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忍殺TRPG小説風リプレイ【ゼア・イズ・ア・ファイン・ライン・ビトゥイーン・ジーニアス・アンド・インサニティ (その2)】

◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

なお本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

ではやっていきたいと思います!

◆本編

◆◆◆

◆2フェイズ目、ニチョーム

 巨大繁華街、ネオカブキチョの一角、ニチョーム・ストリート。痛いほどの光を放つネオン看板やグラデーション発光するLED提灯が視界を埋め尽くし、通りではゲイマイコやサイバーボーイ、オスモウゴスといったマイノリティ達が練り歩く。マッポーの世においてなお隅に追いやられるような欲望すらも受け入れるこの街は、灰色の陰鬱なカンバスの上にぶちまけられた極彩色の汚濁めいていた。

「フゥーム。今まで訪れる機会が無かったが……煩雑な街である事よ」グロウコブラは表通りを避けて暗い裏道やビルの屋上を移動し、住民たちの目を避ける。ここはシンジケートの管轄外だ。いつも以上に姿を晒さぬよう心掛ける必要があるだろう。

(ム?)その時、グロウコブラは通りの方に喪服を着た人だかりを発見する。誰かの葬式であろうか?屋上から顔だけを出して観察してみると、ちょうど黒光りする霊柩車に白いカンオケが運び込まれているところであった。

「ミノコ=サン……どうして……」「チクショウメ―……ブッダもオーディンもいねえのかよ……」犠牲者は皆に好かれる人物だったのであろう。葬儀に参列しているニチョームの住民たちは泣きながら出棺を見送っている。だが、そんなことはグロウコブラの知ったことではない。

(もしやあれがプロコンスル=サンの話にあったガンドッグ=サンに殺されたとかいうゲイオイランか?だとすれば死体を調査すれば何か分かるやもしれん。クフフ、流石は私!今日も我が脳細胞はグルグルと回っておるわ!)

 おお、ナムアミダブツ。グロウコブラは厳粛たる葬儀に乱入し、哀れな犠牲者であるミノコ=サンの尊厳を冒涜しようというのだ。なんたるブッダも恐れぬ所業か。グロウコブラは足に力を籠め、霊柩車の屋根に飛び乗るタイミングを計り、心中でカウントダウンする。(3…2…1……今だ!)「オイ」「アイエッ!?」

 グロウコブラが今まさに飛び立とうとしたその瞬間、背後から彼の肩を力強く押さえつける者がいた。「な、何者かーッ!この私がソウカイヤの極めて優秀なニンジャと知っての狼藉かーッ!イヤーッ!」予想外の事態に平静を失ったグロウコブラは組織マウントを取りつつ裏拳!「イヤーッ!」「アイエッ!」しかし渾身の一撃は相手の掌で容易く受け止められる!

「ソウカイヤが何の用だ……? ミノコ=サン殺しておいてどう落とし前つける気だッコラー……!」グロウコブラの拳を掴んだ男はドスの効いた低い声で凄んだ。その声には隠しきれない怒りの感情が混ざる。グロウコブラの拳がミシミシと悲鳴を上げた。「アイエエエ!放せ!放さぬか!」「イヤーッ!」「グワーッ!」グロウコブラはそのまま投げ飛ばされ、屋上の床をゴロゴロと転がった。

 転がるグロウコブラを見下ろすのは7フィートの長身をダークラメニンジャ装束に包んだボンズ・ヘアのニンジャであった。仮にもニンジャであるグロウコブラの攻撃を容易くいなしてみせたそのワザマエは、彼が相当の手練れであることを如実に物語っている。男は両手を合わせ、堂々たるアイサツをした。「ドーモ、ネザークイーンです」

◆ネザークイーン (種別:ニンジャ)
カラテ    10  体力   12
ニューロン  8  精神力  14
ワザマエ   8  脚力   5/N
ジツ     6  万札   30

