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2019年11月01日 宮沢和史さん Traveling to the MIYAZA-WORLD "めんそーれオキナワールド"

これは2019年11月1日に行われた宮沢和史さんの4日間連続ライブ ”Traveling to the MIYAZA-WORLD” 初日のメモ。そのうちこちらにも上げようと思いながら時間がかかってしまいました。

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5年前の10月30日の深夜から31日未明にかけて、たまたまテレビを付けた自分の目に残酷な映像が飛び込んできました。首里城火災による正殿・北殿・南殿の消失。那覇に住んでいた15年ほど前、首里城は職場から2kmくらい、自宅からでも3kmほどの距離にありました。正殿は那覇の高台にあり、少し開けた所に出たら遠くからでも見ることが出来る、那覇の、沖縄の復興のシンボル。胸が締め付けられるような苦い想いのまま、このライブを迎えたことを思い出します。

このライブは日替わりでテーマやメンバー、セットリストが異なるプログラムで、自分は初日の”めんそーれオキナワワールド”と4日目の”GANGA ZUMBA”の2本に参加。出来れば全部行きたかったのですが、2日目(”ブラジル編”)はとある恩人の方のお祝いの宴と重なり断念、3日目(”スカ&レゲエ編”)は何と申し込み忘れと言う体たらくで。

ただし、4デイズ直後にはtatsuさんや高野寛さん、フェルナンド・モウラさんのセッションが三軒茶屋のGrapefruits Moonであり、その翌日にも南青山で開催されたフェルナンド・モウラさんのソロライブにゲストで宮沢和史さん、土屋玲子さん、今福健司さん、ルイス・バジェさん、tatsuさん、宮川剛さん、高野寛さんと”GANGA ZUMBA10分の8”が集結。更に中2日で「Yellow Magic Children」の発売記念トークライブを高野寛さんが代官山蔦屋であり…と、GANGA ZUMBAな方々が東京のあちらこちらに出没されていて、結果的に上述の2日間を除くと全部参加した自分にとって、それはそれはとても濃厚な11月最初の9日間となりました。何しろ全部プログラムが違うし。

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2019-11-1

歌手活動から暫く離れていた宮沢和史さんが、これまでのキャリアを4つの日替わりテーマで振り返り、完全復活へと足を踏み出した2019年11月。初日のテーマは沖縄。「島唄」を皮切りに始まったMIYAと沖縄のつながりは、THE BOOM、GANGA ZUMBA、ソロ作品などにおける沖縄の影響を取り入れた楽曲制作に留まらず、古民家カフェ「みやんち」の運営、三線製作に欠かせない黒木(くるち)の森を読谷村に作る「くるちの杜プロジェクト」の発足、沖縄民謡を音の教科書として遺す「唄方プロジェクト」、大学での琉球音楽に関する講義など多岐に及んでいます。

冒頭で「首里城で4回歌ったことがある。首里城は僕の人生の想い出の中にある。色々な思いを込めて今日は歌いたい。」と語ったMIYA。選ばれた楽曲もTHE BOOMあり、ソロ作あり、提供曲あり、はたまた琉球民謡あり…といった具合。

05は沖縄を代表する唄者・我如古より子さんの全国デビュー盤のために提供した曲。我如古さんは坂本龍一さんの「NEO GEO」「BEAUTY」「LIFE」に「オキナワチャンズ」として参加された経歴もあり、MIYAとの交流も25年以上に及びます。YMO好きだったMIYAから教授を通して繋がる連環。

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最初のゲストは元SPEEDの島袋ひろ子さん。2013年に本名にアーティスト名義を戻して発表したアルバム「私のオキナワ」で「島唄」をカバーしているほか、MIYAはその表題曲「私のオキナワ」を提供、更にボーカルでも参加しています。有名人にざわつく客席。

その後、MIYAの親友アルベルト城間さん率いるディアマンテスの08を「ミヤベルト城間とミヤマンテス」とジョークを挟みつつ披露すると、「島唄」を発表した頃の思い出話に。「知らない音階で歌いやがって…とか、ついていけない…というファンもいた」とMIYA。

そんな中、1995年8月に那覇市の沖縄戦終結50年事業の一環として行なわれたイベント“SOUND RAINBOW 天に響(とよ)め さんしん 3000”開催にあたり、沖縄出身でもない自分に作曲依頼が来たことはとても感じ入るものがあったと。そして書き下ろされたのが09。

