幼稚舎にコネや縁故は存在するのか①親がOB・OGのケース
幼稚舎を受験するうえで、頻繁にささやかれる『コネや縁故がないと合格できない』という噂。その真相は『あれば有利に働くが、合格を確約できるコネや縁故は存在しない』という結論で間違いないと言っていいでしょう。では、コネや縁故はどのように有利に働くのか、解説していきます。
今回は、コネや縁故の中でも最もボリュームが大きい層であるOB・OG、つまり親が幼稚舎出身であれば、どのように有利に働くのか分析しました。
1.OB・OGの親はどれぐらいいるか
私の調査では、例年の出願者およそ1500人のうち、幼稚舎のOB・OGを親にもつ受験生は毎年50-80名程度です。1世代(例:幼稚舎〇年卒)7〜10人程度、それが5〜10世代程度いる計算です。
幼稚舎の同級生同士で『〇〇のところは今年受験で△月生まれらしい』『〇〇は××先生がまだ在籍しているからいいよな』などと会話をしています。同じ幼稚舎出身でも、当時の恩師がまだ在籍している場合とそうでない場合では、そこにも心理的な格差が存在すると言います。
2.OB・OGの中にも存在する優先順位
また、幼稚舎OB・ OGのなかでも更に優先順位があり、下記の順でその効力は強くなるとみていいでしょう。
・先祖代々幼稚舎出身
・両親とも幼稚舎出身
・両親のいずれかが幼稚舎出身
当然、家系の中に幼稚舎出身の方が多ければ多いほど、多くの接点ができますから、その学校との結び付きは強くなります。
では、なぜ親が幼稚舎出身だと合格しやすいのでしょうか。
3.親が幼稚舎出身だと有利な理由①
福澤先生の教えを理解しているから
私立小の大きな特徴は、教育精神や理念に基づいて教育を行うという事にあります。特に慶應義塾は福澤先生の教えが色濃く教育にも反映されていることで有名です。幼稚舎側が試験を実施するうえでは、入学してからその運営方針に賛同してもらえるか、ご家庭でもその教えを実践しているか、という点は非常に大きな判断材料となります。
慶應義塾や幼稚舎に理解の浅い方が入学後に、『福澤先生の教えを押し付けることに賛同しかねる』『幼稚舎の教育システムには疑問を感じる』『6年間同じ担任だと逃げ場がない。担任を変えてくれ』などといったクレームを付けてくる事が定期的にあるようです。その点、幼稚舎出身であれば、少なくとも16年間はその教えがみっちり叩き込まれている前提がありますから、そのようなトラブルを起こすリスクは低く、有利に働くという事は理解できるでしょう。
4.親が幼稚舎出身だと有利な理由②
親がどんな人柄か理解できているから
小学校側は、『子ども自体がどのような人間であるか』ということに加えて、『親がどのような人間であるか』という事も重要視しています。なぜなら、子の品格は親の躾によって育まれるものであると同時に、小学校が抱える問題の多くは、保護者が絡んだ時により肥大化する傾向にあるからです。いくらお金を持っていようと、いくら社会的に成功していようと、問題を起こすような横柄な親はトラブルの元になります。
1200字程度の願書、2時間程度の試験で親の素性まで見抜くのは至難の業といってもいいでしょう。その点、卒業生であれば、当時から在籍している教員が一定数いますから、親がどのような家庭で育ち、どのような性格かをある程度理解していますし、担任の先生と卒業後も定期的に会っている卒業生がほとんどですから、『親がどのような人間であるか』を手っ取り早く理解できる訳です。
学校側からすれば、子ども自体が試験で同じレベルであった場合、親の顔や人格が分からないご家庭よりもある程度知った人の方が合格させやすいといった背景は理解頂けるでしょう。無論、縁故を持たずとも、お子様の様子からそういった品格が滲み出ている場合はその限りではありません。
5.親が幼稚舎出身だと有利な理由③
願書に自分の体験を盛り込みやすいから
試験で面接のない幼稚舎が、ご家庭の様子や親の教育方針などを知る唯一の方法は願書です。合計1200字程度の中で、『幼稚舎でなくてはならない理由』を表現しなくてはなりません。その点、卒業生であれば『幼稚舎時代の〇〇の経験が今、〇〇に活きている。我が子にも同じように、人生で必要不可欠な〇〇を学んでほしい』というロジックが成り立ちます。
自分自身の体験談ほど、説得力のあるものはありません。ウェブサイトやパンフレットで見た情報では、他の志願者と差別化することはできませんから、この点においても、卒業生であれば有利に働くと言えるでしょう。
6.まとめ
以上のような理由から、親が幼稚舎出身であるという事が入試において有利に働くと言われています。ただし、代々幼稚舎出身であるからといって合格が確約されているいう訳ではなく、試験である程度のレベルを突破しなければ合格は難しいのも事実です。親が3代にわたり幼稚舎出身で、兄弟も幼稚舎に通っていて合格が確実視されていたお子さんであっても、初歩的な聞き取りミスをした為、不合格になったという事例もあります。
実際のところ、親が幼稚舎出身の場合の合格率は7〜8割程度と言われています。仮に親が幼稚舎出身の80人が出願した場合、60人程度合格する計算となりますから、学年全体のおよそ40%程度は『親が幼稚舎出身』の枠になると言えるでしょう。
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