忍殺TRPG小説風リプレイ【フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その11)】
◆アイサツ
ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。
こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。
それではやっていきたいと思います!
◆本編
◇3ターン目
◇◇◇
遭遇ドラゴンチック&タカギ・ガンドー: 1d12 = (12)
セルフハーム
セントーを出てチキンハートと分かれたセルフハームは左右の壁にずらりと自動販売機が立ち並ぶコサジ・ストリートに訪れていた。『バリキ』『ザセン』『タノシイ』『コブラZ』『ケモビール』『ユメ』『木瓜』……蛍光灯が放つまばゆい光の中に並ぶカラフルなダミー缶は残業で疲れたサラリマンや夢見がちな若者たちを誘蛾灯めいて引き寄せる。
セルフハームは自販機の1つにトークンを投入し、『アマッチャ炭酸乳チェリー:冷』と書かれた飲料を購入する。自販機正面に設置されたルーレットが起動し、光点が盤面を高速回転する。『アタリ』と書かれたマスに光点が止まればサービスでもう一本が無料で買えるシステムなのだ。
ストコココピロペペー!ザーンネーンドスエ!マイコ音声が明るい声でハズレを告げる。セルフハームはさして期待もしていなかったようで、無言で缶の蓋を開けて中身を呷る。「こっちもハズレね」彼女は一口飲んだだけで中身を側溝に捨て、空き缶をゴミ箱に投げ入れた。
カランコロン。既に空き缶や不法投棄された廃棄物で満杯となっていたゴミ箱は新たな空き缶を拒絶した。『アマッチャ炭酸乳チェリー:冷』の缶が音を立てて地面を転がり、誰かのつま先にぶつかる。その人物は『アマッチャ炭酸乳チェリー:冷』の缶を拾い上げ、右手でゴルフボールほどのサイズに握り潰してゴミ箱に捨て直した。
……空き缶を片手でゴルフボールほどのサイズに握り潰す?そんなことが常人に可能なのだろうか?よほど鍛え上げたカラテカか、腕を機械化したサイバネ者か、さもなければ。「ようやく見つけた」缶を捨てた人物はセルフハームを見据え、両手を合わせアイサツを行った。「ドーモ、ドラゴンチックです」
「…………またハズレ引かされたってワケ?ドーモ、セルフハームです」セルフハームは苦い顔をしてアイサツを返した。「あのデスドレインとかいう下品な男はどうしたの?もう殺したの?」「それ教える必要ある?これから爆発四散するんだから、あの世で確かめて来ればいいじゃん」「……言うじゃない、あなた」
セルフハームはパーカーの両袖からカタナを取り出し、その切っ先で舌の先端を挟んで擦り合わせた。甘美なるイタミが口中を満たし、血管をカラテが巡っていく。一方のドラゴンチックはジュージツの構えを取り、その四肢に炎で編んだ装束を纏わせる。瓦色の装束が高熱で赤く輝き、髪と瞳に同じ光がさざ波めいて走る。
2人のニンジャが放つ殺気がコサジ・ストリートに並ぶ自動販売機を振動させ、バチバチと蛍光灯が明滅する。「シュシューッ!」そのうちの1台から殺気に反応したベンダーミミックが飛び出し、触手をドラゴンチックとセルフハームへと伸ばす!「「イヤーッ!」」「アバーッ!」チョップとカタナで触手を切断され、ベンダーミミックは慌てて自販機内へ引っ込んだ!
2人は勢いそのまま目の前の敵へと飛び掛かる!セルフハームは右手に持ったカタナで袈裟斬りを繰り出す!ドラゴンチックはスウェー回避!セルフハームは左手のカタナで薙ぎ払う!ドラゴンチックはしゃがんで回避!
「イヤーッ!」「ンアーッ!」伏せた姿勢から放たれたドラゴンチックの蹴り上げがセルフハームの顎をかち上げ、その足が地面から浮く!「イヤーッ!」「ンアーッ!」がら空きの胴体に捻じ込まれる右ストレート!セルフハームはタタミ10枚の距離を吹き飛ばされる!