「青い空に響ませて 太陽アカラ 波キララ 世界を つなぐ空ひとつ きれいな花が咲いたよ ずっと枯れない花だよ 届けたい 愛するあなたへ この手のひらで あたためながら 大事に育てた 五十年 五十年 青い海を渡らせて 太陽アカラ 波キララ」

沖縄戦を描いた「島唄」と50年後を描いた「太陽アカラ 波キララ」の対比に改めて平和の象徴だった首里城の消失を思う。

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本日2人目のゲストは沖縄出身の唄者、上間綾乃さん。2017年に「島唄」をカバーしていますが、MIYAが2016年に歌手活動を休止した際、彼がこの曲に込めた思いを歌い継ぎたいとMIYAに相談に行き、快諾されたという逸話があります。ちなみに彼女のアルバムに収録され、本日も披露されたこの「島唄 南の四季」の歌詞はオリジナルバージョンとは異なり、我如古盛栄さんが書かれたウチナーグチ版。ちなみに我如古盛栄さんは我如古より子さんのお父様で、綾乃さんはより子さんにも許可を貰いに行って快諾されたのだとか。

上間さんの2曲目。「今日はこの曲を歌いたい」と予定されていた曲を変更しリハ無しで末吉ヒロトさんの太鼓と合わせた上間綾乃さんの「国頭サバクイ」…首里城修理の為に沖縄北部のやんばるの森から人々が木を曳いた様子を歌った琉球民謡。MIYAもその気持ちが痛いほど分かったのでしょうね。袖にはけた唯一の曲。

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GANGA ZUMBAやその他のライブ活動でもおなじみのクラウディアが登場してからは雰囲気は一気にGANGAの空気感に。彼女も沖縄にルーツを持ち、沖縄を中心に活躍するシンガー。昨日の今日で重い気持ちを心に抱えていた筈ですが、ステージでは彼女のやるべきことをやってくれてこちらも熱くなりますね。

そして終盤、MIYAがMCで語りかけます。
「YOU TUBEのコメント欄でおかしなことを言っている輩がいた。城が焼けただけでしょと…沖縄の人の痛みが分からないのか」「琉球王国の象徴が戦争のために焼けてしまって、長年かけてやっとやっと再建されたのにまた焼けてしまった」「あれを失ったことでどれだけ誇りや拠り所を失われたのか。熊本城やノートルダムもきっとそうなんだろうけれど」

穏やかに言葉を選んでMCをされていましたが、心無い人たちへのMIYAの怒りは十分に伝わってきました。そりゃそうですよね... そしてまた、「このタイミングで沖縄をテーマにコンサートをやることには意味があるのかな…」とも。

昨日の今日なので具体的なことはこれからなのでしょうが、「沖縄のために何ができるか考え、自分なりに何か行動を起こしたい。その時は皆さんも付き合ってください」
訥々と客席に語りかける、その言葉ひとつひとつが胸に刺さります。

アンコールは出演者全員で「島唄」。沖縄戦への鎮魂、平和への願い。この曲が作られた意図を改めて感じた瞬間でした。

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宮沢和史 Traveling to the MIYAZA-WORLD "めんそーれオキナワールド"
(1 Nov 2019 / よみうり大手町ホール)

01 100万つぶの涙
02 ひのもとのうた
03 芭蕉布
04 沖縄に降る雪
05 あの海へ帰りたい
06 てぃんざぐぬ花
07 私のオキナワ
08 沖縄ミ・アモール
09 太陽アカラ波キララ
10 島唄 南の四季
11 国頭サバクイ
12 惣慶漢那(スーキカンナー)
13 でいごの花
14 ダイナミック琉球
15 いいあんべえ
16 ハリクヤマク
17 ちむぐり唄者
18 シンカヌチャー

encore
19 島唄

宮沢和史 Vocal, Guitars, 三線
末吉ヒロト Drums, 琉球太鼓
久保田真弘 Bass, Chorus
来嶋けんじ Guitars
白川ミナ Keyboards, Piano, Chorus
島袋ひろ子 Vocal (M6, M7, M18&M19)
上間綾乃 Vocal, 三線 (M10, M11, M17-M19)
大城クラウディア Vocal, 三線 (M13-19)

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