【アーティストインレジデンス】うみらぼに滞在したアーティストにインタビュー!
2024年8月、うみらぼでは、アーティストが制作活動をしながら滞在するプログラム『アーティストインレジデンス(以下、AIR)』を実施しました。
眼前に英虞湾がひろがる特別な場所と、アーティストのクリエイティビティが混ざりあい、新しい活動やアートピース、さまざまなアイデアや関わりが生まれることを期待して企画したプログラムです。
アーティストの滞在中、うみらぼでは『アーティストと過ごす夏休み at UMILABO』宿泊滞在プランという新たな滞在のご提案にもチャレンジしました。アーティストはうみらぼのホストとしても活動し、訪れる皆さんと交流しながら、うみらぼでの時間を共有してきました。
今回のアーティストインタビューでは、8月3日から8月27日の約3週間滞在していただいたLily Okamotoさん、Keiさんにお話をうかがいました。
Lily Okamoto
三重県出身、高校卒業と共にアメリカへ渡り約10年間移住生活を続ける。2022年夏、6年間築いてきたスタートアップでのキャリアを突然手放し、生まれ育った三重県伊賀市を拠点に制作活動を始める。流動的で大胆な制作スタイルで抽象画と文章を行ったり来たりする。Instagram::@lilythevly
Website: lilyokamoto.com
Kei
中国出身で、大学院進学のために香港に留学。エンジニアとして数年間働いた後、日本に三ヶ月滞在し、日本一周をきっかけに写真を始め、渡日を決意。現在は京都市でエンジニアの仕事を続けながら、写真制作の活動を行っている。
Instagram:@kei.yw
Website: keibungen.com
うみらぼとの出会い
——川野さんやうみらぼとの出会いのきっかけを教えてください。
Lily Okamoto(以下、Lily):川野さんは以前勤めていた会社の同僚です。会社を辞めてからも交流があって、「うみらぼ」を始めたのも知っていました。初めてうみらぼを見に行ったのは2年前で、もともと三重県伊賀市出身なので、志摩市に行ったことはあったんですが、うみらぼに行ってはじめて志摩のことをいろいろ知りました。
その後もうみらぼのワークショップに参加したり、絵を描きに行ったこともありました。
川野さんが「アートをうみらぼに取り入れたい」という話をしていたので、その時からうみらぼで作品を制作している自分が想像でき、川野さんに提案しフランス人の友達と一緒に1泊2日の滞在でうみらぼのウッドデッキで絵を描いたものを寄贈しました。
その後、しばらくしてその友達が日本を訪れた際に「またうみらぼに行きたい」と言ってくれたので、さまざまな友達に声をかけてうみらぼに宿泊しました。そのときにKeiくんも来てくれました。この時から川野さんとうみらぼでもAIRをやってみないかという話が具体化していきました。
Kei:僕は、実は三重県に来ることも初めてでした。
船に乗ってうみらぼに行くのがすごく新鮮でした。船長である川野さんのお父さんともいろいろな話をして、船のことやうみらぼのことを教えてもらいました。
琵琶湖の周りでよくキャンプをするんですが、船で行く場所でキャンプをするのは初めてで、全てが新鮮でした。
今回のAIRに参加することになって、馴染みのない場所に滞在し、さまざまな人と交流する中で、どういうアートが生まれるのかにとても興味がありました。
自然体で活動する、うみらぼアーティストインレジデンスでの過ごし方
——うみらぼでの制作活動、日々の過ごし方についていかがでしたか?
Lily:他のAIRの事例では、期間中に作品展示をしたり、作品を寄贈する等の条件が与えられていることもあるのですが、今回はあえて制作に関する制限を設けないでやろうと川野さんと相談して決めました。
その中で私は、暮らしの中で作品や活動が自然に生まれることを大事にしました。極端な制限のある環境ではなく、自分が幸せだと感じられるものを近くに置くことを意識して、いつも使っているコーヒーの機械、お気に入りの調味料、お皿を彩ってくれるバジルの鉢植えも持っていきました。
そうした環境で暮らす中で、自然にアウトプットのタイミングが生まれて、自然体で活動できてすごく良かったです。
Kei:もともと僕が写真を撮るときは、旅行先の風景や人を撮ることが多いんですが、今回はずっと同じうみらぼという場所で写真を撮り続けました。
同じ海でもその時々で様子が違うので、その写真を撮ったり、自分がどこかに出向いて誰かの写真を撮るのではなくて、うみらぼに来る人達の写真を撮ったりして。これまでの撮り方とは違うアプローチだったので、新鮮で面白い作品になりました。
Lily:うみらぼに滞在するお客さんに「アーティストと過ごす夏休み」というパッケージを提供したのですが、ホストとして接しながら、一緒に絵を描く体験ができました。特に強制することもなく、自然にアートに触れてもらうことができて、すごく喜んでくれていたのが印象的でした。
Kei:長期滞在していると、生活に対してもさまざまなアイデアが生まれてきて、気づけば棚やインテリアをつくっていました。
Lily:うみらぼという立体空間のキャンバスで絵を描いているような感じがしました。普段の平面のキャンバスでの制作とは違う「自分との対話」をしていた気がします。
うみらぼ滞在を通じて、自然と向き合う
——うみらぼで体験した、自然との生活はどんなものでした?
