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忍殺TRPG小説風リプレイ【メガ・エボリューション(その3)】

◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

 それではやっていきたいと思います!

◆本編

 ザンシンを終えたサルーテは銃を構え、BLAM!近場にいたY-14型の心臓に向けて射撃した。BLAMBLAM!念のため頭部に更に2発撃つ。サルーテは他の死体にも同様のプロセスを行っていく。

「おい、何を悠長なことをしているのだサルーテ=サン。どう見てもそのヤクザたちは死んでいるだろう?弾丸と時間の浪費としか思えん、無益だ」「フン、狂人には付き合いきれん。サルーテ=サン!お前はこのまま人か来ないよう見張っていろ!私とアンモナイト=サンで仕事を済ませておく!その間誰も近付けさせるなよ!」

 アンモナイトとイセはルーチン作業を行うサルーテをその場に残し、UNIXルームへさっさと入っていく。床に転がるY-14型から流れ出る緑色の血が急速に酸化し、白い床を赤黒く汚していく。すべての死体に弾丸を撃ち終えたサルーテはUNIXルームの扉の前に石像めいて仁王立ちする。ヘルメット、分厚いゴーグル、マスクに覆われたその表情を窺い知ることは出来なかった。

◇◇◇

イセ ニューロン判定: 7d6>=5 = (3,5,5,3,3,2,4 :成功数:2)

「サメが好き……サメが大好き……サメの可能性……ヨシ!QED!」イセはパスワード認証が通ったUNIXのモニターを見て握った拳を振り上げた。画面に表示されるのはトガリの作り出したバイオニンジャであるシャークパイアの詳細データだ。

「トガリめ、よくもまあサメなどという将来性の感じられない生物にここまでのめり込めたものだ。上層部も何を考えてこの企画を承認したのか……」「個人的な感想はあとにしたまえ。それより、ワクチンは出来そうなのか?それが不可能なら貴様の将来こそ閉ざされることとなる」

 イセは挑発的に鼻を鳴らし、モニターを指先でトントンと叩いた。アンモナイトが画面を覗き込むと、無数に絡まり合った分子構造の3Dモデルが自転している映像の横に『サメ化鎮静』『即効』『ほぼ安全』を意味する専門用語が並んでいる。トガリの研究資料から拝借したシャークパイアDNAのデジタルツイン臨床試験によってインターネット上に完成したサメ化治療薬だ!

「あとはこれと同じものを現実で作ればいい。シャークパイアのDNAと実験器具さえあれば、私なら容易くできる。QEDだ」「バイオ工学については門外漢だが……ここは貴様の言葉を信じることとしよう。次は何処に向かえばいい?」「シャークパイア本体を確保する。ここからトガリの研究室へ行って……」

 BLAMBLAM!BRATATATAT!KRAAASH!その時、突如UNIXルームの外から聞こえてきた銃声と衝撃音に椅子から立ち上がろうとしていたイセは大きくつんのめった。「ええい、サルーテ=サンは何をしている!クローンヤクザくらいもっと静かに始末できないのか!」「いや待て、どうも様子が妙だ」扉にメンポの横面を当てたアンモナイトが口元に人指し指を当てる。外の音声を拾っているのだ。

 ……一方、通路で待機していたサルーテは新たな敵と対峙していた。敵の数は3体。それぞれ2本の足で立ってはいるがその手足のサイズバランスは人類のそれを大きく逸脱しており、洗練された黒いスクエアボディは関節や頭部前面のX字型スリットから青いLED光を放っている。3体の内、中央に立つ敵が代表アイサツした。

「データベース照合完了。共有完了。ドーモ、サルーテ=サン。我々はドラグーンです。シリアルナンバーは非公開です」

◆ドラグーン×2(種別:戦闘兵器、クローンヤクザ*)
カラテ    4  体力  6
ニューロン  4  精神力  -
ワザマエ   4  脚力   4 (バイク変形中は12)
ジツ     –  万札   4

攻撃/射撃/機先/電脳  4/4/4/4

◇装備や特記事項
 ダッシュアームパンチ:近接攻撃、ダメージ2、バイクモード中は近接攻撃不可
 暴徒鎮圧バルカン:銃器、連射4、ダメージ1、射撃難易度:NORMAL、バースト3x3、銃弾の雨1

 『●射撃スタイル:銃弾の雨1』(バイクモード中は使用不可):
 通常の射撃(『バースト3x3』、『連射4』)とどちらか片方を選択する。
 視線が通っている3x3の範囲に対して自動的に1ダメージを1回与える(『回避:HARD』)。

 『●バイクモード変形』:
 手番開始時に『瞬時行動』として使用可能。
 次の手番まで『移動距離12 / 全力移動D3』、『轢殺攻撃1』のバイク形態となる。
 この間、『近接攻撃』と『銃弾の雨』は使用できない。また通常の射撃難易度も+1される。
 次の手番開始時に、通常形態に戻るか、それともバイク形態を維持するかを選択できる。

