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DeepDiveCamp in South Africa 南アフリカ、タンザニアレポート

DeepDiveCamp in South Africa、開催しました!
今回もアフリカマーケットのパートナーであるUNCOVERED FUND社との共催で、
南アフリカのヨハネスブルク、ケープタウンのスタートアップをはじめとした現場視察をアテンドさせて頂きました。


南アフリカの歴史的背景

アパルトヘイト政策により未だに経済格差が色濃く残り、ジニ係数も世界一である南アフリカ。
ケープタウンはサンフランシスコのようなオシャレエリア、ヨハネスブルクはニューヨークのような街並みとも錯覚するようなエリアである一方、その歴史が持つ重みは凄まじいです。

アパルトヘイトミュージアムのエントランス

政策の終焉は1994年。たった30年前のことで、ちょうど30周年をお祝いする飾りなどが一部の街中にも出ていました。
現地の1994年以降に生まれた世代はBorn Freeと呼ばれており、今回一緒に本企画を遂行していたメンバー盟友のPapamaは1995年生まれ。
彼もTownshipというインフォーマルなエリアの出身で、勉強を頑張ってUniversity of Cape Townに奨学金で進まれた超優秀な仲間。
彼の世代はアパルトヘイト政策により友人界隈の多くが母子家庭だそうです。
(ちなみに彼自身も幼い頃から両親がいない境遇で親族の家庭で育ちました)

流通視察でマーケット解説をしてくれたPapama

アパルトヘイト終焉から30年経過した今でも、経済格差は大きく広がる中、そこに機会を見出して挑戦するスタートアップなどを訪問させて頂きました。

また今回は未電化地域にランタンを日払いで提供するWASSHAさんや、ダイキンさんとのJ Vとして始まったエアコンのサブスクリプションサービスを提供するBaridiBaridiさんが拠点を持つタンザニアにも訪問させて頂き、複数のスタートアップに訪問。

昨年も(アカウント消えちゃったけど、、)アフリカのスタートアップトレンドの投稿をさせて頂いて反響が多かったので今回もいくつかの現地スタートアップの傾向で気づいた点をレポートさせて頂きます。

ちなみに昨年レポートしたキートレンドはこちら。

  1. 黒字化優先

  2. アセットライト

  3. コマース革命

  4. 全てにフィンテック

  5. 利率とスピード

  6. 労働者の所得を数倍に引き上げる/コストが大幅に引き下がる

  7. ソーシャルインパクトを明確に

  8. カーボンクレジットが事業化している

  9. 低所得者に敢えて展開するマーケティング

  10. Eモビリティ革命!日本企業も実は活躍している

  11. ビジネスだけではまだまだ解決されない課題も

上記は引き続き大きな流れではありながらも、いくつか上記に加えたいと思います。
また上記のアフリカレポートは昨年報告会で用いた資料があるので、ご興味ある方はコメントやメッセージ頂けたらシェアさせていただきます!

https://x.com/umi_hey

ではアフリカレポート2024版は下記です!

1.低所得者市場の集約とデジタル/データ化による市場の顕在化

インフォーマルセクターと呼ばれるようなエリアが多くを占めるTownshipなどのエリアは、公的に土地を所有しているのではなく、その場にとたん屋根の家を建てて生活しているエリアが並んでいるようなイメージです。

高級住宅街の狭間にも現れるTownshipエリアの一部

住所もなければ公的に存在することが証明されていない家が多くあります。そんな場所が南アフリカでは多くを占めており、小売店なども当然その中にあるわけですが、そこにPOSシステムなどがあるはずもなければそのマーケットの状況を俯瞰し可視化することは不可能でした。
また当然治安も悪いエリアであり、積極的にそのエリアでの事業展開をしようとするプレイヤーもいない中、確実にその市場は大きくなってきています。