「ンアーッ……!ング!」ウケミを取って起き上がったセルフハームは蹴り上げの衝撃で外れた顎を戻そうとして、喉元に付いた火傷痕に気付き顔を思い切り顰めた。「ホンっとに憎たらしいわね!会うたび会うたび強くなっちゃって!」
ドラゴンチックは無言で手を伸ばし、挑発的に指招きをする。セルフハームは屈辱と怒りに支配されそうになり、カタナで火傷した部分を抉り抜いた。イタミの快楽と刀傷の興奮がセルフハームの脳内に快楽物質を分泌し、ネガティブな感情を洗い流す!
「オタッシャデー!」セルフハームはカタナを仕舞い、ドラゴンチックに背を向けて逃走した!セルフハームは自分ひとりではドラゴンチックに勝てぬことを知っている!ここは仲間の協力を仰ぐか、誰かに押し付けるべし!「イヤーッ!」しかしドラゴンチックは当然後を追ってくる!はたしてセルフハームは若き龍から逃れることは出来るのか!
ドラゴンチック『対抗判定:カラテ』+
『◉◉タツジン:ジュージツ(2)』+
『◉トライアングル・リープ(1)』+『★カトン・パンチ(1)』:
19d6>=4 = (6,4,5,6,2,1,2,5,2,5,1,3,6,3,6,2,4,1,5 :成功数:10)
セルフハーム『対抗判定:カラテ』+
『◉◉タツジン:二刀流(2)』+『サシイタ&マソウ(2)』:
12d6>=4 = (2,4,5,6,1,6,2,4,3,3,4,4 :成功数:7)
セルフハーム体力9 精神力4
◇◇◇
遭遇ブラックヘイズ: 1d12 = (10)
ニンジャスレイヤー?
「……ああ。スマンな。お前が交戦したというニンジャに遭遇していた。今、そちらに向かっている」デスドレインの生み出したアビ・インフェルノ・ジゴクから救い出した少女を交番前まで送り届けたブラックヘイズは、今度こそリストレイントとの合流ポイントに急いでいた。
『そうか。別にもっとゆっくりしていても構わんぞ。どうやらそちらは大変お忙しいようだからな?』リストレイントは先程よりもいくらか落ち着いた声色であった。どうやらどうにかして死神をうまく撒いたらしい。余裕が生まれた分、言葉の刺々しさも増していたが。
(まあ、救援に向かうと言っておきながら遅れたのは俺の方だ。文句を言うのはお門違い……)KABOOOOOOM!「グワーッ!」突如、目の前のビルの窓から火柱が噴出し、赤黒の影が火炎に押されるようにしてブラックヘイズの目の前に落ちてくる。「……どうやらブッダは俺にもっと働けと仰せのようだ」ブラックヘイズは嘆息した。
「ゲホッ、ゲホッ!……クソ!役立たずのハッカーどもめ!……ん?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」全身から煙を上げながら悪態を吐いていたニンジャスレイヤーに黒い網が絡みついた!ヘイズネット・キャプチャー・ジツによるアンブッシュだ!
