2009年12月12日麗蘭のライブと12月31日の仲井戸麗市さんのライブ

暫くの間、他所に上げていたセットリストの掘り起こしを続けます。文章は当時のもので稚拙極まりないですが、ここでは極力その時のままで。これは2009年12月に開催された麗蘭のライブ、および同年大晦日に開催されたフェス「Countdown Japan 0910」における仲井戸麗市さん出演パートのメモ。

2009年は忌野清志郎さんが亡くなった年。CHABOさんは清志郎さんの音楽を遺していくため、意を決したかのように露出を増やし、様々な場所で清志郎さんの想い出を語り、RCや清志郎さんの歌を演奏してきました。これはその年の暮れの記録です。

文章自体は年明け2週間くらいくらい経ってから書いたのかな。随分詳しく書いていたんだな、と読み返してしみじみ。

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2010-01-14

2009年、CHABOさんはソロライブを何本もやっていたから、それこそ観るチャンスは幾らでもありそうなものだった。しかし、結局、12月12日に麗蘭を観るまで、生で観たのはフジロックの1回だけ。「あの件」以降、RCファンが急増したこともあってCHABOのライブがあっという間に売り切れるようになってしまったという物理的な制約も大きかったのだけれど、RCの曲を歌うCHABOさんを観るのがとても切なくなってしまった、というのも偽らざる正直な気持ちで。

以前も日記に書いたように、2009年のCHABOさんはRCの曲(しかも清志郎さんがボーカルを取っていた曲)をことあるごとに歌ってきた。それはファンとしてはとても嬉しいことだったし、CHABOさんの気持ちも手に取るように分かる。でもやっぱり悲しい目をしたCHABOを見るのはとても辛い。だから、10月のソロライブの時などはチケットを取れなくて落胆する一方で、どこかホッとしていたのも事実だった。・・・ちなみに、そのライブ「I Stand Alone」で、CHABOは3時間近くも清志郎の曲を歌ったそうだ。ま、その話を聞くと、「やはり行けばよかったな」などと思ってしまう天邪鬼な自分がここにいる訳だが。

まあ、そんなこんなで。そのライブが一つの区切りになったのか、その約2ヶ月後の12月12日、麗蘭が再始動することになった。再始動と言っても僅か1年ぶりだが、この間色々あったし、CHABOさんが少しずつ前に進もうとしていることが嬉しかった。

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【12月12日 麗蘭@Billboard Live Tokyo(2nd Set)】

オープニング。挨拶代わりに、まるで『ジョンとヨーコのバラード』のようにシンプルな新作のR&Rを1曲演ると、立て続けにファーストアルバムからズッシリくるブギーを1曲。久々の麗蘭、しかもドラマーが交代したばかりだが、仲井戸"CHABO"麗市さん+土屋"蘭丸"公平さんの二人にベースの早川岳晴さんを加えた3人のユニットは、それこそ結成以来19年に渡ってライブ活動を続けてきただけあって、演奏には余裕がプンプンと漂う。タイトなグルーヴ。骨太だけど柔軟。

CHABOのMCも冴えている。「観るならやっぱり2ndだよな。1stセットはテキトウに手を抜いといたから」「2ndは可愛い子が多いから調子出てきた。1stなんて・・・」と悪態をつきまくる。どうせ1stでは「来るなら1st」とか「2ndは手を抜くから」なんて言っていたんだろうけれど、CHABOさんが元気で何だかホッとする。会場も明るい笑顔に包まれ、蘭丸もサングラスの奥で笑っているのが見える。

更に1曲ファーストから演ると、彼らのルーツである南部のリズム&ブルースに敬意を表した『憧れのSouthern Man』 シンプルなコード進行、シンプルなリズムを刻むこのナンバーも後半になるとCHABO&公平のギターバトルが延々と続き、会場が熱を帯びてくるのが分かる。こんなCHABOも久々だ。

