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読むとモチベが上がる作品

 おはようございます、こんにちは、こんばんは。小萩です。
 ネットの海を漂い、大体毎週日曜日にどこかの海岸線に辿り着き好き勝手本を紹介する、架空本屋「電子書房うみのふね」、今日はこちらにやってきました。
(※というのをちゃんと日曜日に書いていたんですがあまりにもドタバタと忙しかったのとメンタルが死んでいたのでなかなか更新すらできていませんでした。詳細は死にかけていた朝の記録1217-1223をどうぞ)

 一気に寒波がやってきましたね。冬というのは肌を突き刺すような寒さで、頬で感じるものだということがすっかり頭から抜け落ちていました。寒がりにはなかなかしんどい季節ですが、雪景色は好きですし、閉じ込められたような冬という概念は好きなのです。同じようなことを夏にも感じています。過ごしやすい季節が遠のいていくのがなかなかつらいですが、寒い季節を越えてこそ桜が力強く咲くように、野菜が美味しくなるように、力強く堪えて越えてゆきたいところです。身体を暖かくして、本を読みながら。

 さて、今週のテーマは「読むとモチベが上がる作品」です。
 モチベーションにも様々な形があり、何に対するモチベーションを求めるかは人によりけり、タイミングによりけりでしょう。私はこの通り字書きで、文章を書くのが好きで、たとえ絵を描いていても日記ばかり描いていても時々エッセイを書いていても本筋は小説書きでありたいと思っていて、でも小説を書くにはそれなりのエネルギーが必要になります。辛い時も多々あります。むしろ正直しんどい時間の方が長いんじゃないかと思うのですが、そういう中で読むと、物語を書く、そのことについて自分なりに真摯になれる本がありますので、紹介します。あとは、勉強に関してのことを。


「とにかく散歩いたしましょう/小川洋子」

 小川洋子の書く小説が好きですが、彼女の書くエッセイもまた好きです。エッセイを読むと、どんな生活やどんな思考からあの物語が生まれてゆくのかを感ずることができるから。
 この本はそんな小川洋子のいくつかエッセイの中で初めて手に取った本で、なんでこれを取ったのかはまったく覚えていないのですが、表紙のベージュのラブラドールの絵が可愛らしい本です。とにかく散歩いたしましょう、とは、小川洋子が飼っていたラブラドールレトリーバーのラブが語っていた言葉です。散歩が大好きなラブと共に生活する様子や、本に関すること、物語に関すること、日常で出会う気になることごとが小川洋子の目線で語られる中、ラブは本の中でますます老いていく。
 とりわけ小説を書く、ということに関する部分には、背筋が伸びるのです。

 一つ、小説を書きはじめる。もちろんその時、他の誰かの作品を真似しよう、あの場面をこっそり頂戴しようなどという気持は一切ない。それどころか、かつて誰も書いたことがないような小説を書いてやろうじゃないかと意気込んでいる。
 少しずつ風景が色づき、登場人物たちが立体的な姿を現しだす。風の気配や、彼らの息遣い、ささやかな仕草も伝わってくるようになる。自分の胸に浮かぶこの物語を一つの形にして残そうと、私は一生懸命に書く。
 ところが物語の森の奥深くへ分け入って行けば行くほど、登場人物たちが私の手の届かない場所をさ迷いはじめる。冷たい沼の底を漂ったり、洞窟の暗闇に横たわったり、霧の中に身を隠したり、作者を置き去りにして、自らに最もふさわしい場所を見出す。
 私は汗だくになって彼らの跡を追う。書き出しの頃は間違いなく、私が彼らに言葉を与えていたはずなのに、いつしか私の方が彼らの言葉を聞き取ろうとして必死になっている。自分の頭の中で作り出した人物たちが、なぜか私など行ったこともない遠い場所から、はるばる訪ねてきた人のように感じられる。
 この人たちは私が作ったんじゃない。私が生まれるずっと前から既にここにいたのだ。ようやく、そう気づく。一生懸命に書く、という意気込みが、一生懸命に聴く、と変わってからが、ほんとうの小説のスタートである。(とにかく散歩いたしましょう P42-43)

