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2019年12月29日 大友良英スペシャルビッグバンド+オルケスタ・ナッジ!ナッジ! 「いだてん・ファイナル」 at 新宿PIT INN

つくづく良いドラマだった。東京オリンピック ウェーイ…みたいな人から見たら五輪の汚れた部分を次々抉り出す内容は相容れなかったようだし、(自分のように)2020年に予定されていた東京五輪には賛同しかねた人の中には「どうせオリンピック礼賛ドラマでしょ?」と食わず嫌いのまま見ないで終わった人も多かったと聞く。

しかし、これは「あまちゃん」のスタッフ、キャストが結集して作った傑作であった。放送後しばらくして延期になった五輪は、その後噂されていた五輪汚職も可視化され、未だその問題は解決を観ていないが、それらも含めてスポーツが国家高揚の道具となり、やがて腐敗の温床となっていく歴史を、ヒューマニズム、人種差別、戦争、被災、復興など様々なテーマと絡め、志ん生の落語と同期させながら描いていく物語には心底感動した。これを傑作と呼ばずして何を傑作というのだろう。

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コロナ禍直前、7年目の大友良英スペシャルビッグバンド年末公演は、不幸にして視聴率が上がらず、それに反比例するように熱狂的なファンを生み出した「いだてん」の劇伴特集。残念ながらメンバーの相川瞳さんは都合により欠席だったが、レコーディングにも参加したオルケスタ・ナッジ!ナッジ!も加わった総勢24人のビッグバンドはピットインのステージに収まりきらず、客席の一部を潰す形でのライブとなった。しかもパーカッションだけで11人。音圧がとんでもない。

1st
01 いだてん メインテーマ
02 青雲2
03 邂逅
04 肋木
05 自転車節
06 復興節
07 新富久マラソン
08 浅草六区

2nd
09 金の男
10 闘う女子
11 夢見る人たち
12 ベルリン
13 戦争と平和
14 Team TABATA
15 選手村
16 つなぐひと
17 スタディオン

encore
18 1964/いだてん メインテーマ(Long Version)

encore 2 (夜の部のみ)
19 いだてん メインテーマ

大友良英スペシャルビッグバンド
大友良英 Conductor, Guitars, Vocal
江藤直子 Piano
近藤達郎 Keyboards, Harmonica
斉藤寛 Flute
井上梨江 Clarinet
鈴木広志 Sax
江川良子 Sax
東涼太 Sax
佐藤秀徳 Trumpet
今込治 Trombone
木村仁哉 Tuba
大口俊輔 Accordion
かわいしのぶ Bass
小林武文 Drums
上原なな江 Marimba
Sachiko M Sinewaves, Vocal

オルケスタ・ナッジ!ナッジ!
芳垣安洋 Drums, Percussion
高良久美子 Percussion
岡部洋一 Percussion
関根真理 Percussion
川谷龍大 Percussion
Taichi Percussion
中里たかし Percussion
Izupon Percussion

「いだてん」や「あまちゃん」を担当された井上剛ディレクター、訓覇圭プロデューサー、さらに「いだてん」で人見絹枝を演じた菅原小春さんの来場もあったこの日、本編から最初のアンコールまでは昼夜ともセットリストは同じで、休憩含めて2時間半越え。そのアンコールでは観客が「すっすはっは」と「ラーラララ」の大合唱で、夜の部は拍手が鳴り止まずダブルアンコールで大団円。

「メインテーマLong ver」は、サントラ完結編収録の7分を超える大作。メインテーマの中に様々な楽曲モチーフが登場し、やがて観客のコーラスへと帰結していく流れや高揚感は、まるで第九の第四楽章のよう。そう言えば、大友良英スペシャルビッグバンドの年末公演で最後を飾るのはいつも「あまちゃんのオープニングテーマ」で、いつもあの曲が一年の汚れた心を浄化してくれるのだが、この年だけは「いだてん」に譲ったんだったな。

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2019年は富士山のフェス、7月のPIT INN、8月のProject Fukushimaとアンサンブルズ東京、そしてこの昼夜の2回と計6回に渡り大友良英スペシャルビッグバンドを観ることができた。アンサンブルズ東京は勢い余って一般参加までさせていただき、とても思い出に残る年に。この年末恒例 PIT INNも7年連続で、とにかく続けて下さることが本当に嬉しいしありがたい。心より感謝を。

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