攻撃/射撃/機先/電脳  10/8/8/8
回避/精密/側転/発動  10/8/8/14

装備や特記事項
 『●連続攻撃2』、『●連射2』、『●マルチターゲット』、『●時間差』、
 『◉頑強なる肉体』、『◉不屈の精神』、『◉ニチョームの女王』、『◉挑発』、
 『◉◉グレーター級ソウルの力』、『☆◉バリケード化』、『☆◉瞬時の解除』
 『☆ムテキ・アティチュードLV1-3』、『★ムテキ・メイル』、『★グレーター・ムテキ』、
 『★★鋼鉄の肉体』、『★★エネルギー・スリケン』

『◉ニチョームの女王』:
 シナリオの舞台がニチョーム・ストリートであり、ネザークイーンが同じマップ上に存在する場合、
 同じマップ上にいるニチョーム自治会所属ニンジャ全員は、
 【体力】と【精神力】がそれぞれ+1される。この効果はネザークイーン本人にも有効である(未反映)。
 ネザークイーンがマップ上から存在しなくなっても、この効果はシナリオ終了まで残り続ける。

「ド、ドーモ。グロウコブラです。いきなり何をする無礼者めが!」グロウコブラは辛うじて起き上がり、精一杯の虚勢を張ってアイサツと文句を返した。「最初に殴りかかってきたのはそっちでしょが」ネザークイーンと名乗ったニンジャは鼻を鳴らした。

 しかしグロウコブラはネザークイーンを指差し反論する。「私はそのソウカイヤのニンジャが起こした事件を調査するために忙しい仕事の合間を縫ってわざわざこんなストリートまで訪れたのだぞォ!サケとスシとオイランで歓待の一つや二つや三つくらいされこそすれ、薄汚い床に投げ飛ばされる謂れなど無いわ!」「ハン?調査?」ネザークイーンは目を瞬かせた。

「…………あらヤダ。それならそうと早く言ってちょうだい。そういうことならアタシも協力するわよ」ネザークイーンは掌を返したようにあっさりと態度を軟化させた。「アタシなりにミノコ=サンを殺した奴の調査をしてたらクロスカタナの紋章を付けたアンタを見つけてね。てっきりソウカイヤの連中が証拠の隠滅をしようとしてやがるんじゃないかと思ったのよ。ゴメンナサイね」

「フン!そそっかしいことだな!貴様の蛮行で私の繊細な心に生涯消えることの無い深い傷が付いてしまったぞ!この傷を癒すためには形だけの謝罪では到底足りん!ただちにオイランハウスでの休憩が必要だ!」「ミノコ=サンはね、愛嬌があって、頑張り屋で、ニチョームのみんなに好かれていたわ」ネザークイーンは説明をし始める。

「あの日もあの子は朝方近くまで働いていたの。お店の掃除と明日の仕込みを済ませて帰路に着いた……そこで見ちゃったのよ。ニンジャたちのイクサをね」「ウム、ピンハネしたカネを持ち逃げしようとしたガンドッグ=サンとそれを追うプロコンスル=サンが戦闘に入ったところであるな。よくよく運の無いオイランよ」「……ええ、そうよ。その二人」ネザークイーンは心のメモ帳に二人のニンジャの名前を刻みこみ、続けた。

「そしてミノコ=サンは……無惨に殺された。まるで獣の爪で引き裂かれたような深い傷を負って……血溜まりの中でお気に入りの服も赤黒く染まって……」ネザークイーンは血が出そうなほどに強く拳を握り、固く目を瞑って眉間に皺を作った。「ほう?その話は初耳であるな」グロウコブラは顎に手を当て思案する。

「確か私の知るところによると、ガンドッグ=サンは銃器の扱いに長けたニンジャで、プロコンスル=サンはヘンゲヨーカイ・ジツと古代ローマカラテとやらの使い手であった筈だ」「……!それじゃあ犯人は……!」「ウム。つまり、ガンドッグ=サンは銃器の扱いに長けたヘンゲヨーカイ・ジツの使い手ということだ!クフフハハ!直接会うこともなく新たな敵の情報を得てしまうとは流石は私!」