 こうした部分を読むたび、人の小説を書くという行為についての心情に触れるたびに、納得と、烏滸がましくも共感と、そして同時に尊敬の念を抱く。人によってその形は異なるけれども、小川洋子の言葉は何故だかすっと心に入る。そのたび、まだまだだなあと溜息をついては、自分は自分として物語を紡ごうと、違う場所で静かにまた文章と向き合おうと思えるのです。
 他のエッセイに関してもそうした物語に対する姿勢に勇気をいただくのですが、今回はこの一冊を。


「英語日記BOY/新井リオ」

 これは小説というか、もっと全般的な勉強に関して。
 若い方で、バンドでギターボーカルもしているグラフィックデザイナーである著者は、バンド活動としてアメリカでライブを行うことをきっかけに英語学習にのめりこみ、やがてはカナダへ語学留学をしにいきますが、そのやり方がとても面白くて、一般的に単語を覚えるとか文法を覚える、ということではなく、その日あったことや自分の伝えたいことを英語で書く、英語で喋る、つまりは英語で書いた日記をベースとして学んでいくということについて書かれた、学習方法についての本です。
 ただ日記を書くだけではなく、彼の目標はネイティブのようにすらすらと英語を扱えるようになることなので、ネットを通じた英会話レッスンでスピーキングを練習し、英語日記を使って伝えるための英語を訓練するといったことに重点を置いています。
 この本読んで何が凄いかって、自分がどうなりたいかという目標を明確に立てて、それに向けてどうしたらいいのか、漠然と学ぶのではなく、自分の頭で考えて、(当時学生ということもあり)さほどお金もかけずに取り組んでいるという、その思考の動きがよくわかるということです。人間、考えなきゃ何も得ることはできない、逆に考えて行動すれば多くのことを得られるという事実を感じられる、努力の重要性について叱咤激励をもらえます。
 ただ、とうの私は、この本を読んだ当時めちゃくちゃに触発されて英語日記やらなんやら始めてみたものの、結局続かず。
 久しぶりにぱらぱらと読むとやっぱり刺激的なので、また挑戦しようと思いながらも、その波は高く上がることもあれば凪ぐこともあり、そうした繰り返し。
 どうしたら続けられるのか……モチベは上がるものの、モチベを継続できていないので、そこが難しいところですよね。もちろん、継続についても作中では触れられているのですが。彼が苦労に苦労を重ねた試行錯誤の末に行き着いた方法をつまみ食いみたいに教えてもらってる本であり、そこからどうしていくかは結局のところそれぞれに委ねられるのでした。だから甘えんなという話で、当たり前なんですけどね。
 ……もう一回、頑張ってみようかなあ……(一体何回目のことやら)。


 ライトなラインナップとなりましたが、いかがでしたでしょうか。
 他にも個人的には「夢をかなえるゾウ」も人生変わりたいと思う時のモチベーションを上げる本として筆頭に上がってくるのですが、確かどこかの「うみのふね」で紹介した覚えがあるので今回はほとんど省略です。
 生きていくだけで精一杯だと生きていくモチベーションを保つにも苦労しますが、世の中でそれぞれの形で課題や生活に向き合っている人たちの言葉に触れると、自分も頑張ろう、という気持になれるのかもしれませんね。
 小説のモチベを上げる本として今回は小川洋子のエッセイをあげましたが、正直、日々の読書で常に触発されます。良い文章、面白い小説に出会うと、それ自体が活力を与えてくれます。それは字を書く行為だけでなく、生活にも。だから本をこれからも読んでは、常に力をもらっていくのだと思います。

 では、今日はこのあたりで。来週は遂に今年最後の「うみのふね」開店になる、予定です。テーマの続きとして「続きを待ち続けているシリーズ作品」か、年末ネタをお送りします。もしもご縁があれば、来週もどこかの海岸線でお会いしましょう。それでは皆様、身体を暖かくして、ゆったりと今日も読書を楽しみましょう。

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小萩うみ / 海
たいへん喜びます!本を読んで文にします。