
忍殺TRPG小説風リプレイ【ユメ・アルク・クルーズ(その5)】
◆アイサツ
ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。
本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。
こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。
それではやっていきたいと思います!
◆本編
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アマミツミヤ家は平安時代から続く貴族の名家であり、今日、長男であるタカヒトはこの世に生まれついた時から約束されていた当主の座に就くこととなった。参席した本家と分家の親族たち、アマミツミヤ家と親交のあるガイオン貴族、キョート系列企業メガコーポの首脳陣。錚々たる顔ぶれが一堂に会し、一人ずつ順番にタカヒトにアイサツしていく。
「先生」アマミツミヤ家の長女ヨツバは実の弟であるタカヒトの前に膝をつき、恭しく頭を下げた。「おめでとうございます」ドゲザめいた姿勢を取る姉の後頭部を見下ろすタカヒトの顔は能面めいた無表情。この日のために下ろしたモンツキには皺ひとつ無く、まるで精巧な人形が上座に座らされているようにも見える。
ヨツバは静かに顔を上げ、自分の座布団に戻る前にほんの一瞬、弟の目を見た。まるで井戸の底めいた漆黒に縁取られた真円の瞳孔がヨツバを見つめ返す。その闇の奥に潜む感情は恐怖か、憐憫か、安堵か、侮蔑か、無心か。あるいはまさか、心配でもしているのであろうか。
それがなんであろうと、ヨツバにとってはどうでもよいことだ。この場にいる誰よりも特別な存在となった彼女にとって、当主となった弟のことなど……女だからという理由だけで自分を跡継ぎの候補にすらしなかった家のことなど……「ふぅん、大変なんだなお貴族サマってのは」ヨツバの隣から、この場にそぐわぬ粗野な声。
「いちいちこういう堅ッ苦しいことしなきゃいけねえのか?何が楽しくて生きてやがるんだよ……なあオイ?」座布団の上にアグラ姿勢で座ってなお見上げるほどの巨漢。その両腕は電気を撒き散らすサイバネ腕、バットゥエレ。
「イヤーッ!」ヨツバは……ヴァルナは鋭い踏み込みからの掌底でバットゥエレの巨体を吹き飛ばした。否、バットゥエレが攻撃の勢いを利用して後ろに飛んだのだ。CLASH!CLASH!CLAAASH!ショウジ戸を巻き込みバットゥエレは数部屋隣へ!
「イヤーッ!」ヴァルナは連続側転で吹き飛んだバットゥエレを追いかける。他の人間は皆動かない。いや、人間だけではない。庭のシシオドシも、池の水面から飛び跳ねたオーガニック鯉も、ヴァルナとバットゥエレが触れていないものすべて、まるでビデオの停止ボタンを押されたように停止している。
吹き飛ばされるに身を任せていたバットゥエレであったが、やがて思い出したように空中で姿勢を制御し、ウケミを取って二本の足で立った。ヴァルナもすぐに追いつき、2人はタタミ5枚分ほどの距離で対峙する。ヴァルナは今いる部屋の内装に気が付き、整った眉を微かに寄せる。
床の間にはオーガニック植物のカドー・オブジェ。ワビチャを行うための簡易スペースには見事な書体で書かれた『不如意』のカケジクが飾られ、壁面に埋め込まれた水槽の中では美しい尾ひれのキンギョが何も知らずに淑女めいて優雅に泳いでいる。間違いない。かつて、実家にいた頃の彼女が使っていた私室だ。
「ドーモ、ヴァルナ=サン。バットゥエレです」過去に思いを馳せていた時間は極僅か。しかし、先制アイサツを許すだけの時間は敵に与えてしまった。ヴァルナは敵の目の前で間抜けな隙を晒した己の不甲斐なさを呑み込み、即座にアイサツを返してみせた。「ドーモ、バットゥエレ=サン。ヴァルナです」