「……いや、そこは普通にプロコンスルの野郎が犯人なんじゃなくて?」情報を提供する振りをして逆にグロウコブラから事件の情報を得ようとしていたネザークイーンだったが、グロウコブラのあんまりな推理に思わず自分の出した結論を口走ってしまっていた。

「ハァ?やれやれ、何も分かっておらんのだな」しかし、グロウコブラは呆れたように溜息を吐いて肩を竦めた。「貴様が疑っているそのプロコンスル=サンが言っていたのだぞ。ニチョームのゲイオイランを殺害したのはガンドッグ=サンだとな。プロコンスル=サンという証人の証言がある以上、貴様の稚拙な推理は根本から間違っているということだ!」

「だからプロコンスルが本当の犯人でガンドッグ=サンに罪を被せようとししてるんじゃなくて?」「……ン?」グロウコブラの動きが止まる。「プロコンスルのジツはヘンゲヨーカイ・ジツなんでしょう?だったらガンドッグ=サンが実はヘンゲの使い手だったって言うより、プロコンスルがヘンゲしてミノコ=サンを殺したって考える方が自然でしょ?」「…………ンンン!?」グロウコブラは大きく首を捻った。

「…………まあこんなところかしらね。少しはお役に立てたかしら」ネザークイーンはそこで話を打ち切った。これ以上グロウコブラと話しても得る物は無いと判断したのだ。ここから先は独自でガンドッグとプロコンスルの調査を行うべきだろう。「ム……ウム!そうだな!まあ及第点をやろうではないか!」グロウコブラはようやく思考を再起動させた。

「よくぞ今回の複雑な事件の矛盾を見破ってみせた、ネザークイーン=サン。このグロウコブラが直々に称賛してやろう。私はプロコンスル=サンの怪しさには当然最初から気付いていたが、一を聞いて十を知る天才である私の推理ではかえって凡人たちには突飛すぎて理解しがたいものに聞こえてしまう恐れがあったからな。さながら天動説が信じられている世の中で最初に地動説を唱えた学者のようなものだ。つまり私の頭脳に周囲のレベルが追いつくのを待つ必要があったのだよ。一人の賢者が語る真理と百人の愚者が共有する誤謬は後者の方が真実として扱われてしまうという訳だ。まあもっとも世界は地球でも太陽でもなくこのグロウコブラを中心に回っているのだから今回の事件も最終的には「あらやだアタシったら。ついつい話し込んじゃってもうこんな時間!早くお店に帰って支度しないと!それじゃあねグロウコブラ=サン。オタッシャデー!」ネザークイーンは一息で言い切り、その場を後にした。

…………「……もしかしてソウカイヤってヒドイ人材不足に陥ったりしてる?ダイジョブなのかしら。あんなので」自分の店に戻る途中、ネザークイーンは独り言ちた。とにかく早く帰らねば。最近迎えたばかりの新しい同居人のことも心配だ。「イヤーッ!」ネザークイーンはニチョームの空を鳥めいて駆けた。

◇◇◇

「フゥーム……この極めて優れたソウカイニンジャである私の素晴らしい推理力と鮮やかな捜査によってプロコンスル=サンに不審な点があることが判明した。私は真相に向かって着実に前進している」ネザークイーンがいつの間にか姿を消していることにたっぷり5分ほど話してから気が付いたグロウコブラはこの場で得た情報を整理し、次に取るべき行動を思索する。

「プロコンスル=サンに話を聞きたいが奴が何処をほっつき歩いているのか分からんな……次はどこに向かうか……一度ガンドッグ=サンの自宅を確認するか、もう一度ステイションで張り込むか」グロウコブラはニチョームの街並みを歩きながら目ぼしいオイランハウスをチェックしつつ次の行先を考える。「よし、決めたぞ」

