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「男児の悪い部分を煮詰めたような」と語る母の秘策とは/幼稚舎合格者インタビュー②

幼稚舎に合格されたご家庭へのインタビューシリーズ。不定期更新で全10回を予定しています。最新の24年秋実施の入試に加え、直近5年間のものをランダムに織り交ぜています。

私が関わっている塾に通われていた方々、私が個人的にサポートさせて頂いた方々への取材やアンケートを基に、一部加工を施して再構成した内容となります(掲載許諾取得済)。

1.プロフィール

【 性 別 】男子
【 月 齢 】4~6月
【父親の職業】日系企業
【母親の職業】日系企業
【コネ・縁故】親族が三田会関係者
【取材回答者】母親

2.受験全般について

--年長時の1日のスケジュールを教えてください。

朝は父親と近くの公園で運動をしてから保育園に登園していました。18時頃に帰宅し、お風呂、夕飯を済ませて19時半~21時半頃まではペーパー、お絵描きなどに取り組んでいました。共働き家庭でしたので、平日は家族でゆっくり過ごせる時間がほとんどなく、毎日が飛ぶように過ぎていきました。保育園の迎えから寝かしつけまでは、夫婦で曜日ごとに分担、どうしても手が回らないときは実家の両親の手を借りたり、シッターを頼んだりしていました。教室は土日のみ通っていました。

--出願校とその結果を教えてください。

慶應義塾幼稚舎/早稲田実業初等部/学習院/農大稲花/洗足/森村/さとえ/西武文理
前受け校で本番慣れしてから11月に挑みたかったため、埼玉と神奈川はそれぞれ2校ずつ受験しました。幼児は環境に左右されるのが当たり前という前提のもと、なじみの教室で顔なじみの受講生やテスターに囲まれて受ける模試とは違い、初めて会う人、初めての場所で力を出し切れるようにしたいと思っていました。

--やらなくても良かったと思う事はありますか。

上述の通り、年中時より毎朝父親と公園で運動をしていたのですが、1年継続してもあまり運動神経に改善が見られませんでした(笑)特に幼稚舎は、ある程度の運動能力があれば、そこからは指示を覚える能力の方が重要だと思いますので、サーキットに関しては無駄に公園に行くよりも机上で図面にして全体像を覚えてイメージさせる練習の方が効率が良かったかもと今となっては思っています。

--幼稚舎の志望度はどの程度でしたか。

幼稚舎が第一志望でした。私たち夫婦は二人とも国立大学の出身でしたが、親族で慶應三田会に深く関わっている者がいて、「将来慶應の人脈を使うなら、幼稚舎から入るに越したことはない」と言われていました。小学校受験を考えていた当初は、より良い学習環境を用意したいという想いでしたが、徐々に「せっかくなら大学まで受験がない方がいい」という考えに至り、最終的には最難関にチャレンジしようとなりました。

--幼稚舎の願書はどのように仕上げましたか。

うみねこさんに依頼しました。両親とも慶應出身ではないので、慶應のことも幼稚舎のことも一般的な範囲までしか理解できておらず、とても不安だったときに知人からうみねこさんを紹介頂きました。三田会関係者の親族当人からも、受験にあたっては口利きはしない、と事前に言われていたので、(その方面のコネを利用しようなどとは考えずに)願書で三田会の結束力や、それが社会に与える影響について書いて頂きました。

3.お子さんについて

--ひとことで言うとどのようなお子さんですか。

全然言うことを聞かない子です(笑)家では、走り回る飛び回る(マンションです)、お風呂上がりに裸で図鑑を読む、おもちゃは出しっぱなし、弟とずっと喧嘩をしている、服で手を拭く、怒られるまで動かないなどなど、一日中夫婦で怒鳴っています。とにかくOFFモードの時のだらしなさといったら目も当てられない。

ただ、ここぞという時の集中力には目を見張るものがあると思っていて、図鑑を見ている時などは2~3時間机に座っていることもありました。模試や考査でこの集中力をどうすれば出せるのか、その点に腐心していました。結果的には、とにかくモチベーションをコントロールしながら乗り切った形です。逆に言うと、男児の悪いところを煮詰めたような我が子でも、当日にポテンシャルを引き出すことさえできればご縁は頂けたので、同じようなご家庭がいらっしゃればご安心頂ければと思います(笑)

--お子さんの強みを教えてください。

上記のような息子の短所は、「男児はそういうものだ」と割り切り、長所を伸ばすように心掛けていました。具体的には、積極性の部分です。幸いにもそこまで人見知りするタイプではなかったので、初めての友達や先生とも積極的に関わることができていました。短所を直そうとするあまり、その強みを潰したくなかったので「優しく、明るく、楽しく」をモットーに過ごすようにしており、息子自身もそれを体現できていたと思っています。