◆バットゥエレ (種別:ニンジャ)
カラテ 6 体力 6
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 6 脚力 3/N
ジツ 0 万札 -
攻撃/射撃/機先/電脳 6/6/6/6
回避/精密/側転/発動 6/6/6/-
◇装備や特記事項
◆ヴァルナ (種別:ニンジャ) DKK:3 名声(ザイバツ):8
カラテ 7 体力 7
ニューロン 7 精神力 7
ワザマエ 7 脚力 4/N
ジツ 0 万札 -
攻撃/射撃/機先/電脳 7/7/7/7
回避/精密/側転/発動 7/7/7/-
◇装備や特記事項
スキル: 『●連続攻撃2』『●連射2』『●マルチターゲット』『●時間差』
組織内での立ち位置や性格:『心酔や従順』
「ここがお前が住んでいた家か?古臭くてカビ臭え家だ!時代遅れの価値観に未練がましくいつまでもしがみついていやがるキョート人らしい!」「バットゥエレはよく響く大声で侮蔑の言葉を嘲笑と共に撒き散らす。ヴァルナは聞く耳を持たず、両手を閉じて、開いてを繰り返す。いくつかの違和感が彼女のニューロンを駆け巡る。
(ゲン・ジツの類とちゃう。そやけど、現実ともちゃう。てゆうか、夢でも幻でもなんでもえーけど、何が楽しゅーてタカヒト=サンの跡目相続にもういっぺん参加せんとあかんねん。なんべん繰り返しても結果が変わることなんてあらしまへんのに。……唯一変わったもんと言えば)ヴァルナは目の前のバットゥエレにちらりと視線を送る。
「綺麗好きで新しいもん好きのネオサイタマ人=サンがわざわざ参加してくれたゆうことやね。こらうちの実家の未来も明るいわ。なんや腕光っとるし。いやーめでたいめでたい、その豆電球みたいな頭も光れば尚めでたい」「イヤーッ!」コロコロと笑うヴァルナにバットゥエレが突撃する!ニューロンの速度で!
◇戦闘開始

イニシアチブ
ヴァルナ→バットゥエレ
※3ターン目の開始時にレツノスケが到着
※それまで戦闘は『一騎打ち』で行う
「イヤーッ!」ヴァルナは己もチョップを繰り出してバットゥエレのチョップを迎撃する!体格差を考えれば間違いなくヴァルナが打ち負ける場面!「ヌウッ!?」だがしかし手刀を弾かれ後ずさったのはバットゥエレの方だ!
「ウフフ、惜しい惜しい。首ごと斬り落とそ思うたんに」「お前……コトダマ空間に慣れてやがるのか!?」バットゥエレは両腕に纏わりつく電子的痺れを誤魔化すように叫ぶ。「さあて、どうでしたかな」ヴァルナはくすくすと笑いながら小首を傾げた。カンザシの挿されたサイドテールが風に吹かれた柳のようにひらりと揺れた。
そう、ヴァルナは慣れている。彼女はハッカーではなく、UNIXやIRC通信端末の操作すらキョート貴族らしくないという理由から不得手であるが、かつてオヒガンに極限接近した地で行った壮絶なイクサの経験からヴァルナはコトダマ空間での身体の動かし方を図らずも学習していたのだ。
「イヤーッ!イヤーッ!」「ヌウーッ!」こうなるとピンチになったのはバットゥエレの方だ。彼はスペルバウンドの手引きを受けてヴァルナのニューロンに潜入した後、何が起きているのかも分からぬ彼女を一方的に甚振り、意識を奪い、物言わぬ肉のオイランドロイドとなったヴァルナで思う存分楽しもうと考えていた。
だが、このコトダマ空間におけるヴァルナのカラテぶりは明らかに自分を上回っている。空気との摩擦で炎の軌跡が生まれるほどの速度で振るわれるチョップがバットゥエレの論理肉体を蝕んでいく!「イヤーッ!」「ヌウ……グワーッ!?」ガードのために掲げたサイバネ腕をヴァルナが掴み、そのままバットゥエレの頭上を飛び越えて背後に回る!
