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彼女は 何を着る?〜わたどこの衣装選び
北尾監督の回顧録に、衣装について書かれていたので、衣装選びについて書いてみよう。
舞台やインディーズの映画において、衣装を自前で用意することは多い。手持ちのものや 知人に借りる場合もあれば、そのために購入しようと探し歩くこともある。予算がおりることもあるけれど、あまりないために自前を求められることも多いので、自分で購入することも。その後、私服として使えるものならばいいけれど、自分と かけ離れたキャラクターの衣装の場合は悩ましい。
大変ではあるけれど、役作りの一環ともなる この作業が、わたしは 結構好きだ。
服を選びながら、その人物に想いを馳せる。
彼女は何を選ぶのだろう?
まだ掴みきれていない彼女を連れて、歩き回る。ピン!とくるものがあれば、試着して写真を監督や演出家、あるいは衣装担当に送って意見を求める。また探す。ぐるぐるぐるぐる。
この過程で 役への具体性が積み重なってゆく。
もちろん、専門のスタッフの知識と感性と実務的なスキルを持って用意されたものから、多角的に役を探っていくのに越したことはない。そこから想像し、着慣れて 自分のものにする作業が 役者の仕事だ。
自分が苦労したぶんだけ、近づけたと考えるのは
傲慢なのだけれど。
期間の短い現場では 時間が足りないと思うこともあり、自分で具体的に行動したことは、やはり自分の中に生きている気がする。
写真のモデルのようなことを、ちらほらさせていただいている。撮影する場所だけを決めて集合し、ふらりふらりとしながら撮影、みたいなことも多いのだけど。場所のイメージから衣装を決めて、自分なりの やんわりとしたコンセプトを持って撮影に臨む。あとは当日の流れに任せるのみなのだけれど、自分の深部を見せるためには、ほんの少しの役作り的な要素は欠かせない。衣装は、そんなひとつとなんだろうな。自分じゃないものになりたいわけではなくて、自分を曝け出すために力を借りるのだ。自分のまま、というのは、簡単なようで難しい。リアルを感じさせる演技、というものが、日常のままでは決してないような、そんなことに繋がっている気がする。
わたどこの衣装は、そんな写真の撮影で着用したものだ。橋本恵一郎さんに初めて撮ってもらったときのもの。もう一種類の候補と、この撮影の写真を候補として送ったところ、そのまま そっくり この衣装でいきたいとのことで決定した。
古着屋で手頃に購入したコート。ボリュームがありすぎて、重くて、普段着用するには適さないのだけれど。手頃な価格なので、撮影時に 汚れなども気にせず、思いっきりゴロゴロできる。
わたしは、ゴロゴロするのが好きなのです。
(場所のリクエストもゴロゴロできるところ、だったかもしれない)
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同じ日の昼と夜。夜の衣装が、ほぼそのまま「わたどこ」衣装となった。
古着というのは、きっと以前の持ち主の気配も持っているんじゃないかな。
自分だけでは構築しきれない役の深みを、服からも補ってもらっているのかもしれない。
「娼婦」とだけ書かれた この役が、今、どこかの店で働いているソープ嬢やデリヘル嬢なのではなく、観念的な存在としていてほしいのではないかということを思ったような気がする。
この いつの時代のものか、どこで作られたのかもわからないコートが 北尾監督に選ばれたのは、そういうことだったのではないだろうか。
こんなボリュームのコートなのに、撮影の際は 寒くて寒くて。身体的なものには抗い難く、 確実に 影響は表れる。どんどん 顔色は青ざめ、表情筋も強張ってゆく。
でも。冬の設定なので、寒いままで存在していいのならば、むしろ気候も ありがたく利用して。
このシーンは、冬の、この寒さの中で、だからこそなんだろうなぁ、とも思う。
気候の良い 穏やかな夜では、こうはならなかっただろう。
別の仕事での北尾監督現場でも、自前衣装で寒い撮影がありました(笑)
そのときは、薄いワンピースで 寒さを感じさせない幸せオーラを出すようなものだったので、それは 大変!
いかに防寒を仕込めるか、考えておくのは大事だなぁと、しみじみ思ったのでした。
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