 『●騎乗可能』(バイクモード中のみ使用可):
 味方キャラは、バイクモードのドラグーンを、上記能力のビークルとして騎乗できる。
 これに騎乗している味方は、ドラグーンに搭載された「暴徒鎮圧バルカン」を使用可能となる。
 ドラグーン脳による射撃支援があるため『●バースト3x3』や『●銃弾の雨1』も使用できる
 (騎乗者が『●銃弾の雨1』を使用する場合は『射撃判定:NORMAL』となる)。
 騎乗されている間、ドラグーンは自身の手番にいっさいの行動を行えない。
 例外は、ドラグーンが手番開始時に『●バイクモード変形』を宣言し、通常形態に戻る場合である。
 この場合、騎乗していた味方は好きな隣接マスへと再配置される。



*『クローンヤクザ生体脳』:
 ドラグーンは精神攻撃系のジツに対しては「戦闘兵器」でなく「クローンヤクザ」とみなす
 (「モータルは行動不能」「モータルは即死」などの効果は無視する)。
 そのジツが【精神力】ダメージを与えるものだった場合、
 【体力】ダメージに読み替えられる(軽減不可)。
 このルールはジツに対してのみ有効であり、精神攻撃系のスキルは対象外である。
◆指揮官級ドラグーン (種別:戦闘兵器、クローンヤクザ)
カラテ    4  体力  6(ファイアウォールx1、即死耐性)
ニューロン  5  精神力  -
ワザマエ   4  脚力   3
ジツ     –  万札   6

攻撃/射撃/機先/電脳  4/4/5/5

◇装備や特記事項
 ダッシュアームパンチ:近接攻撃、ダメージ2、バイクモード中は近接攻撃不可
 暴徒鎮圧バルカン:銃器、連射4、ダメージ1、射撃難易度:NORMAL、バースト3x3、銃弾の雨1
 『◉ツジギリ』、『◉タクティカル移動射撃』、『◉突撃』、
 『●即死耐性』、『▷ファイアウォール』
 
 *その他は通常のドラグーンを参照*

 ……「あれはまさかオナタカミ社の兵器か?なぜヨロシサンにそんなものが?何か知っているかね?」ほんの僅かに開いた扉の隙間から外の様子を覗くアンモナイトはイセに小声で尋ねる。ドラグーンの存在はオムラの第3コンビナート襲撃事件などで既に公のものとなっており、近々マッポにも導入予定だと噂されている。

「オナタカミ社製の兵器にはクローンヤクザの生体脳が用いられていた筈だ。ここで性能テストでもしていたのかもな」「それが侵入者を始末するためにこれ幸いと作動させられてしまったと?なんと間の悪い!」「確かに不運……しかし、だ」イセは眼鏡の青いフレームを指先で持ち上げる。

「ヨロシサンが警備のために他社製品を大々的に導入しているとは考え難い。今外にいるドラグーンさえ破壊すればこれ以上ロボニンジャが出てくることは無い筈だ」「ならば、ここはやはりサルーテ=サンに任せるか。我々の姿をロボニンジャに見られてはそのデータが敵に流れてしまう……それは避けたい」「そういうことだな。ここで高みの見物といこうじゃないか」

 UNIXルーム内の2人が出した結論を既に悟っていたか、サルーテはロボニンジャたちに右手を上げて見事な挙手の敬礼を行う。BRATATATAT!そのコンマ2秒後、サルーテの両手に握られたLAN直結銃の論理トリガ10連射2連が赤いXの字を宙に描いた!

◇戦闘開始

イニシアチブ
サルーテ→指揮官級ドラグーン→ドラグーン

 ドラグーンたちは脚部に装着されたローラーで脚を上げることなく回避行動を取る。BRATATATATAT!両腕に装着された暴徒鎮圧用バルカンが一斉に火を噴いた。対ニンジャメソッドに則った屋内での面攻撃だ。

 びゅうう。木の葉めいて01ノイズの混じった風がサルーテの周囲を渦巻き、弾幕をすり抜けさせた。サルーテの表情は窺い知れない。彼は銃をホルスターに仕舞い、両腕のサイバネ腕からパルスダガーを展開させる。

 SLASHSLASHSLASH!電流を纏う精密な斬撃がドラグーンの関節の継ぎ目に滑るように捻じ込まれた。「「「アバーッ!」」」ドラグーンたちは先程のヤクザたちと同じ様に痙攣し、同じ様な断末魔を上げ崩れ落ちた。垂れ流される脳漿と保存液が通路を穢す赤黒い染みを更に薄く広げていった。

◇1ターン目
サルーテパルスダガー精密攻撃→指揮官級ドラグーン:
8d6>=4 = (2,1,5,2,2,4,4,3 :成功数:3)
+7d6>=4 = (4,5,6,6,5,4,6 :成功数:7)
指揮官級ドラグーン体力0!破壊!

