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小萩うみ / 海
2020年6月30日 20:10
2020年6月29日 22:03
2020年6月26日 21:57
2020年6月25日 19:27
2020年6月24日 15:35
2020年6月23日 20:07
2020年6月22日 20:41
2020年6月20日 23:10
聞こえる。鼓膜を微細にふるわせるかの音は、五月雨か。それとも今際の吐息か、あなたの心臓か。 枯れて老いた身体をうるおす、永久の音である。 悔いても戻らぬ時間は絶えず進み、いずれあなたを置き去りにする。 決して、あなたを一人のままにはしない。 わたしはやがて土に還り、微細に分解され、植物に与えられ、花を咲かせ、種子に宿り、空を飛び、あるいは虫に運ばれ、いずれどこかに着地し、再び芽吹き、いず
2020年6月18日 21:22
降りしきる雨が海にいくつもの波紋を生み出しては、白波に呑まれて飛沫があがる。 戦闘は激化し、真夜中も爆撃は絶えることなくこだまし、指先に迫り、またおのおのの身体を抉った。装甲を貫く徹甲弾が命中し、船は激しい揺れに見舞われ、闇夜にあざやかな炎があがった。炎の光に晒されて、ひとのあらゆる姿がしかばねとなって転がっている。辛うじて生き残ったひとが、血と弾薬の臭いに鼻を折られながら、必死に叫んでいる。
2020年6月16日 23:01
天気良好。感度良好。野外フェスは正午を過ぎても熱気が収まらない。 少し距離がはなれたメインステージからの、とどろきのようなものすごい歓声が聞こえてくる。 気温は四十度に迫る勢い。既に熱中症で運び出されたお客さんも見かける。水分補給をしっかりとるように運営は積極的に注意喚起しているけれど、追いつかないのだろう。気温もだけれど、アーティストのパフォーマンスに興奮して全体的に十度くらいは体感温度が
2020年6月13日 19:17
※この小説は、他の短編「偽物ラヴァーズ」を「彼」視点から書いたものです。 単品でも読めますが「偽物ラヴァーズ」を読んだ後だとより深く楽しめます。 自分が冴えない人間であることは、自分が一番よく理解している。 掃除の時間にさりげなく、放課後の呼び出しを受けた。聞き返す前に、彼女はそそくさと離れていって、友人との輪に戻っていった。自分の耳を信じ難かったが、馬鹿正直に校舎裏へと向かった。こんな
2020年6月11日 20:34
危ないから入っちゃいけないよ。山に囲われた村の婆は、いつも子供達にそう言い聞かせる。 村のはずれに取り残された廃工場は鉄格子で囲われ、入り口も硬く閉ざされているという。鍵をかけられたまま放置され続けている。人によっては、かの戦争において兵器を創っていた場所で不発弾が捨てられていて危険だともいうし、幽霊が出没するから怖ろしいともいうし、野犬の住処と化していて立ち入ればたちまち喰われてしまうともい
2020年6月9日 15:59
小学生の頃である。長いRPGを進めた先で、少年は子供心に大きな幻滅を経験した。 世界を脅かす悪の親玉、魔王を倒すために、村人Aであった主人公は旅をする。木の棒から始まったあまりに弱々しすぎる武器を片手に、雑魚敵を丁寧に倒しつつ、賛同する心強い仲間にも出逢いながら、各地に点在するボスを倒す。主人公は少しずつ強くなっていく。やがて強大な魔王にも太刀打ちできるほどの巨大な力を得て、ラストダンジョンへ
2020年6月6日 20:38
乾杯の音頭を取ってから一時間ほど。程良くアルコールが回り、集合した彼等の表情は火照っていく。 狭い居酒屋の座敷で五人は机を囲んでいる。中学時代の同期は成熟し、じきに大学を卒業するというタイミングでの集合である。といっても、全員が来月卒業というわけではない。高卒で就職した者もいれば、受験浪人の影響や留年して一年遅れの者もいる。現役で大学に合格してすんなりと卒業まで漕ぎ着いたのはこのうちの二人だけ