3フェイズ目、グロウコブラの行先
1ガンドッグ宅2駅:1d3 = (2) = 2

 グロウコブラは再びネオサイタマ・ステイションへ向かうことにした。「今頃ガンドッグ=サンはこの私が居なくなったことに安心してノコノコ駅に向かっておることだろう。だがそれはこの極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラの仕掛けたトラップよ。その場を離れたと見せかけて安心した犯人が顔を出すのを待っておったという訳だな」グロウコブラは誰ともなく得意気に説明する。

「それによく考えてみればプロコンスル=サンがガンドッグ=サンを探しておることは間違いないのだし、二人まとめてそこにおるやもしれん。クッフフフ。待っておれよ、ガンドッグ=サン!あとついでにプロコンスル=サン!イヤーッ!」グロウコブラはガンドッグが駅に居るということを微塵も疑わず、そのままニチョームを後にした。

◆◆◆

◆3フェイズ目、ネオサイタマ・ステイション

「さて、ガンドッグ=サンとプロコンスル=サンはおるかな?」彼はキョート行きの新幹線前に屯する市民たちを注視する。その時。「ザッケンナコラー痴漢容疑者!」「スッゾコラー性犯罪者!」「アイエエエエ!」「ヤヤッ?」プラットホームから聞こえてくる突然の怒号、そして悲鳴。

 グロウコブラが声のした方を見ると、痴漢犯罪を行ったらしき男が警備のクローンヤクザ達に捕らえられ、囲んで棒で叩かれていた。隣では被害者と思しきオイランが携帯IRCをいじりながら煙草を吸っており、犯人拘束に協力したと思われる屈強な体格のジョックめいた男と親し気に話している。

「フム。あの男はガンドッグ=サンでもプロコンスル=サンでもないな。顔が違うし、いやしくもソウカイニンジャであった者がクローンヤクザ如きに黙ってやられている筈が無い」グロウコブラはそう結論付け、今もなお叩かれ続ける男から視線を外した。「……ムッ!あれは!」油断ならぬニンジャの瞳に、映し出されるものがあった。

「ば」「そ」「し」「す」と文字がプリントされた安っぽいノーレン。ガタガタと音を立てるスライド式のガラス戸。そして漂ってくる合成ショーユの香り。そう。これぞ食事に時間をかけたくない、あるいはかけられない出張サラリマン達にとっての憩いの場。立ち食いソバ屋である。

「そういえば夕食がまだであったな」言い終えると同時、グロウコブラの腹部からグウ、という音が鳴る。ニンジャ嗅覚によって吸い寄せられたカツオエキスの香りがグロウコブラの鼻孔をくすぐり、彼のニューロンに空腹の信号を伝達させたのだ。気付けばグロウコブラはソバ屋の方へ真っ直ぐ足を進めていた。

「ラッシャセー」戸の開く音を聞いた店員が機械的な声で新たな客であるグロウコブラを歓迎する。店の中はそれほど広くはないが、本来椅子を置くべきスペースに生まれた空白地帯を上手く利用することである程度の収容能力を確保しているようだ。グロウコブラは首を左右に動かし、目的の物を発見する。ガンドッグだ。

「……アイエッ!?」「エッ?」グロウコブラとガンドッグの目が合った。二人の思考がフリーズした。「……見つけたぞ!やはりここにおったかガンドッグ=サン!」先にニューロンの氷を溶かしたのはグロウコブラの方であった。「アイエエエ追手!?イヤーッ!」ガンドッグは急いでソバをかき込む!

「ゴチソウサマデシタ!イヤーッ!」「グワーッ!」ソバを食べ終えたガンドッグはグロウコブラを突き飛ばし逃走!「待ていガンドッグ=サン!イヤーッ!」グロウコブラも後を追う!「待て―ッ!イヤーッ!」「誰が待つか!イヤーッ!」プラットホームで繰り広げられる追走劇!周囲の乗客たちはこれを完全無視!現代的無関心社会!

