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幸せの温度
よ、いしょ、どっこい、しょー。
ふう。
この土管は毎度登るのに苦労する。
あ、どうも、おはようございまーす。日光燦々おはようさん。どもどうも。今日も朝から暑いですねえ。ご覧ください、あの爽やかな青い空。ふわふわのわたぐもが風でゆうっくり流れていって、良い天気です。
人も川のほとりを、すいすい歩いていきますね。
うさぎと亀っていう、おとぎ話、知ってます?
知らないか。いや、いいんですよ。
ひとが好きなお話ですよ。前にいたおうちでねー、話していたこと、ぼんやり憶えているんですねえ。
ぼくは、おうちから外に出たら、そのまま迷ったんですねえ。
でも、この川での生活も、悪くはないです。
こうして見ていると、ここに住んでいるひとたちみんな、うさぎみたいに見えますねえ。
そう思いません?
ととと、と、走り回ったり、一生懸命乗り物を使ったり、ちょっとうつむいたりしながら、顔を上げたりしながら、でも、つまり、がんばってるんでしょうねえ。ぼくらにはできないかたちで。
そういえば最近、みんな白い布で顔を隠していますねえ。おめめだけでお話しているんですかねえ。あれは、息が苦しくならないんでしょうか。不思議です。
あの子もそんなふうに過ごしているのかな。元気にしてるかなあ。
ぼくのこと、憶えているかなあ。
せかせかして、疲れたりしてないかなあ。
たまに、会いにいきたくなることがあるんですけど、ぽんやか日光浴をしてると、まあ、お腹すいたし、いつか、そのうち、でいいかあ、となって、けっきょくねむたくなるんです。
ああ、ばれてしまいましたか。
うん。あんまりきもちいいから、ねむいんです。
ねてもいいですか?
うん。
じゃあ、おことばにあまえて。
またいつか、そのうち、おはなししましょ。
了
「幸せの温度」
三題噺お題:ふわふわ、お腹すいた、おとぎ話
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