
そんな半年間あれやこれや考えてたどり着いた個展のテーマは小説もイラストも「深層心理」自分の胸の奥の気持ちに投げかけるイラストと小説。そこに迷いもなくフォーカスできたらいいなと思う。タイトルの「ハピネス」という幸福論をどんな風に表現できるのか。
ということで会期まであと1年となったところでようやく作品の方向性も定まってきた。しかしこれまた全然作業が進まないのです。これは自分の胸の奥に聞く作業も膨大なのでいつどんな時にひらめきが降りてくるか、そしてそのひらめきをものにできるか。そこに掛かっているのかな。
なんてまだまだ他人事のように絵を描いています。楽しみにしてくれる人がいてくれたらマンモスうれぴー。
宍戸竜二個展「ハピネス」
2020年9月14日〜19日
外苑前 ギャラリーハウスMayaにて。
東京都港区北青山2-10-26
03(3402)9849