ドラグーン暴徒鎮圧バルカン:
4d6>=4 = (2,5,5,5 :成功数:3)
+4d6>=4 = (5,2,4,5 :成功数:3)
サルーテ回避:
14d6>=5 = (5,4,1,5,4,1,3,3,3,5,3,5,6,4 :成功数:5)

◇2ターン目
サルーテパルスダガー精密攻撃→ドラグーンA:
8d6>=4 = (2,4,5,6,2,1,5,1 :成功数:4)
+7d6>=4 = (1,1,5,4,4,4,4 :成功数:5)
ドラグーンA体力0!破壊!

ドラグーン暴徒鎮圧バルカン:
4d6>=4 = (1,2,5,6 :成功数:2)
サルーテ回避:
14d6>=5 = (4,2,1,1,4,3,1,6,1,3,1,5,4,3 :成功数:2)

◇3ターン目
サルーテパルスダガー精密攻撃→ドラグーンB:
8d6>=4 = (5,3,6,6,1,4,2,2 :成功数:4)
+7d6>=4 = (3,2,3,1,2,3,6 :成功数:1)
ドラグーンB体力0!破壊!

戦闘終了
【万札:14】GET

「驚いたな……まさかここまであっさりと片付けるとは。ふん、オナタカミも実際情けない」「私が見るに、武装の相性が良かったというのもあるだろう。如何に精巧に作られていようと機械は機械。電撃を受ければひとたまりも無い、か」

 先程の戦闘を評しながらUNIXルームから出てきたのはイセとアンモナイトだ。イセの手には一枚のフロッピーが握られている。これをトガリの研究室のUNIXに挿し込めば治療薬が開発できる筈だ。アンモナイトはイセを担ぎ、先を急ごうとする。

 だが、トガリの研究室へと向かう前にサルーテにはやることがあった。イセとアンモナイトはうんざりした表情を浮かべるが、サルーテを止めることはしない。この狂った傭兵の不興を買ってアンモナイト琥珀を手に入れられなかったり、危害を加えたりされることは避けねばならぬ故に。

 サルーテは銃を構え、BLAM!ドラグーンの残骸の心臓と思われる箇所に向けて射撃した。BLAMBLAM!念のためX字のスリットがある頭部にも更に2発撃つ。サルーテは他のドラグーン2体にも同様のプロセスをし終えると、何事も無かったかのようにアンモナイトとイセの方を向いた。アンモナイトたちは釈然としないものを感じつつも、トガリの研究室へ向けて動き始めるのだった。

◇◇◇

「ドラグーンが破壊された、ですって?」ヨロシ・バイオサイバネティカ社上層部、スタジオルーム前。部下の報告を耳にしたヤイミ・コナギバはその整った眉根を微かに寄せる。

「詳細を報告しなさい」『ハハーッ!』ヤイミが見ているのは配下のニンジャが掲げるUNIX端末のモニタ画面、その中でドゲザするヨロシ・バイオサイバネティカ社、副部長の後頭部だ。副部長は両手足を突っ張ってドゲザ姿勢をより深くする。

『例のデータ泥棒を捕獲するために、部長補佐の提案で、クローンヤクザ生体脳の同期テストを行っていたドラグーン3体を向かわせたのですが、途中でヤクザ生体脳のバイタルサインが消失!破壊が確認されました!』副部長は報告の合間にドラグーン破壊の責任を他人に被せることを忘れない。

「それで、下手人は?」ヤイミは既にモニタ画面を見ていない。彼女は配下のニンジャ複数人に化粧直しをさせていた。これから株主や取引先企業へ向けたプレゼンテーションを控えているのだ。ケチなコソ泥にかかずらわっている時間や思考リソースは存在しない。ヤイミはそのように考えていた。だが。

『ドラグーンのデータベース照合を共有したところ、侵入者の名前はサルーテとかいう傭兵ニンジャで……』「なんですって?」『アイエッ』サルーテの名前を聞いたヤイミの反応の変化は劇的であった。副部長は小失禁しながら報告がモニタ越しであったことをブッダに感謝する。

「……そいつにはクローンヤクザ部隊を向かわせて対処させなさい。くれぐれも社内から逃がさないよう」『エッ!ですが、いくら最新型のY-14型でもニンジャが相手では……』「だから?」『アイエッ!』ヤイミの声は柔らかく、その笑みは美しかった。だが、その細められた瞳の、底なし沼めいた邪悪な濁りは……

『アイエエエエエッ!出過ぎた真似をしました!ただちに対処いたしますーッ!』「よろしい。すぐに取り掛かりなさい」『ハハーッ!』モニターの電源が落とされ、ドゲザ姿勢から床に崩れ落ちた副部長は今度こそ完全に失禁した。

「CEO、お時間です」「すぐに向かいます」一方のヤイミはメイクを終えると、配下のニンジャから差し出されたグラスに入ったヨロシグリーン色のドリンクを一息で飲み干し、また別のニンジャから差し出されたハンカチで口元を拭う。そして見る者すべてを魅了するような素晴らしい笑顔を浮かべた後、スタジオルームの扉を開けた。

メガ・エボリューション(その4)へ続く