「グワーッ!」「あまり喚くんじゃない。それではアイサツが聞こえんだろう……ドーモ、ブラックヘイズです」「……ニンジャスレイヤーです!この程度の網で!」ニンジャスレイヤーは両手にカトンの炎を纏い網を焼き切ろうと「イヤーッ!」「グワーッ!」
ブラックヘイズ『対抗判定:ニューロン+ジツ』+
『☆ヘイズネット・キャプチャー・ジツ(1)』:
13d6>=4 = (4,6,5,3,6,6,1,3,5,5,4,6,1 :成功数:9)
ニンジャスレイヤー?『対抗判定:ニューロン+ジツ』+『★カトン・パンチ(1)』:
11d6>=4 = (4,2,4,4,5,1,2,4,3,1,4 :成功数:6)
ニンジャスレイヤー?体力6 精神力1
ブラックヘイズは雁字搦めになったニンジャスレイヤーにサッカーボールキックを喰らわせる!ニンジャスレイヤーは防御も回避も出来ず、まともに受ける!「お前がその網を燃やし切るまで、俺が悠長に待ち構えているとでも思ったか?生憎、人を待たせているんでな。手早く終わらせてもらうぞ」「き、貴様!こんなことをしてタダで済むと」「イヤーッ!」「グワーッ!」
ブラックヘイズはボールめいて転がるニンジャスレイヤーを見下ろし、冷笑する。「タダで済まないと、なんだ?一体どうなるというのだ。狂ったニンジャ殺戮者のニンジャスレイヤー=サン。……に、憧れているニンジャスレイヤー・ワナビー=サン?」その言葉を聞いた瞬間、ニンジャスレイヤーのニューロンが一瞬で沸点を迎えた。
「殺す!殺す!殺してやる!このクズめ!殺してやるぞ!」「おお怖い怖い」ブラックヘイズは肩を竦める。「だがひとつ忠告しておくと、無理やりその網を破ろうとするのはやめておけ。俺がそうさせない、というのもあるが、簡単に千切れるような網ではないからな」
「俺はニンジャスレイヤーだ!俺はニンジャスレイヤーだ!俺は……俺は……!」ニンジャスレイヤーはブラックヘイズの言葉が聞こえているのかいないのか、網が肉に食い込んで血が出ているのにも構わずキャプチャーネットを掴み続ける。だが網は一向に破れる気配が無い。ニンジャスレイヤーはそれでも震える手で網を掴み続ける…………。
◇◇◇
遭遇チキンハート: 1d12 = (11)
ブレードブレイカー
「イヤーッ!」ブレードブレイカーの唐竹割りがニンジャスレイヤーの脳天へ振り下ろされる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは対空ポムポムパンチで迎え撃つ!DOOOOM!衝撃波が音の壁を越え、2人を中心として放射状に突風が吹き荒れる!KRAAAASH!そしてやや遅れて響く破壊音!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはブレードブレイカーの横腹に回し蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」ブレードブレイカーは肘で受ける!「イヤーッ!」防御した腕をそのまま前に突き出しての右ストレート!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスウェー回避!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはブレードブレイカーの懐に潜り込み、ワン・インチ距離からのコンパクトなボックスカラテめいた連打!連打!連打!フック!リバーブロー!アッパー!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ブレードブレイカーは防御!防御!防御!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「ヌゥーッ!」ニンジャスレイヤーはワン・インチ距離を保ったまま攻撃の手を緩めない!ブレードブレイカーにカタナの間合いで戦わせない心算なのだ!「舐めるんじゃねェ!イヤーッ!イヤーッ!」ブレードブレイカーもさる者!ニンジャスレイヤーの猛攻に素手のカラテで対抗してみせている!
とはいえジュージツとカタナの使えぬイアイドーの戦いならばジュージツに分があるのは自明の理!このままではジリー・プアーだ!どうするブレードブレイカー!……と、その時であった!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが突如その場でムーンサルト跳躍し、ブレードブレイカーとの距離を開いてしまった!何故だ!ニンジャスレイヤー!何故そのまま押し切らない!
「コイツは……」ブレードブレイカーはその原因にすぐに気が付いた。自分の足元、数秒前までニンジャスレイヤーが立っていた位置に、クナイ・ダートが突き刺さっている!ブレードブレイカーはクナイが飛んできたと思われる方角へ弾かれたように顔を向けた!
「ドーモ、チキンハートです!援護します!ブレードブレイカー=サン!」ブレードブレイカーの視線の先、社務所の屋根の上、そこにクナイを構えるチキンハートの姿があった!ここからニンジャスレイヤーの心臓目掛け、クナイを投擲したのだ!
「チッ……!余計な真似してんじゃねェ!手伝ってもいいが足引っ張るんじゃねェぞ!」「了解しました!」「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。何人来ようが同じこと!」真夜中のジンジャ・カテドラルを舞台に、ニンジャたちのイクサはますます激化の一途を辿る!次の朝日が昇るとき、ブッダは誰にそのアルカイク・スマイルを向けるのか!?