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幼稚舎にフリーで合格するタイプ②絵が抜群にうまい


どのような子がフリーで幼稚舎に合格するのか―。我が子を幼稚舎に入れるために、幼稚舎が求めるお子さま像を正しく理解し、その素養を身に付けさせるという逆算的なアプローチもときには有用です。

今回は絵画や製作での卓越した才能を活かして合格を勝ち取ったお子さんのケースに迫ってみたいと思います。

1.オーラを放つ絵

幼稚舎の試験はご存知の通り、大きく運動能力、行動観察、表現力(絵画制作)の3つに分かれています。慶應義塾では「社会の先導者」たる人格を形成するために「気品」を重視することから、このような表現力の試験を通して感性、創造性、発想力などをはかっています。もちろん、「お尋ね」と呼ばれるテスターからの質問を通して、上記に加え人柄やコミュニケーション能力をみるのが試験の主な目的ですが、これまで接してきたお子さまのなかには、シャイで口下手という短所はありつつも、それをカバーする類稀なる絵画力で合格を勝ち取ったお子さんもいらっしゃいました。

テスターの目を引く絵画とは、計算された構図、鮮やかな色使い、そしていきいきとした人物や生き物の表情や動作など、同年代が描く園児の絵とは全く異なるオーラを放っています。描いている本人の様子も楽しそうで、考える間もなくどんどんとクレヨンを持ち替え、スラスラと自分の思うままに表現していきます。これは正直に申し上げると努力でどうにかなるものというより、生まれながらに備わった芸術分野の才能によるものが大きいと思います。

2.爬虫類で勝ち取った合格

表現力の試験中、テスターは目に留まる作品があると受験生に絵のことやそれにまつわるエピソードをどんどん質問していきます。それだけでなく、他のテスターを集め、その受験生の机だけ人だかりができているという状態になることもあります。

上述した絵画力一本で合格を勝ち取ったお子さんのケースは、爬虫類がエサを捕食している様子の絵を描き、先生からの質問に自分の言葉で懸命に回答したそうです。その子は、普段から動物園やペットショップに通い、生物の細かな生態や身体的特徴までしっかりと理解しており、家でも絵画や模写に自ら進んで2~3時間は費やしているお子さんでした。私も本番で描いた絵と同じものを描いて見せてもらいましたが、本当に細かな部分まで的確に捉えられており、テスターはその細かな器官の役割まで突っ込んだ質問をしてきたとのことでした。

もちろん、テーマと関係のない生き物や、聞かれてもない生き物の特徴を一方的に話していてもテスターの心は掴めません。ついつい質問したくなるような魅力的な絵を描いたうえで、問われたことに的確に答えるという点が非常に大切になります。

3.なぜ幼稚舎は表現力を求めるのか

表現力とは、相手に伝えるいわゆるアウトプットする力のことを指しますが、そのアウトプットには良質なインプットが必要不可欠になります。つまり、表現力に長けたお子さまには、それ相応の知識が担保されているという見方ができるわけです。さきほどご紹介した本番のお試験で爬虫類を描いたお子さまも、生物に対する観察力が非常に優れており、相当な時間を生き物の観察に費やしていたことがうかがえます。それに加えて、細部まで覚えられる記憶力、空間の認知能力、色彩感覚、見えない部分を補う想像力など、絵画一枚見るだけで、こういったあらゆる能力を多面的に測ることができるわけです。

また、公立小などの画一的な教育システムとは一線を画す幼稚舎の「それぞれが違う能力と個性」をのびのびと育てる教育方針も、芸術分野での才覚を伸ばすうえで抜群の環境だと言えます。入学した後の夏休みの自由課題などでは、小学生とは思えぬ立派な作品が展示会場に並びます(保護者の方も作品展を見に行くことができます)し、芸術家の岡本太郎氏や千住博氏をはじめ、音楽、演劇、俳優、作家など表現力が必要とされる分野で多くの幼稚舎卒業生が活躍しています。劇団出身の方を音楽科教員として採用しているといった点1つ取っても、幼稚舎が表現力の育成をいかに重視しているかということがうかがい知れるかと思います。

4.自己表現と独立自尊

試験で問われる自己表現の力と、慶應義塾が掲げる独立自尊は非常に密接な関係にあると私は考えています。独立自尊とは「何事も自分の判断・責任のもとに行うこと」です。つまり、自分で考えて行動する「能動性」が重視されるわけです。芸術活動を行っている方の多くは「自分が好きだからやっている」という方がほとんどで、その表現力のベースになっているのは、「自分が興味を持ったものに対する深い知識と、それを表現することに楽しさを感じながら没頭する力」とも言えるでしょう。要するに、芸術の才能そのものに、並外れた自主性を見出せる訳です。

もちろん、技術的な指導で表現力が開花する場合もありますが、興味もないのに他人から指示されたことを「受動的」に行っていても楽しさが感じられるはずもなく、表現力は一向に向上しないということは明白でしょう。このように、幼稚舎が試験でも表現力を重視するのは、作品を通して「自ら主体的に行動できる」お子さんかどうかを見極められるからでしょう。

5.まとめ

幼稚舎専門の絵画教室もあるほど、対策が難しい表現力のテスト。学校側も、用意してきた勝負絵を使えないようなひねった質問を準備してきます。受験生の大多数は絵画力一本ではなく、総合力で勝負することになる訳ですが、どのようなテーマであってもテスターの目を引く絵が描ける芸術の分野で卓越した才覚をお持ちのお子さんは、幼稚舎合格のチャンスがあるかもしれません。そして、そのような個性を重視しのびのびと育成する環境のなかで、芸術家としての素地を育むという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

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