
忍殺TRPG小説風リプレイ【ユメ・アルク・クルーズ(その7)】
◆アイサツ
ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。
本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。
こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。
それではやっていきたいと思います!
◆本編
ライトプレッシャーは暴れ回るネクロマの顔面に右の掌を押し付ける。予備動作の一切無い静謐な、しかし力強い動きだった。「この場所は君の過去の記憶から形成されたローカルコトダマ空間だ。私は今、君の無防備なニューロンにアクセスしているんだよ」「グワーッ……!」「ならば、内側からADMIN権限を書き換えることも容易い。さあ、現実世界にある君の肉を明け渡すがいい。……さあ、さあさあさあ!」「グワーッ……!」
◇戦闘開始

イニシアチブ
ライトプレッシャー→ネクロマ
※3ターン目の開始時にレツノスケ、ヴァルナが到着
※それまで戦闘は『一騎打ち』で行う
「ウ……ウワーッ!」ネクロマは両腕をがむしゃらに振るい、ライトプレッシャーの手を払いのけた。彼は墓地の地面を這い、ハカイシの間に身を隠す。その両足は失われたままであるが、青白い爬虫類の尻尾めいたものが切断面から生え、地面に跡を残している。
「ンーン。ダメだ、ダメだな、ダメすぎる。そんな一時的に相手の視界から逃れたとしても、このコトダマ空間では一切、まったく、なんの意味も無い。今の我々は、五感などという低機能な感覚機能をオミットされているのだよ。そのことを正確に認識できているのかね?できていないだろう!?」
「ハーッ!ハーッ!いったいなんなんだ……!」ネクロマはハカイシの陰からそっと顔を出し、墓地の中央で得意げに語るライトプレッシャーを睨み付けた。そう、墓地だ。どうしてネオサイタマ郊外の屋敷にいた自分がこんな場所にいるのか?ネクロマはレツノスケやヴァルナがそうしたように、記憶を整理して状況判断を行おうとする。
(ライトプレッシャー=サンはここがコトダマ空間だと言っていた。僕の記憶を元に作られた、僕のニューロンの中の世界……記憶……過去……)ネクロマは墓地の様子を見回す。銃で撃たれて穴の開いたノロイ・ボード、地面に落ちたフランベルジュやドス・ダガー、ヤクザやABBMの死体……すべてかつてのネクロマが見たままの状態で存在していた。
「懐かしいかい?これらは君のニューロンに刻まれた経験、そして認識によって再現された物体だ」「アイエッ!?」急に至近距離から声を掛けられ、ネクロマは悲鳴を上げながら飛び退いた。いつの間にそこにいたのか、ネクロマが隠れていたハカイシの上にライトプレッシャーが後ろ手を組んで立っていた。
「しかし、記憶の中の食べ物であっても齧れば味がするし、刃物で切れば傷も付く。実際に食べた過去や斬られた事実が記憶に存在していなくともだ。何故だか分かるかい?分かるかな?」「アイエエエエエ!」ネクロマは地面に尻餅を突いたまま後退っていき、やがて別のハカイシに背中を付けた。
「それはねネクロマ=サン、認識の力によるものさ。食べ物を食べれば味がするというイメージが、ナイフで切られれば血が出るというイメージが、ニューロンそのものに味を感じさせたり、傷を付けたりさせる。だからこんなことだって、ほら」
ライトプレッシャーはネクロマの肩に優しく手を置いた。ネクロマがハカイシだと思って背中を付けていたのはライトプレッシャーだった。ネクロマは転げるようにして距離を取った。ヤクザやABBMの死体が起き上がり、ライトプレッシャーとなった。ネクロマは恐怖の叫びを上げた。その声に反応したようにライトプレッシャーたちが一斉にネクロマに襲い掛かった。
(ナンデ……?ナンデこんな目に……?)丸めた背中を踏みつけられ、両手で守る頭をノロイ・ボードで打たれ、薄れゆく意識の中でネクロマの脳裏に浮かんだのは彼がモータルからニンジャに生まれ変わったその瞬間、ニンジャソウルがディセンションした時の記憶であった。死の間際に見る、ソーマト・リコール現象だ。
