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映画「夜間もやってる保育園」のこと

初出2017「現代を生きるための映像ガイド」青土社

「壁のあちら側」

 独り身だった時期の私にとって、「子育て」というものは、興味すらないどころか、存在すら気にしたことのない話題だった。
 けれど、数年前に子どもが産まれ、否応なしに自分もこの問題に当事者としてコミットせざるをえなくなってくると、そこで起きているあまりに過酷な現実に、絶望を通り越して放心するしかない状態に陥った。
 詳しくは書かない。ここでそれがどれだけ大変かを書いても、子どもを持っていない読者(あるいは若者)は過去の私と同じように、
「子どもを保育園に預けられないだけでなにを騒いでいるのだろう? 自己責任ではないか? 最初に考えなかったのか?」
 と、きょとんとした顔で首をかしげるほかないだろうから。
 そうした人は、ここで紹介する映画に対しても、「保育園のドキュメンタリーか……あんまり興味ないな」と、読み飛ばしてしまうにちがいない。
 私はあえてそういう人に本作を見ろというつもりはないのだが、それはそれで少しもったいないな、とも思っている。
 なぜならこの映画は、そうした人こそが楽しめる作品になっているからだ。

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