圧倒的な採用力で急成長!IT業界の注目企業「SHIFT」を分析!
今回のテーマは「ITサービス業界」
私の本業の業界なのですが、ここ数年急速に業績を拡大している「SHIFT」という会社を分析し、業界地図勉強会で分析内容を発表しました!
業界地図勉強会は、会計クイズのオンラインコミュニティ「ファイナンスラボ」で毎月行っている勉強会です。
業界地図の元編集長中山さんを中心に、
・大手町のランダムウォーカーさん
・にしけいさん
・おしばさん
・Madokaさん
・いごはち
で発表させていただいています。
にしけいさんの「手間いらず」の分析記事です!
外部環境の変化を読み、成長分野に積極投資してビジネスモデル転換に成功した事例について、数字の変化をもとに解説されていますので、ぜひ読んでみてください!
今回もたくさんの方にご参加いただきました!
毎回、参加者の方の熱量が高く、発表者としてめちゃくちゃありがたいです^^
参加者の方からのコメントで、自分では気づかなかった情報を知ることができるのも、この勉強会ならではのメリットです!
同業者がなぜ「SHIFT」を対象に選んだのか?
SHIFTは「ソフトウェアテストによる品質保証サービス」を提供する会社です。
そもそも、ソフトウェアテストとは何でしょうか?
一言でいうと、「ITシステムが正しく動作することを確認する作業」のことです。
基本的にソフトウェア(プログラム)には故障が存在します。
特に複数のソフトウェアを組み合わせて、システム化している場合、単体では正常に動作していても、他のソフトウェアとの組み合わせ方が間違っていると、システム全体としては正しく機能しません。
そのため、システムの利用を開始する前に、想定どおりにシステムが動作するかを起こりうる様々なケースを想定してテストし、発見した不具合は修正し、システムの利用を開始しても安心な状態にしていく必要があります。
これが「ソフトウェアテストによる品質保証」です。
会計システムを例としてあげると、
・取引先からの入金が確認できるか?、給料の振込が正しく行われるか?
→機能テスト(残高照会、振込振替など)
・月末営業日などに大人数で同時に使っても問題ないか?
→性能テスト(同時接続数、レスポンスタイムなど)
・万が一、システムの一部に故障が発生しても問題なく業務継続できるか?
→信頼性テスト(待機系切り替え、バックアップ処理など)
といった観点でテストを行い、問題なく動作することを確認しているからこそ、私たちは安心してITシステムを使うことができます。
テストが不十分なまま、システムの利用を開始した場合、それが重大トラブルの原因になる場合もあります。
ソフトウェアテストの重要性はご理解いただけましたでしょうか?
このソフトウェアテスト、市場規模は5兆円と大きいのですが、アウトソースされている割合は1%と非常に少ないです。
少ない理由としては、
・適切なテストを行うためには、システムや業務の仕様理解が必要
・テストを行うための環境が必要
といった理由が考えられます。
そのため、一般的にはシステムを開発している会社がテストを行うことが多いです。
このように業界でテストのアウトソースが一般的ではない中、あえてこの領域に特化し、業績を急拡大させているという点がとても気になり、今回、その理由を分析してみることにしました!
SHIFTの業績
SHIFTの業績は右肩上がりです。
なんと、売上高は6年間で13倍!毎年、売上高が1.5倍の成長率という高成長を継続しています!
コロナによって、企業のDXに対するIT投資が増えていることもあり、コロナ下で売上高をさらに増やしています。
当然、株価も絶好調。
2014年の株式公開から6年でテンバガーを達成しています。
2017年後半の上昇前に買っておけば、、、と悔やまれます笑
残念ながら業界地図には掲載されていませんが、この業界でこれだけの勢いで急成長している企業はなく、注目すべき企業です!
ITサービス業界のビジネス
「ITサービス業界って何?」という方向けに、ITサービス業界のビジネスを簡単に説明すると、
ソフトウェアやハードウェア、ネットワークなどを組み合わせた「IT化によって顧客企業のビジネスのサポートを行うビジネス」です。
こちらのフローは、IT化(システム開発)の流れを簡単に表したものです。
基本的には
①システムの目的を決める = 企画
②システムの仕様を決める = 要件定義
③システムを開発する = 開発
④システムを運用する = 運用
の4フェーズで構成されます。
このうち、
②要件定義と③開発の部分を「システムインテグレーション」と呼び、「システムインテグレーター(SIer)」と呼ばれる企業がサービスとして提供しています。
NTTデータ、TIS、野村総合研究所などが、国内SIerの上位企業ですね。
システムインテグレーションの部分をさらに詳細化したのがこちらの図です。
V字モデルや、ウォーターフォール型モデルと呼ばれる開発方法ですが、大きく「システムをつくる工程(上流工程)」と、「システムを検証する工程(下流工程)」に分けられます。
SHIFTが主にサービス提供しているのは、「システムを検証する工程(下流工程)」です。
この下流工程で行う「テスト」ですが、大きく4つのフェーズに分けることができます。
①テスト計画
②テスト作成
③テスト実施
④検証
SHIFTは蓄積したテストのノウハウを活かし、テスト計画のコンサルティングや、テストの自動化や実行管理、品質分析などのサービスを提供しています。
特に重要なのが「品質分析によるテスト結果の検証」。
システムとして起こりうる全てのケースをテストすることは不可能なので、実施されたテストの内容、結果、発見した故障内容などをもとに、「システム利用開始に必要十分な品質が担保できているか?」を判断するのですが、そこには高い専門性が要求されます。
SHIFTには数多くのテストをこなして蓄積したノウハウがあるため、その「ノウハウをもとにシステムの品質保証に貢献できる」というのが強みです。
もうひとつの強みがコスト。
SHIFTにテストを頼めば、低コストで効率的にテストを実施でき、システムの品質を高めることができるという点が強みです。
#会計クイズ 「PL比較問題」
ここで#会計クイズです!
登場企業は同じ業界の2社。1社はもちろんSHIFTです。
もう1社は野村證券系のSIerで、コンサルティング、システム開発、運用を手がける「野村総合研究所(NRI)」です。
両社のビジネス範囲を表したのがこちらの図。
開発の中の「テストに特化」しているSHIFTに対し、「上流のコンサルティングから下流の運用まで」一気通貫でサービス提供を行っている野村総合研究所。
この2つのPLのうち、
SHIFTのPLはどちらでしょう?
参加者の方のコメントです!
回答は半分に割れていました。ちょっと難しかったですかね(汗
この後解説する業界構造をご存知の方はピンと来たかもしれませんね。
では解答です。
正解は①がSHIFTでした!
注目ポイントは営業利益の割合です。
システム開発の上流から下流まで手がけている野村総合研究所の方が、営業利益率が高くなっています。
その理由の一つに、ITサービス業界のある特徴があります。
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