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小萩うみ / 海
2021年1月16日 19:41
あらすじ 2011年3月11日、春香は親友であるあーちゃんを喪った。以来強い喪失感を抱き続けたまま生きていたが、津波の夢を見た六年後のとある日、同棲している夏希に宮城に行きたいと話を持ちかけた。あーちゃんの故郷である女川へと向かう旅で、爪痕と復興を同時に見つめながら、春香はあーちゃんの生きていた断片を探すように海へと近づいていく。その先で、彼女が見つけるものとは。いつか声は波を渡る
あらすじ 河野の耳の裏に秘密がある。生まれつき、その暗がりにはエラがあった。幼少期の経験からその存在をひた隠すようになった河野は、しかし世界のどこかには同じエラを持つ人間がいると信じている。どこか息のしづらさを感じながら、密かに周囲の人間の耳の裏に視線をやるが、仲間を見つけることは叶わずにいた。そんな中、高校で同じクラスになった一青の耳の裏は、どうしても見ることができないでいた。 魚たち
2021年1月16日 19:40
あらすじ 毎年お盆におばあちゃんちを訪れるひなこは、お母さんにもお父さんにもおばあちゃんにも言っていない秘密の場所を訪れる。夏の陽光のもと、河川敷では、村に住む少年昴に会える。金星の大接近を待ちわびているひなこは、天体に詳しい昴に教えてもらいながら、星の世界に思いを馳せる。夏の大三角形、カシオペヤ座、北極星ポラリス、そして少年と同じ名を持つ冬の星、昴。星を巡る会話を重ねるごとに、ひなこは昴の
2020年5月28日 20:39
その告白は罰ゲームだった。 超絶地味な昆虫類系男子、と区分していたその人に、明日の放課後告白することとなった。男女入り交じったカラオケで盛り上がっていて、一番点数が高かった人が低かった人に命令する、という王様ゲームのようなことをしていた。王様の命令は絶対で逆らってはならない。たかがゲームだがされどゲームで、破れば空気が読めない奴として認定されるのだった。 憂鬱でならなかった彼女は、しかし
2020年5月23日 20:10
瓦礫の重なる森のごく一端で、雪が降り始めていた。 褪せた緑の針葉樹の群衆が騒いでいるのを、私は耳で感じ取った。 亡き師匠から教わった魔法の決まりごとは一つ。相手を傷つけることを目的としない。 その規則に乗っ取って、師匠は私に魔術を教えた。則ち、万物に耳を傾けるということであった。無数の音と声を厳格に聞き分け、取捨し、ただひとつ語りかけるべきもののみに声をかけるように思考の欠片を渡す。魔力と