5曲目のMCでは「第二の山下達郎を目指して」なんて冗談を飛ばしながら『メリークリスマス・ベイビー』を披露。エンディングにジョンとヨーコのHappy Christmasの一節が挿入されるピースフルなクリスマスナンバーだ。ライティングがとても美しくて、CHABOさんもビルボードライブの照明スタッフに感謝していた。

そう言えば、「子供の頃、アメリカのもう一つのチャート誌キャッシュボックス提供のラジオ番組にランキング予想を出したら当選した。けれど賞品のラジカセは何故か送られてこなかったんだ。キャッシュボックスはダメだ。ビルボードの方がいい」とか、「ここの御飯は美味いんだ」とか、やたらとビルボードを持ち上げていたな、CHABOさん…

公平のボーカルで熱いブギーを一曲やった後、サザンソウルの雄Allen Toussaintの曲名(そしてオバマ大統領が例のフレーズをこの曲から引用していることでも有名な)「Yes We Can」の話を始めたCHABOさん。当然、演る曲は麗蘭流に引用したファンク「今Yes We Can」だ。満席の観客もいつの間にか殆ど総立ちになっている。そしてCHABOが気持ちをぶつけるように叫ぶ「音楽の神様、…MUSIC!!!」・・・そして麗蘭の代表曲『MUSIC』へと雪崩込む。

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Hey oh yeh ことばとぎれた日
Hey oh yeh ことばあふれた日
Hey oh yeh 何を無くして 何を欲しがるの
たったそれだけの時間で たったそれだけの身体で

Ah 忘れてたMusic 今 思い出すMusic
Ah 俺の好きなMusic かすかな呟<つぶや>きに似た
(「MUSIC」 by 麗蘭)

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 セットリストはこんな感じ。ビルボードは2ステージなので、1セットは短いけれど、新曲から初期の代表作からコンパクトに麗蘭をまとめた選曲だった。そう言えば、「俺たちは粗野な音楽をやっているから合わないと思ってたけどまたビルボードでやってもいいかな?」なんて繰り返し言っていたCHABO&公平だったけど、とても似合ってたよ。

01. you I
02. ミッドナイトブギ
03. ハイキング
04. あこがれのsouthern man
05. メリークリスマス
06. 光るゼブラのブギー
07. 今YES We Can
08. ミュージック

- encore -
09. スピリット
10. Get Back

仲井戸麗市: Vocal, Guitar
土屋公平: Guitar, Vocal
早川岳晴: Bass
JAH RAH: Drums

アンコールのMCにて。「皆、色々あると思うけど、来年はいい年になるといいね」と呟いたCHABOさん。一瞬しんみりした空気が流れると、CHABOさんは我に返ったように声を上げる・・・「イエーッて言えー!」「イエーッて言えー!」「イエーッて言えー!」 何度も繰り返される、晩年の清志郎が繰り返したフレーズ。これまで溜めていた想いを吐き出すように。

最後の曲が終わるとジョンとヨーコのHappy ChristmasがBGMで流れ始める。ゆっくりと各メンバーで握手を交わし、皆、ステージから去ろうとしたその時。CHABOさんは空を見上げて両手を高々と伸ばしてみせた。そう、フジロックの時も去り際で見せたあのポーズ。『キヨシ、見てたか?』そんな想いが伝わってくるかのようだ。CHABOは10月にRCを演り、そして麗蘭では自分のブルースを演った。少しずつ、2010年に向けて動き出していた

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【12月31日 仲井戸麗市@COSMO HALL(CDJ0910)】

始まりはRC最盛期に必ずオープニングを飾ったナンバー「よォーこそ」。自らの紹介部分を「古くからのアイツのダチさ」と歌い、更に「じゃあ特別に俺から 紹介させてもらうぜ 今夜天国のどこかで俺たちを見ていてくれるはず 最高のボーカリスト 最高のソングライター 紹介するぜ 忌野清志郎! ガッタ、ガッタ、ガガガ…」と歌い上げる。立場は入れ替わったがあのまんまだ。