--お子さんの弱みを教えてください。

だらしなさです。直前期まで、服のすそがズボンから飛び出したまま、そして手も濡れたまま、歌をうたいながらトイレから出てくるような子でした。親のしつけの問題と言われてしまえばその通りで、返す言葉もありません(笑)しつけに厳しい幼稚園ではなく、おおらかな保育園だったので、最後までそのいい加減な性格は直ることはありませんでしたね。

--光っていた部分はどこだと思いますか。

いつも友達の輪の中心でワイワイしているような子だったので、そのような明るさを買ってくれたのだと勝手に思っています。教室の先生からも「ザ・男児っていう感じですよね」といつも言われていました。1年中、外遊びをしているせいで肌も黒かったので、そういう意味では幼稚舎っぽさもあったのかなと思います。

--受験を終えた後はどう過ごしていますか。

朝の運動は良いルーティーンになったようで、今でも続けています。弟も2年後には受験なので、今は弟も含めて運動というより一緒に楽しく遊んでいるようです。帰園後も、真っ暗になっても近くの公園でボール遊びをしています。

4.ご家庭について

--夫婦の役割分担を教えてください。

お互いほぼフル出勤だったので、夫婦間の連携は必須でした。朝は夫が運動に連れて行ってくれていたので、保育園への送りは私がやっていました。迎え、夕飯、お風呂、寝る前のワークまでは、その日に早く上がれる方が担当していました。お互いがっつり仕事の日は21時頃帰宅、早上がりの方は定時に切り上げて迎え~寝かしつけまで一気にやる感じです。21時半頃に寝かしつけてから、皿洗いや洗濯、翌日のおかずの準備などをしていました。どうしても仕事で都合がつかないときは、シッター、宅配、祖父母のヘルプもありつつ、なんとか回せていた感じです。ペーパーも1日30~60分程度しかできなかったので、点数が悪くても「幼稚舎では出ないし」と割り切っていました。

--いつが1番つらかったですか。

夏の終わりですね。「男児は夏から伸びる」という言葉を信じ、今か今かとそのタイミングを待っていたのですが、結局何の改善も見られることもなくそのまま入試に突入しました(笑)ただ、それは毎日接している親からみればそうなのであって、数ヵ月スパンで見れば成長していたのかもしれません。いずれにせよ、家では最後まで怒っていました。

--つらい時期をどのように乗り越えましたか。

子どもはもちろん、家族全員がつらい雰囲気にならないように最後まで明るく過ごしていました。家での生活態度は悪かったですが、外づらは良かったので、教室、模試、考査の前に子どものモチベーションを高めることに注力していました。

--直前期の過ごし方を教えてください。

モチベーションを最高潮に高めるべく、家で「こうしたら最高にかっこいい選手権」を行動観察、運動、お絵かきのそれぞれでやっていました。例えば、「行動観察で溶け込めずに楽しくなさそうな子がいる!最高にかっこいい男なら、こんな時どうする!?」と聞いてみて、子どもが実演をするのです。すると「こっちの方がもっとカッコいい!」と夫や私が参入して、家族でどんどん実演をしていました。お絵かきの時も「こう答えなさい」というのではなく、「私の方がもっとかっこいい発表の仕方を思いついたよ」と言って、本人の負けず嫌いを刺激するように個性を伸ばしていきました。これがいい練習になったと思います。ちなみにペーパーだけは最後までかっこ悪いままでした。

--合格の決め手は何だと思いますか。

本番力だと思います。緊張しない力、集中する力、モチベーションのピークを持ってくる力、そして入試問題との相性も考慮して、幅広く準備したことで本番への対応力を付けられました。例えば、いろんな塾の模試を受けたり、過去問を分析して類似問題を考えたりもその一環です。どれだけ仕上がっていても、入試本番でプレッシャーや緊張で実力の5-6割しか出せずにいたら合格は難しいと思っていたので、我が家ではどんな状況でも8-9割くらいは出せるよう準備をしたいと思っていました。

5.メッセージ

客観的に見て、総合力では到底他のご家庭には及ばなかったと思います。ペーパー、生活課題、巧緻性などは平均かそれ以下でしたから。我が家は幼稚舎が第一志望でしたから、そこで求められるもの以上のものは切り捨てて、必要とされる要素をしっかり伸ばすことを心掛けました。

例えば、試験で周りが緊張して硬い顔をしてるなか、ひとり明るくニコニコしていればそれだけで目を引くと思いますし、初対面でも自然体で楽しそうに接する事ができたり、失敗を恐れず思い切りの良い動きができたりなど、普段の様子が出せれば勝ち目があると思っていました。家庭全体が常にポジティブな雰囲気だったことも良かったと思います。

あとこれは塾の先生から言われて勇気づけられた言葉ですが、「バランスよく小さくまとまっているよりも、凸凹が大きく何かが突出している方が最終的には大きく育つ」というのを意識的に育児に取り込んでいました。結果的にはこの考えも幼稚舎には合っていたのかと思っていますので、短所ばかりに目を向けず、長所をどんどん伸ばしてあげるのも良いと思います。

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