「イイィヤァーッ!」「グワ、アバーッ!?」ヴァルナはバットゥエレの両腕を掴んだままバットゥエレの背中に強烈な両足蹴りを繰り出す!関節部分が捻じ曲げられていたバットゥエレのサイバネ腕はこの衝撃に耐えきれず、根元から強引に捩じ切られた!「あれま、光らんよーになってもた。ヤンナルネ」ヴァルナは01の火花を散らすサイバネ腕をゴミのように放り捨てた。
◇1ターン目
ヴァルナカラテ:
4d6>=4 = (6,2,3,1 :成功数:1)+3d6>=4 = (3,6,4 :成功数:2)
バットゥエレ回避:
2d6>=4 = (4,3 :成功数:1)+1d6>=4 = (2 :成功数:0)
バットゥエレ体力5
バットゥエレカラテ:
6d6>=4 = (4,2,4,2,6,3 :成功数:3)
ヴァルナ回避:
3d6>=4 = (6,6,3 :成功数:2)
ヴァルナカラテ:
4d6>=4 = (3,4,5,1 :成功数:2)+3d6>=4 = (3,5,2 :成功数:1)
バットゥエレ回避:
2d6>=4 = (3,2 :成功数:0)+1d6>=4 = (6 :成功数:1)
バットゥエレ体力4
バットゥエレカラテ:
6d6>=4 = (1,3,3,3,3,5 :成功数:1)
ヴァルナ回避:
4d6>=4 = (4,2,1,1 :成功数:1)
◇2ターン目
ヴァルナカラテ:
4d6>=4 = (6,6,1,5 :成功数:3)+3d6>=4 = (5,1,2 :成功数:1)サツバツ!
バットゥエレ回避:
2d6>=4 = (3,2 :成功数:0)+1d6>=4 = (6 :成功数:1)
サツバツ:1d6 = (4)「どこへ逃げても無駄だ!」敵の脚を無慈悲に粉砕!
バットゥエレ体力2 カラテ5 脚力1
バットゥエレカラテ:
5d6>=4 = (1,5,2,5,5 :成功数:3)
ヴァルナ回避:
3d6>=4 = (3,2,4 :成功数:1)
ヴァルナカラテ:
4d6>=4 = (2,6,1,6 :成功数:2)+3d6>=4 = (1,4,2 :成功数:1)サツバツ!
バットゥエレ回避:
2d6>=4 = (5,4 :成功数:2)+1d6>=4 = (4 :成功数:1)
バットゥエレカラテ:
5d6>=4 = (4,1,5,2,1 :成功数:2)
ヴァルナ回避:
3d6>=4 = (5,6,1 :成功数:2)
※2ターン経過したためイベント発生
「ク、クソッタレ!お前、こんなことをしてタダで済むと思うなよ!バラバラにしてやる!その上スクラップにして、溶かして型に流し入れて、前衛的オブジェめいた造形のオイランドロイドにして売り飛ばしてやる!」バットゥエレは激昂し、地団駄を踏んだ。「しょーもな」ヴァルナは欠伸を噛み殺した。
「なんとまあ恐ろしい……もとい、頼もしい女だ。これなら助けは不要だったか?」その時、ショージ戸の向こうにある中庭の方から男の声が聞こえてきた。バットゥエレは弾かれたように、ヴァルナはゆったりとした緩慢な動作で声の方に顔を向ける。
「バカな!いったいどこのどいつだ!ここはこの女の過去の記憶の中!スペルバウンド=サンのジツも無しに来れる奴がいる訳がない!」「よー口の回るお人やなあ。頭ん方もそんくらいよー回ればなあ」ヴァルナは中庭に続くショージ戸を開けた。
見事な模様の描かれた白砂の枯山水に浮かぶ一隻のボロ舟。その上には一人のニンジャが座り、一人のニンジャが立っている。座っている方は知らないが、立っている男はヴァルナがよく知っているニンジャだ。男とヴァルナは不敵な笑みを見せ合い、アイサツを交わした。「ドーモ、ヴァルナ=サン。ロンダイジ・レツノスケです」「ドーモ、レツノスケ=サン。ヴァルナです」