YeboFresh CEOのJessicaがTownshipにて現地の様子を教えてくれました

今回訪問したYebo Freshは、創業者がまさにこのインフォーマルセクターのあるTownshipエリアにて働く女性たちが、毎日のように数十キロにもなりそうな大量の食品を、満員の乗合バスで鮨詰めになりながら運ぶ姿を見て、彼女たちに直接食品などが届き、生活が少しでも楽になるような事業を展開したいと始めた事業です。
こういった低所得者エリアに特化した、ローカルの店舗に商品を配送するUber Eats(食品や生活用品全般を対象)のようなサービスと思って頂けたらイメージしやすいかもしれません。

彼女たちの事業が素晴らしいのは、どう考えてもビジネスを展開するのが難しいであろうこのエリアで、愚直にローカルの店舗との信頼関係を築き、現在5300ものローカル店舗をネットワークしていることです。
元々は卸売のようなモデルで、少しだけ商品価格にフィーを乗せてトランザクションで収益化していたモデルからピボットし、商品価格に一切フィーはのせず、大手メーカーとの契約により、彼らの商品をこのネットワークに卸していくことでのマージンをとっていくことや、商品別の販売データを収集、AIにて解析し、そのエリア別や商品別などの購買傾向のデータを販売していくことでマネタイズをしています。

YeboFresh概要
YeboFreshビジネスモデル


また見学させて頂いた提携先の卸問屋は、小売店に商品を卸す問屋になるのですが、そこだけで月間日本円にして二億円ほどの流通高があり、インフォーマルセクターのビジネスだからといって決して小さなマーケットではないことが分かります。

出荷前の商品が所狭しと並ぶ卸業者の倉庫入り口

全体で15万ほどあると言われる小規模な小売事業者たちのマーケットが、積み上げていくと非常に大きなものになることが分かるかと思います。

あまりにも小さく分散しすぎていたこのマーケットを、集約して顕在化させてデータ化することで、新しい市場創造をしていくこのポテンシャルを感じて頂けるのではないでしょうか。

2.BNPLの次にくるのはSNBL?

話題は少しタンザニアをはじめとした東アフリカマーケットへ変わります。
同じく低所得者市場の顕在化という意味で、SNBLの市場の今後の拡大が見られると思われます。BNPLはお聞きになられた方も多いのではないかと思いますが、Buy Now Pay Later、つまり後払い決済のサービスです。
今この瞬間はお金がないけど商品が欲しい、そんなユーザーが後払い決済を選択することで商品購入が可能になります。
そんな中最近注目を集めるのがSNBL。Save Now Buy Later、という枠組みになります。タンザニアのスタートアップ、Tunzaa Fintechは、特定の商品を購入するために、少しずつお金を積み立てておけるサービスになっています。
日本だと考えられないかもしれませんが、タンザニアでは貯蓄の文化がありません。現金を持っていると周りの親戚から色んな理由でたかられてしまい、すぐにお金が無くなってしまうのが常だそうです。なので、なるべく現金を持たないようにして、資産家もすぐに不動産など現金ではないものに投資する傾向にあります。

TUNZAA Fintechのウェブサイト

低所得者の方々も現金を保有できないため、高額な家電製品などの商品を買う際には、お店にお金が貯まるまで預かってもらい、全額貯まったら商品を引き取りに行く文化さえあります。
そこで彼らはそのプロセスをデジタル化するサービスを展開しています。自社でコマースプラットフォームを展開しながらも、イメージとしてはAmazonのようなECプラットフォームやリアルの小売店などと連携して、この決済システムをインストールしていくことでビジネス拡大を目指しています。ケニアでも同様のサービスを展開するスタートアップが見られ始めており、今後の市場拡大が見込まれます。
国にもよりますがアフリカ域のクレジットカード保有率は10%に満たない状況です。そこを補填するかのように生まれたBNPL、そしてそのBNPLでさえなかなか与信が通らないマーケットはSNBLを活用する、といったように、徐々にフィンテックサービスのターゲットとなる対象の裾野が広がっているのが分かります。
人口が多い分ここの裾野を取りにいくことができるとインパクトは絶大です。これからの動向を注視したいと思います。