(僕はニンジャなのに。ニンジャに、なったのに。神話世界の住人……誇り高きザイバツニンジャになったのに。これじゃあまるで、あの時みたいじゃあないか……)ネクロマは涙した。ニンジャになったことで克服したと思っていた恐怖と絶望が再び彼の心に牙を剥いた。痩せこけた頬を青白い涙が滑り、湿った墓地の土を濡らす。
しかし、奇跡が二度起きることは無い。ネクロマは既にニンジャであり、ネクロマを追い詰めているのもニンジャだからだ。ライトプレッシャーたちの攻撃は徐々に、無限に加速する。光の奔流めいた攻撃の前にネクロマの論理肉体が少しずつ削られていく。「ではオサラバだ!オタッシャデ!ゴキゲンヨ!ネクロマ=サン!」ライトプレッシャーはノロイ・ボードを光り輝く刃へと変じさせ、カイシャクの一撃を振り下ろした。
◇1ターン目
ライトプレッシャースリケン:
5d6>=4 = (2,5,5,3,5 :成功数:3)+4d6>=4 = (5,3,4,6 :成功数:3)
ネクロマ回避:
2d6>=4 = (4,2 :成功数:1)+1d6>=4 = (5 :成功数:1)
ネクロマ連続側転:6d6>=4 = (5,4,3,1,4,3 :成功数:3)
ライトプレッシャー連続側転:9d6>=4 = (1,2,3,4,3,2,2,3,3 :成功数:1)
ライトプレッシャーカラテ:
5d6>=5 = (3,1,4,6,6 :成功数:2)+4d6>=5 = (4,4,4,5 :成功数:1)サツバツ!
ネクロマ回避:
2d6>=4 = (5,3 :成功数:1)+1d6>=4 = (3 :成功数:0)
ネクロマ体力5
ネクロマ連続側転:6d6>=4 = (2,2,2,4,1,6 :成功数:2)
◇2ターン目
ライトプレッシャー連続側転:9d6>=4 = (3,1,3,2,4,2,4,1,3 :成功数:2)
ライトプレッシャーカラテ:
5d6>=5 = (5,5,3,2,1 :成功数:2)+4d6>=5 = (2,6,2,6 :成功数:2)サツバツ!
ネクロマ回避:
1d6>=4 = (5 :成功数:1)+2d6>=4 = (1,6 :成功数:1)
ネクロマ連続側転:6d6>=4 = (3,2,1,6,4,3 :成功数:2)
ライトプレッシャー連続側転:9d6>=4 = (2,3,6,3,3,2,4,4,3 :成功数:3)
ライトプレッシャーカラテ:
5d6>=5 = (5,5,5,3,2 :成功数:3)+4d6>=5 = (3,1,4,4 :成功数:0)
ネクロマ回避:
3d6>=4 = (5,5,1 :成功数:2)
ネクロマ連続側転:6d6>=4 = (4,5,4,4,5,2 :成功数:5)
◇3ターン目
ライトプレッシャー連続側転:9d6>=4 = (1,4,4,1,1,5,4,1,5 :成功数:5)
ライトプレッシャーカラテ:
5d6>=5 = (5,4,5,2,3 :成功数:2)+4d6>=5 = (2,4,1,5 :成功数:1)
ネクロマ回避:
2d6>=4 = (5,3 :成功数:1)+1d6>=4 = (5 :成功数:1)
ネクロマ連続側転:6d6>=4 = (4,3,5,5,4,4 :成功数:5)
ライトプレッシャー連続側転:9d6>=4 = (2,2,4,2,6,2,6,1,5 :成功数:4)
ライトプレッシャーカラテ:
5d6>=5 = (5,4,1,3,2 :成功数:1)+4d6>=5 = (1,4,3,4 :成功数:0)
ネクロマ回避:
3d6>=4 = (4,4,2 :成功数:2)
ネクロマ連続側転:6d6>=4 = (4,6,3,6,3,4 :成功数:4)
※3ターン経過したためイベント発生
だがその時である!「イヤーッ!」ネクロマとライトプレッシャーの間に割って入り、白光の刃を受け止めし赤光の刃あり!「ヌウッ!?」ライトプレッシャーはネクロマをカイシャクすることに固執せず、素早く距離を取る!「はい、ぱあん」「「「グワーッ!?」」」ネクロマの周囲にいたライトプレッシャーたちは突如として地面から噴き上がった炎に吞み込まれ全員消滅!