………やがて、二人は人気の無い夜の車両基地へと辿り着いた。大量に並ぶ車両の間に出来たやや広めのスペースで二人は対峙する。「ハァ、ハァ……追い詰めたぞガンドッグ=サン……ハァ……ドーモ!ソウカイヤの極めて優れたニンジャ、グロウコブラです!」「ゼェ……ゼェ……ウプッ!クソーッ、ソバさえ食ってなかったら……ドーモ、ガンドッグです……」

◆ガンドッグ (種別:ニンジャ)	
カラテ     3		  体力	  1	
ニューロン   6		  精神力	6		
ワザマエ    6(4)		脚力	4		
ジツ       0	    万札	   5	

近接攻撃    3    遠隔攻撃  6    回避7

装備や特記事項
 装備:『ノーカスタム・チャカガン×2』:連射2(難易度HARD)
    『スナイパーライフル』:遠隔武器、ダメージD3、小銃、移動後射撃不可
    『サイバネアイ』、『ヒキャク』(反映済み)
 スキル:なし

「ゼェ……ハァ……クッフハハハハ!愚か者めが!安心してノコノコ駅に向かってきたようだが、それはこの極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラの仕掛けたトラップよ!この私がいなくなったと見せかけて安心した貴様が顔を出すのを待っておったという訳だ!」グロウコブラは得意気に説明する。

「ハァ、ハァ……ハァー……マッタ、誤解がある!お前はプロコンスルの奴に言われて俺を捕らえに来たんだろう!?だが聞いてくれ!信じられんかもしれないが、俺は何も悪くねえんだ!」「何だと?いや、やはりそうであったか。とっくの昔に知っておるわ!」「エッ?信じてくれんの?」まさか言葉が届くと思っていなかったガンドッグは驚きに目を見張った。「クフフ、貴様を信じるのではない。私は私の推理を信じておるのだ」とグロウコブラ。

「ニチョームのゲイオイランは獣に爪で斬り裂かれたような傷が原因で死んでいたという。そしてプロコンスル=サンはヘンゲヨーカイ・ジツを使う。つまり本当のオイラン殺人犯はプロコンスル=サンだ!そして奴は横領を行った上にザイバツに寝返ろうとしている貴様に罪をおっ被せようとしているのであろう!」グロウコブラはネザークイーンの推理をさも自分が考えたもののように披露した。だが。

「いや、それはその通りなんだが組織のカネを横領をしたのもプロコンスルの方なんだ」「エッ?」予想外の展開にグロウコブラは本日何度目かの思考停止に陥った。「このフロッピーを見てもらえば分かる。これには奴が行った不正の証拠が収められてんだ。俺はフロッピーを持ってソウカイヤの管轄外であるニチョームに潜伏していたんだが、それがプロコンスルにバレて攻撃されてな。そのせいで通りすがりのオイランが巻き込まれちまったのさ」

(ム、ムムム?何がどうなっておる?)グロウコブラのニューロンは次々と明かされる情報の洪水で決壊寸前であった。「エート……それではピンハネ犯も殺人犯もザイバツに寝返ろうとしておるのも全部プロコンスル=サンの仕業で、貴公はまったくの無実ということなのか?」

「…………ああ、そうだぜ!」ガンドッグは『ザイバツに寝返る』あたりで表情を僅かに歪ませたが、力強く断言した。「…………なるほどな!やはり全て私の考えた通りであったわ!」グロウコブラも少し間を置いてから高らかに宣言した。

「謎は全て解明された!ここにプロコンスル=サンを呼び出すぞ!そこで私の推理を披露してやろう!この極めて優れたソウカイニンジャ、グロウコブラの名推理をな!」「よし!是非ともそうしてくれ!そして一緒にプロコンスルの野郎をブッ殺そう!頼りにしてるぜ名探偵!」ガンドッグが合いの手を入れた。「クッフハハハ!任せておけい!」グロウコブラすっかり機嫌を良くし、懐から取り出したIRCでプロコンスルをコールした。

◇◇◇

 …………数十分後!