Lily:程よく「なにもない」のがうみらぼの魅力なので、なんでもありすぎる世の中から隔離されたことがすごく重要に感じました。「もう日が暮れてきたな」とか、「雨が降ってくるから備えよう」というように、自然と一体になった暮らしができていました。私たちは、普段と違う自然な暮らしの中にある『何か』を求めていたんだと思います。
Kei:普段の食事は、外食やコンビニで簡単に済ませてしまうことが多いですが、うみらぼの周りにはそういったものがないので、全ての食事を自炊していました。AIR後の今も引き続き、自分で料理をしています。普段の便利な生活から半強制的に離れてみるのも面白いと思いました。
Lily:田舎住まいの私であっても、英虞湾のユニークな陸地から隔離されたような立地は普段の自分がどれだけ自然と共存していないのか、ということに潮の満ち引きや天候が変わりゆく中で改めて気付かされました。うみらぼで時間を過ごすにつれて、海のことをもっと知りたいなと思うようになりました。
今後のうみらぼアーティストインレジデンスの展望
——今後うみらぼに再度滞在するとしたら、試してみたいことはありますか?
Lily:あともう1ヶ月いたら、制作もまた違うステージに行けた気がしていて。このプログラムをさらに長期で実施するとどんなものが生まれるのかすごく気になります。
Kei:僕は今回の滞在をきっかけに小型船舶操縦士の免許を取りました。次にうみらぼに行くとき、船でどこかへ行ったり、船の上で写真を撮ったりしてみたいです。
Lily:私も免許を取得しました(笑)。自分たちで船での移動ができるようになることで、また全然違う体験になりそうだと思っています。
Kei:今回は夏でしたが、秋や冬のうみらぼも体験したいです。寒い時期であれば焚き火もできるし、焚き火の周りでご飯食べたり、語らいたいですね。
Lily:あと、うみらぼで出会った方々とのご縁で、地域との接点がどんどん増えていきました。他のアーティストが訪れた際も、こういったことがあると滞在がすごく充実するんじゃないかと感じました。1回のAIRで終わるのではなく、長期的に志摩市やうみらぼと関わってもらうことで、1人のアーティストが志摩にもたらすバリューを増やしていければ良いなと思います。
—— うみらぼオーナー側から見て、今回のAIRの取り組みはどうでしたか?
川野:あえてルールを設けないことが重要だった気がします。2人ともすごく自然体で志摩やうみらぼでの暮らしを楽しんでくれたことが嬉しかったです。
また、うみらぼや志摩市に、他のたくさんのアーティストの方々を巻き込んでいくための施策を考えていきたいと思います。
Lily:うみらぼがどんな場所かを伝えていくために、アーティストが集まるイベントに招待して、ハードルを下げてあげるのも一つだと思います。うみらぼなら、そういうイベントを開いたタイミングで、自然と関わってくれる人が絶対出てくるはず。
Kei:僕は、志摩のことを全く知らなかったけど、1ヶ月滞在してとても好きになりました。創作活動もそうですが、地域の人と会話して、さまざまな場所を訪れてみて、この街をもっと知りたいと思うようになりました。うみらぼや、うみらぼがサテライトオフィスを置いている近隣のCO Blue Centerにもすごく面白い人が集まってくるので、今後も面白いことがありそうだなという期待感があります。僕自身もまた志摩に来たいです。
今回のAIRでは、通常の宿泊利用、研修利用やイベント利用といった用途の枠にとらわれない、人と人との交わり、うみらぼの生かし方を考えるきっかけになりました。また、滞在したアーティストが志摩市内のさまざまな人とつながったエピソードからは、うみらぼ滞在をきっかけに地域内外の人がつながる可能性にも気付かされました。
今後もこのようなアーティストが地域と関わる参加型のプログラムを企画していくので、是非うみらぼnoteをフォローしてみてください。