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魔法世界はずるい 作品世界に暮らす妄想が楽しい作品

 どうも、小萩です。毎週日曜、ネットの海を漂い好きな本を紹介する架空電子書店、「電子書房うみのふね」が今日もやってきました。今日はこちらの海岸線、お会いできて光栄です。

 今週のテーマは「作品世界に暮らす妄想が楽しい作品」です。

 本を読むと作品の中に没頭しますよね。傍観者として世界を堪能し、描写に載せられる登場人物の動きや台詞を想像し耳を傾ける。現実世界から一度離れて、本の中に心を委ねるのは楽しいものです。

 そんな中、作品世界に暮らすとなると、ある程度その世界観が構築されていると妄想がしやすい。かなりメジャーなところにはなってくるのですが、王道に勝る物なし、といったところです。


 全世界に愛されしハリーポッターシリーズ。

 もうね、王道すぎて王道すぎてやっぱり超王道なんですが、もうね、ファンタジー、魔法の世界、それはもう、妄想がはかどりますよ。

 みなさん、ハリーポッターシリーズは何巻が一番好きですか? 各巻で壮大な冒険や事件が起こり知恵や勇気がキャラクターに試されます。私の周りではヴォルデモートと対峙し遂に死者が出るまでになっていよいよ物語が大きく動き出す炎のゴブレットがけっこう目立つ印象で、そこから戦争激しい最終巻まで展開部が凄まじく(そして心折れる)(ヘドウィグ……)圧巻の小説ですが、私は一巻賢者の石が一番好きです。

 キャラクターも少なく、まだ友情関係が構築しきれていない浅さは序盤なのでどうしてもあるのですが、なにが好きかというととにかく設定が好きで、一巻は魔法世界がどういうものかというのをハリーに語りかけながら同時に読者に語りかけてくるのでそれはもう楽しいじゃないですか、ダイアゴン横町で買い物するシーンとか、楽しいじゃないですか! 杖を選ぶシーンなんて最高じゃないですか!それ以降でも勿論横町は出てくるし個性豊かな店が小出しにされてくるけれども、好きなんですよね。いじめられているシーンからの解放、そしてこれからどんな世界が待っているのだろうという昂揚感に満ちあふれていて。

 多分、日常シーンが好きなんですよね。自分で書いたりする分には展開部分が書いていてとても楽しいのですが、読む分には日常をどれだけ豊かに書けているかで小説の印象が随分と変わるように思っていて(特に長編小説)、この人は普段何を食べて何を買ってどういう場所に住んでいてどのようにして生きているのだろうというのが浮かんでくるような小説は、豊かだなあと思うし好きなのです。

 一巻はそうした、ホグワーツを中心とした魔法世界での日常が彩り豊かに描かれていて、だからこそこの日常生活やそれまでの当たり前がどんどん破壊されていきながらも勇気を持って立ち上がり戦う後半が生きていくんですが、不穏がありつつもまだ始まったばかりの一巻はただわくわくで、楽しい。子供の頃に読んでわくわくした記憶が濃厚ということもあるんでしょうね。行きたい、魔法世界。争いには巻き込まれずに穏やかに生きていたい。

 住みたいと思うのは映画の力もあるでしょう。本の中の世界を堂々と構築する映像が、また想像力を刺激する。これがあの世界なんだ、と理解して、ますます恋しくなる。

 しばらく行ってませんが、USJのハリーポッターエリアは素晴らしいですよね。まさに自分がその世界にいるような雰囲気があって。ああいう物語の世界を現実に起こすというのは本当に良い。杖は買ったことないしローブも買ったことないけど。今やいつでも空いてますが百味ビーンズは並んで買いました。

 いつかイギリスに聖地巡りに行きたいものです。


 他にも上橋菜穂子作品などは、その世界の一般人としてしか生きていくことはないでしょうが、猛々しくもどこまでも素朴で獣との深く共存し美味しい料理がたくさん存在する厳しくも豊かなその世界に住んでみたいと思うし、ドラえもんの世界にはいつだって憧れる。十二国記は、物語としてはものすごく面白いけど過酷なので一般人が住むにはしんどいかもしれない。簡単に騙されて路上をうろうろとたむろする未来しか見えない。そういうのも、作品世界で暮らす妄想ですよね。

 逆に暮らしたくないのは「華氏451度」とか、本の無いディストピア世界ですね。その世界に行ったら、簡単に本を手放してしまうのだろうか。どんどん身近なものを失っていく「密やかな結晶」の島もなかなか恐ろしかったですが。最近新作が出た八咫烏シリーズも、読む分には楽しいしとても面白いのですが住むとなるとなかなか地獄な気もしていします。殺されそう。

 今日はここらで。いかがでしたでしょうか。ひねりのないストレートな本ですが、名作であることには変わりないなあと思うのです。
 来週のテーマは「夜中に読みたい作品」です。夜中に自分が実際に読んでいる作品、でも良いかもしれませんね。
 ではでは、みなさま楽しい読書生活を。来週もご縁があればどこかの海岸線でお会いしましょう。

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小萩うみ / 海
たいへん喜びます!本を読んで文にします。