「グロウコブラ=サン……!吾輩が来てやったぞ……!」プロコンスルは無人の車両基地で同僚の名を囁くように呼んだ。「ガンドッグ=サンを発見して捕まえたというのは本当か……!出て来いグロウコブラ=サン……!」

「クフフハハ……随分と落ち着きが無いではないか。プロコンスル=サン」「ヌウッ!?何奴!」声はプロコンスルの頭上からだ!電車の屋根に影!「イヤーッ!」シャウトと共に飛び降りた影はプロコンスルの目の前で見事な三点着地を決めた。「ドーモ、恥知らずの裏切り者=サン。ソウカイヤの名探偵、グロウコブラです!」

「ド、ドーモ、プロコンスルです。裏切り者だと!?何を根拠にそんな世迷言を!」プロコンスルはあからさまに動揺した。「証拠ならここにあるぜ!」「ヌウッ!?何奴!」声はプロコンスルの頭上からだ!電車の屋根に影!「イヤーッ!」シャウトと共に飛び降りた影はプロコンスルの目の前で見事な三点着地を決めた。「ドーモ、プロコンスル=サン。ガンドッグです!」今ここに、事件解決のための役者が揃った!

「プロコンスル=サン。貴様はこの極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラを利用しようと考えたようだが、相手が悪かったな。貴様は私がガンドッグ=サンを発見したと聞いてこうしてノコノコ駅に向かってきた訳だが、それはこの極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラの仕掛けたトラップよ!貴様が横領を行い、オイランを殺し、組織を裏切ろうとしていることは全部お見通しだ!」グロウコブラは得意気に説明する。

「ま、待て!嘘を吐いているのはガンドッグ=サンの方だ!吾輩は寝返りなんて企んでいない!」プロコンスルは口から唾を飛ばして反論!「往生際が悪いぜプロコンスル=サン!テメエの悪行を収めたフロッピーはここにある!神妙にお縄につきな!」ガンドッグがフロッピーを掲げて言い募る!「然りである!少しでも罪の意識があるならばラオモト=サンの前に出てドゲザの後にセプクせい!」グロウコブラは探偵気取りで有頂天!

「いいから聞け愚か者めが!本当に吾輩が犯人ならばガンドッグ=サンはそのフロッピーを持ってソウカイヤに報告すれば良いだけだろう!ガンドッグ=サンがそれをしなかったのは何故だ!?」「……ムッ?」グロウコブラは懲りずにまた思考停止した。

「答えは単純明快!ガンドッグ=サンには組織に報告できないやましい所があったからだ!それにガンドッグ=サンはネオサイタマ・ステイションに来ていたのだろう?それこそ奴が真犯人であり、キョートに逃走しようとしていた動かぬ証拠!」「ムムム?」グロウコブラはガンドッグの方へ疑惑の混じった目を向けた。

「お、オイ待てよグロウコブラ=サン。どうせ追い詰められて苦し紛れ言ってるだけだって!コイツはソウカイヤを裏切ってザイバツに寝返ろうとした太え野郎だぜ!もうこの場で殺っちまおう!」ガンドッグはチャカガンを取り出しプロコンスルへ銃口を向けた!

「フン!追い詰められているのはどっちだウツケめが!言葉巧みにグロウコブラ=サンを誑かそうとしたようだが……そのような浅知恵で惑わされるソウカイヤの名探偵では無いわ!そうだな!?」プロコンスルはさり気なくグロウコブラに対する世辞をアッピールをした。「……クフフ、その通り!」グロウコブラはプロコンスルの横に立つ!

