
はるかな宇宙に夢馳せる ー初めて自分で買った新書
どうも。気ままにネットの海をふらふらぷかぷか進み、毎週日曜は本を紹介しております、電子書房うみのふねに立ち寄ってくださりありがとうございます。
毎週何かしらのテーマを決めて二、三冊程度紹介していましたが、だんだんと次どうするかを考えるのに時間がかかってきたので(それはそれで楽しい時間ではあるのですが)、今週から少し趣向を変えて、他の人が決めたテーマに沿って紹介していこうと思います。
Twitterで見つけたものです。@todomaguro0さんよりお借りしました。
30日チャレンジ、というのが巷で流行っているようで、毎日それぞれのテーマのものを紹介したり実施したりする、というもの。この電子書房は週一での開店になりますのでdailyではなくweeklyにはなりますが、面白そうなのでやってみようかと。「小説」ですが明らかに「小説」ではないお題もありますし、ジャンル問わずやろうかと。
先週の「2020上半期ベスト10冊」のようにやりたいテーマが出てきたらそっちを優先しますが、基本的にはこのすごろくに沿っていく予定です。
そういうわけで、一日目の今回は「初めて自分で買った新書」。
新書って、最近でこそ知識の泉としてのありがたみや樹状のように繋げていく読書に対して魅力を感じるようになったのですが、あんまり読んできませんでした。最初に読んだ新書と言われても思い出せないし、読んだとしても記憶がだいぶ薄れていたり、図書館や実家に置いてあったものだったり……。
覚えている限り、恐らくこれが「初めて自分で買った新書」です。
なにはともあれ、まずは序文を。
想像してみよう。遠くの世界のことを。
想像してみよう。あなたは火星の赤い大地に立ち、青い夕陽が沈むのを見ている。
想像してみよう。あなたは宇宙船の窓から「星月夜」の絵のような木星の渦を間近に見下ろしている。
想像してみよう。あなたは土星の衛星タイタンの湖岸に立っている。オレンジ色の雲から冷たいメタンの雨が降り、湖面に輪を描いている。
今、あなたの心の奥不覚で何かが戦慄くのを感じなかっただろうか? 何かが囁くのが聞こえなかっただろうか? 言葉になる前の、意識にすら上る前の、何かが。
それは古い。とても古い。スプートニクよりも、コペルニクスよりも、ホメロスよりも、ストーンヘンジよりも古い。川や森や山よりも古いかもしれない。
それは寄生虫のように人から人へと伝染する。人類の集合的な心の奥底に潜り込み、人の夢を、好奇心を、欲望を見えない糸で操り、人類の歴史、運命、未来に干渉する。
それは一体、何だろう?
これだけで、わくわくしませんか。私は何度読んでも導入部としての素晴らしさが際立っていて震えます。
好奇心を掻き立てられる、宇宙という未知への旅への導入。そこから、宇宙への旅立ち、アポロ計画、太陽系探査、地球外生命探査、地球外文明探査、過去から遙か未来へ、時系列に沿って進んでいきます。
作者である小野さん、文章が上手なんですよ。序文からしてわかっていただけるとは思うんですが、宇宙という広大なテーマを、魅力ある筆で描いていく。数学や物理学等々主言語となる宇宙について、わかりやすい言葉で語っていく。だから、するすると内容が入ってくるんです。小野さんがわくわくしながら未知を切り開いていく宇宙開発に携わっているのが読者にも伝わってきます。
宇宙開発は美しいばかりではなく、戦争にまつわる重く苦しい過去も、苦難と模索に満ちた過程もある。物語のスパイスは苦難であるとも思いますが、非常にストーリー立てた本作でも当然その苦難は織り交ぜられていて、だからこそその凄みが際立つ。
今でこそ、スマートフォンで簡単にどこでもネットが繋がって、簡単に情報が手に入れられる。でも、アポロが月面着陸した1969年当時、スマートフォンどころか、ケータイすら無かった。カラーテレビは金持ちのものだったし、エアコンだって普及していない。それでも、アポロ11号は月へ向かい、アームストロングははっきりと足を踏み入れた。そこには、宇宙へ対する人々の強いイマジネーションが土台にある。宇宙への夢、未知の世界へどうしたら向かうことができるか。想像し、計算し、現実とする、その力強さたるや。
でも、そのイマジネーションは、想像力は、思考は、私たちにも存在している。
まだ見えないものを想像という瞳で見据え、形にしていくということ。
はっきりとはしていない謎を、明らかにしていくこと。
科学とは、新しいものを創り出すのではなく、暗闇で見えていなかったものの形を明らかにすることだ、というような文を、別の本で読みました。私たちには見えないものがまだ多くある。宇宙はその最たるものです。星空には手が届かない。青い地球をこのまなこで見られる人なんて限られている現状。でもいつか、一般人でも月へ旅行できる日が、きっとやってくる。それはいつになるかわからない。でも、私たちはいつでも、月へも、宇宙の果てまでも、旅をしていける。想像力を使って。
想像力がなければ科学は発展しない。そして、想像力によって、私たちの生活はゆたかになる。
宇宙の謎に触れる本です。そして、彼の語る「言葉になる前の、意識にすら上る前の、何か」、「それ」、つまり「イマジネーション」に触れたとき、きっとあなたの見る世界は少し変化する。それだけの力が、この小野さんの渾身の新書にはあります。
宇宙旅行、しませんか?
はい。久しぶりに読んだらやっぱり面白く、熱っぽくなってしまいました。
でもこの本の魅力は、本当、読まないとわからないです。私のようにぼんやりとしか宇宙について知らない人も、宇宙に詳しい方も、きっと楽しめる。得られる宇宙の知識はもちろんですが、読むことで小野さんのあふれる情熱にあてられておのれの魂が沸き立つ瞬間こそ、この本の素晴らしさです。ぜひ!
では、今週はここまで。来週は、他に何もなければ「最も影響を受けた作品」について紹介します。頭を悩ませる話題です。一週間使って「最も」を考えます。
30回分。今更ながら、さほど深くもない内読書遍歴をさらすようでちょっと気恥ずかしさもありますが、良かったらお付き合いください。
また来週、ご縁があればお会いしましょう。
いいなと思ったら応援しよう!