熱狂の続く中、「激しい雨」の「RCサクセションが聞こえてる RCサクセションが流れてる」を一節歌うと、そのまま「君僕」へ。「知ってたら一緒に歌ってくれ~」というCHABOの呼びかけでオーディエンスは大合唱。清志郎とCHABOが掛け合いをする有名なエンディングはCHABOが清志郎パートを、そして観客がCHABOのパートを。ここに集まった奴らは、皆、CHABOを観たくて来たことが分かる。更に日本の有名なロックンロール「上を向いて歩こう」を挟み、ようやくギターを止めてMC。今回、CDJに出た経緯を説明するCHABO:

- 改めて申すまでもなく深い思いの一年になった。
- 忌野君と主催者の渋谷(陽一)との関係も知っている。
- ああいうことにならければ、アイツはCDJに出続けていたと思う。アイツはああいうの好きなんだ。
- そういうニ人の関係に敬意を表して一人で来た。
- 清志郎って奴はあまりそういうことは言わないけど、渋谷とかRockin' Onとかが取り上げてくれたことに感謝しているはず。俺が断言する。

その後もCHABOのストレートなメッセージは続く。
- 清志郎の歌はキーが高いから難しい。でも気持ちで歌うから聴いてくれ。
- 彼が書いたバラードの中でも最高の曲だと思ってます。一緒にバンドやっててこの曲をやるのが毎回自慢でした。その曲に挑戦させてくれ。

そして、スローバラードへ。素晴らしい。こんなスローバラード、CHABOしか歌えないだろう。そして最近後追いで聴くようになったと思われる若いファンに向けて心に響く短いMC:
- RCの曲聴いてなかった人、聴いてね。清志郎君の歌、沢山聴いてください。
- アイツが亡くなった時に自分なりに書いた歌がある。それを清志郎君に聴いてもらおうと思って。アイツ口笛が得意だったから「夏の口笛」って曲を

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ずっとあれから 努力してるんだ 君の不在を受け止めること
坂道 曲がり角 口笛 現れる君の気配
追いかけても 立ち去ってしまう 見慣れたあの笑顔
(「夏の口笛」 by 仲井戸麗市)

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あまりにストレートな歌詞に胸を締め付けられ、周囲からは啜り泣きも聞こえてくる。CHABOは清志郎の死に対して、ごく一部の雑誌のロングインタビューを除いてはその思いを封じ込めていた。唯一吐き出されるのが彼のソロライブ。こういった曲をやることで、そして清志郎に聞かせることで、彼自身が立ち直ろうとしているようだし、同じように打ちのめさられたファンと想いを分かち合ってくれているようにも見える。お互い辛い一年だったよな---そんな声にならない声が聞こえるようだ。

「皆、元気に来年ぶちかましてくれ~。救いの神様、それは音楽だ!」
「70年代が終わりになろうとする頃俺んちのちっちゃなリビングルームで一緒に作りました。俺の宝物であります。知ってたら一緒に歌ってくれ~!」

そして清志郎の決め台詞「OK, CHABO!」を自ら叫ぶと、『雨あがりの夜空に』へ。大丈夫、この曲を知らない人なんてこの会場にはいない。歌詞カードには載っていないオリジナルの歌詞「夜空に吹く風が早く来いよと俺たちを呼んでる」も皆ちゃんと歌ってる。

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01.よォーこそ
02.激しい雨~君が僕を知ってる
03.上を向いて歩こう
04.スローバラード
05.夏の口笛
06.雨あがりの夜空に

仲井戸麗市: Vocal/Guitar

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帽子を脱ぎ捨て、髪をグシャグシャにして、ギターを掻き鳴らすCHABO。エンディングでは「イエーって言えー!」を繰り返すと、最後に空に向かって「愛し合ってるぞー!」と叫んだCHABO。珍しくギターを投げ捨てると天を見上げて両手をいっぱいに伸ばしたその光景は、7月のフジロックや3週間前の麗蘭でも最後に見せたものだ。いつしか観客も同じように両手を空に向かって伸ばしている。天国で見ているはずの音楽の神様に、或いはご機嫌なアイツに届くように。

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