「ドーモ、ザイバツ・シャドーギルド所属アデプト位階、ロンダイジ・レツノスケです」「ヴァルナです」ザイバツニンジャ2人がひとり残ったライトプレッシャーを挟むように立ち、左右から威圧的なアイサツを叩きつける!「おお……おお……!」その光景を見たネクロマは嗚咽と共に滂沱した!
「ドーモ、ライトプレッシャーです。はてさて、これは少々意外な状況」ライトプレッシャーは顎に手を当て、首を左右交互に傾げた。「お前たちがここにいるということは、我が頼もしき同志であるウツシエ=サンとバットゥエレ=サンはしくじった、という認識でよいのかな?どうかな?」
「ウツシエ=サンならスペルバウンド=サンがどこかへ連れて行った」「ほな、うちんとこ来たんがバットゥエレ=サンゆうお人やね。そのへんにおるんとちゃうん?塵になって、大気中に、知らんけど」レツノスケとヴァルナがそれぞれ答えた。ライトプレッシャーは顔を両手で覆い、天を仰ぐ。「バットゥエレ=サンが死んだ、と。ああなんという悲劇。実に嘆かわしい。悲しみで胸が張り裂けそうだ」「そやねえ」ヴァルナは嗤う。
「ここでバットゥエレ=サンの無念を晴らすべく、弔いのイクサを始めるのも吝かではないが……ここは未来のための選択をさせてもらおう。それでこそ死んでいった同志たちも浮かばれるというもの」「イヤーッ!」何かに気付いたレツノスケは手にしたカタナでライトプレッシャーに斬りかかる!
だが!「ハッハッハッハ!オタッシャデー!」「ヌウーッ!」ライトプレッシャーの身体が眩く光ったかと思うと、次の瞬間には輝く一筋の光の矢となって天へと昇っていった!ログアウトである!
ライトプレッシャーは『安全なログオフ』を行う
「あれま、せわしないお方やなあ。おとうはんおかあはんに叱られるんやろか」「まずいぞ。今の我々の現実世界の肉体は完全に無防備だ。奴があの屋敷に戻ったのだとすればすぐに後を追わねばならん」「お、お二人ともアリガトゴザイマス!僕はもうここで爆発四散してしまうかと……」「話は後だネクロマ=サン。来い!」
「エッ?来いってどこに……グワーッ!?」レツノスケはキネシスでネクロマを持ち上げ、墓地の外へ向けて駆ける!ジンジャ・カテドラルの正門前に停められた一隻の舟!「コルセア=サン!」「ヒッヒヒ!こりゃまた大所帯!現世へのご帰還をご所望かね!」
レツノスケたちに気付いたコルセアが櫂を掴むと、船首が大きく持ち上がり空を向いた!「さあさあ乗り遅れるなよ!この夢の船旅、この便を逃すと次は200年後だ!ヒヒヒヒ!ウラシマのようになりたくなければ急げ!急げ!」コルセアの操るボロ舟はレツノスケたちを待つことなく、そのまま上へ上へと昇っていく!空には自転する黄金立方体!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」レツノスケ、ヴァルナは同時跳躍!舟の縁へしがみ付く!「グワーッ!」ネクロマはカタナで襟を舟に縫い付けられる!その瞬間、舟が加速!加速!周囲の景色がローレンツ収縮によって歪められていき、レツノスケの部屋やヴァルナの実家、ネクロマのいた墓地が遥か下界に砂粒よりも小さく見える!
(((ドーモモモモ、インクィジタタタターターターターターターター……)))その時、レツノスケの論理聴覚は得体の知れない禍々しい声を捉えた。ニンジャのアイサツと思しき不明瞭な声を。しかし、正体不明のオバケめいた存在は超高速でコトダマ空間を上昇していくコルセアの舟に追い付くことは出来ず、鉤爪の生えた手を虚ろに伸ばしたままその場に置き去りにされていった。その様はまるで、蜘蛛の糸に群がるジゴクの亡者めいていた。