「ガンドッグ=サン。貴様はこの極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラを利用しようと考えたようだが、相手が悪かったな。貴様は私が自分の嘘を信じたと思っていたようだが、それはこの極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラの仕掛けたトラップよ!プロコンスル=サンと共に貴様を誅するためにな!」グロウコブラは得意気に説明した。

「ち、違うんだって!組織に報告が出来なかったのはIRCがニチョームの戦闘で壊されちまったからなんだ!俺がステイションに居たのは……ただ身を隠していただけで……」「見苦しいぞガンドッグ=サン!貴様とて一時は誇り高きソウカイニンジャであったのだろう!」プロコンスルが威圧的に言い募る!「然りである!少しでも罪の意識があるならばラオモト=サンの前に出てドゲザの後にセプクせい!」グロウコブラは探偵気取りで有頂天!

 だがガンドッグはなおも足掻く!「マッタ!そういうことならフロッピーを見てもらおう!それで真相が分かる!」「そ、それはならん!そのフロッピーにはソウカイヤの極秘情報が収められている!絶対見てはならん!」途端にプロコンスルは焦り出した。これをチャンスと見たガンドッグは勝負に出る。

「グロウコブラ=サン。さっきも言ったがこのフロッピーにはプロコンスルにとって都合の悪い情報が詰まってる。つまり、横領とオイラン殺しと……ザイバツに通じていた証拠がな」「馬鹿も休み休み言え!内通は貴様の仕業だろう!」その言葉を聞いたガンドッグの目がギラリと光る!

「聞いたかグロウコブラ=サン!コイツ今内通『は』と言ったよな!?つまり他の件については認めたも同然だぜ!」「アッ!ち、違う!内通『も』していないと言いたかったのだ!」「へっ!そんなガキみたいな言い訳が通じるかよ!なあグロウコブラ=サン!」「……クフフ、如何にも」様子を窺っていたグロウコブラはガンドッグの横に立つ!

「プロコンスル=サン。貴様はこの極めて優れた……」「騙されるな!ソイツが寝返りを企んでいることは確かだぞ!」プロコンスルがグロウコブラの発言に割って入った。「裏切り者の言うことを信じるのか!?貴様もザイバツに通じていると疑われるぞグロウコブラ=サン!」「ガンドッグ=サン。下らん悪あがきは……」グロウコブラはプロコンスルの横に立つ!

「プロコンスルはカネを奪っただけでなくニチョームでオイランを殺してるんだぜ!?組織に対してどれだけ迷惑だ!そんな奴の肩を持ったらもう出世は望めねえぞ!」「プロコンスル=サン。貴様の命運はここで……」グロウコブラはガンドッグの横に立つ!「だからそれは嘘だ!吾輩は潔白だ!だからこそ第三者であるグロウコブラ=サンに協力を仰いだのだからな!」「エート……」グロウコブラは両者の間を右往左往!

「五月蠅いぞ横領野郎め!だいたいこんなサンシタの手を借りないと俺一人探し出せねえくせによ!」痺れを切らしたガンドッグが怒鳴り散らした。「エッ?サンシタ?」「黙れ!吾輩だってここまで酷いとは思わんかったわ!そうと知っていればこんなアホに話を持っていくものか!」プロコンスルも我慢の限界とばかりに怒鳴り返した。「エッ?アホ?」

「アホ頼りの高慢ちき野郎!」「貴様とてそのアホに阿っておったであろうが!」「馬鹿とハサミは使いようなんだよ!」「馬鹿にも限度があるわ!底抜けの馬鹿すぎてまったく役に立たん!」「それは確かに言えてるが…!」「…………AAAAAAGH!!」「「アイエッ!?」」グロウコブラの咆哮に二人は身を竦めた!

「いい加減にしろ!貴様ら好き勝手言ってくれたな!」グロウコブラの額に浮かんだ青筋がブチ切れた!ソウカイヤの名探偵は事件を最もシンプルな形で解決するため、猛然たるカラテを構える!「もう考えるのはやめだ!貴様ら二人一緒にぶちのめしてくれる!カカッテコイ!」一触即発アトモスフィア!

ゼア・イズ・ア・ファイン・ライン・ビトゥイーン・ジーニアス・アンド・インサニティ (その3)へ続く