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喫茶店時間と わたどこと

約束の時間まで 1時間以上ある。
その駅には
気になっていた喫茶店があることを思い出し
なんて絶妙なタイミングと 楽しみに向かった。

ちょうどカウンターの真ん中
マスターが珈琲を淹れる窓の前が空いていた。
混み合う休日は受けられないこともあるという
ネルドリップ珈琲を
タイミングが大丈夫だからと受けてくれた。
ネルドリップ目当てだったので嬉しい。
とても優しい 珈琲だった。

控えめに ぽろりぽろりと流れる音楽。
抑えながらも さざめいている あちこちの会話。
珈琲がビーカーに落ちる音。
グラス同士が 控えめにクワンとぶつかる。
外を走り抜ける車。
さまざまな音が 静かに入ってくる。

照明が美しく 光と影に見惚れる。
グラスの影、ちょっと傷のある目の前の壁を
いくらでも眺めていられる。

いつも自分のいるところから沈んでいるのに
心地いい。
そんな時間を過ごせたあとは
自分のまわりに優しい膜ができて
守られているような余韻があるのだ。

少しだけ泣きたくなる。
悪いかんじではなく。

✴︎

喫茶店からは遠ざかり
映画の上映、そして舞台稽古と
役者活動に集中した日々を送っている。

今上映中の映画
『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』は
この喫茶店での感覚に近いと ふと思う。

普段 鈍くなってしまう感覚。
簡単に見えるものばかりを見て
たくさんの音が溢れる中で
どれも 届いてはいないような。
疑問なく言葉を受け入れて
そして 忘れていく。

それを 優しくリセットしてくれるような
そんな喫茶店が好きだ。
そんな映画であったら 嬉しい。

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たかはしきょうこ
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