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夜の散歩
小天体
極小の天体が暗闇を疾走。
彼方で膨張を続ける宇宙のまたたき。
地球に引かれて公転するわたしたち。
途方の無い宇宙のいのちに比べれば、塵にも満たないわたしたちのたましい。
いずれ大気に衝突し、かたちを変えて炸裂。
無音に傷をつける、しかし無意味の連続。
うまれてはしぬ物質の律動。
消滅する、刹那の話。
同時にいつかうまれる、なにものかの前世の話。
もう間もない。
地球
男の子と女の子はぼんやりと夜空を眺めながら夜の散歩をしている。虫と風が歌って、暗闇を引き立てる。巨大な光と僅かな光が空で瞬いている。誰かが名付けた星がいつまでも光を鳴らしている。
線を描いて星座を想像し、夢のような物語として身近なかたちに置き換えてきた。存在すべてに意味を成そうと試みてきた。あるいは星から自分たちの位置を知ろうとし、時間を知ろうと挑んできた。大気圏を抜けて振り返った時地球が本当に青い惑星だと知るように、宇宙に意識を向けることでじぶんたちのかたちを確かにしてきた。今、地球に縛り付けられた彼等はじぶんたちも宇宙の一員であることに無自覚だ。空を仰ぐとき、宇宙と一つになる。
さっと一筋のきらめきが沈黙を横切った。
「あっ流れ星」
歓声が晴れわたる夜空に吸い込まれた。
二人は願う。小天体の消滅に向けて。
そうして宇宙に交信する。
了
「夜の散歩」
三題噺お題:流れ星、前世の話、夢のような
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