3.スタートアップが社会インフラを創る

ご存知の通りアフリカではまだまだ社会インフラが整備されていません。
電気ガス水道などのインフラが整わない状況がまだまだ多くの国々、エリアで問題になっています。
タンザニアでは15年前まで国民の11%程度しか電気へのアクセスがなく、今はだいぶ改善されてきているもののまだ45%程度に留まる状況です。
タンザニアの電力は国営企業であるTANESCO(Tanzania Electric Supply Company Limited)
が展開しているものの、なかなか事業がうまく運んでおらず、インフラ整備がままならない状況です。
過半数の方が安定した電気へのアクセスがない中で、WASSHAさんは未電化エリアにランタンと電気を供給するサービスを展開しています。

オレンジのランタンを屋台に引っ提げて、暗くなってからも商売ができるように準備している

ここでキーになるのがエージェントと呼ばれる彼らのパートナーたちです。エージェントは配布されたソーラー発電機を元にランタンを充電します。そして、その充電されたランタンを顧客に配布する代理店機能を果たしていくのです。
そうしてユーザーは自宅で使って仕事したり屋台の電源として活用したりしています。

お店の中でランタンを充電する雑貨屋さん
美容室で充電されるランタンたち

このエージェント数がとにかくすごい!
エージェントたちは村や集落の長のような方が地域では受け入れりことが多いが、都市部は多くの方に開かれている。
雑貨屋、美容室、などなど、様々な方々がランタンのエージェントとして活躍されています。
詳細は記載できないですが、ものすごい人数のエージェントがタンザニアをはじめとした展開国に存在し、彼らがこのサービスを広げています。
そして更にすごいのがそのマネジメントシステムが現地メンバーだけでまわっているということです。
余談ですがアフリカ域の人材課題の一つがミドルマネジメント人材が少ないことです。
そもそも経験者が少ないのもそうですし、育成も簡単ではありません。
そんな中現地メンバーだけで事業展開が出来ているのは本当に素晴らしいです。

このように、社会インフラとなる部分をスタートアップがビジネスモデルを創り出すことで担っていくという現象が、今回の電気に限らず様々なシーンで見受けられます。

4.ラストワンマイル革命 -住所がなくても荷物が届く-

先ほども触れたようにTownshipのエリアなど住所がないエリア、また合わせて治安や安全面に課題のあるエリアはまだ数多く存在します。世界のEC化比率が20%程度まで高まる一方で南アフリカのEC化比率は1%にも満たない状況です。その原因の一つが上述のような理由でのラストワンマイルの難しさです。

ラストワンマイルを支援するPargoの配送パッケージ

クロネコヤマトさんなどのような物流会社が網目を貼っているのは世界的にも珍しく、届けられないためにEC化が進まないため、南アフリカのシェア80%近くを誇るEC最大手のTAKE A LOTは、自社でのデリバリー網を広げることこの課題解決に挑んでいます。
一方でみなさんご存知のAmazonも最近このマーケットに参入しましたが、物流網をいきなり全て整えるのは難儀です。
そこでこの課題を解決するために立ち上がったのがPargoというサービスになります。
Pargoは日本でいう宅配便のコンビニ受け取りが可能なように、荷物の受け取りスポットをプラットフォームにしているサービスです。ドラッグストア、カフェ、レストラン、スーパー、場合によっては学校や公民館など、南アフリカ内約4500箇所以上での荷物受け取りを可能にするプラットフォームになっています。
店舗や公共施設を登録することで、住所が特定でき、荷物の配送を可能にするだけではなく、配送先の箇所を集約することで総配送数の効率化も図っていくことで物流業者にとってもポジティブな仕組みになっています。
荷物が指定のスポットに届いたらユーザーに通知がいき、それを受け取ったユーザーが荷物をとりに行きます。もし荷物の中身が間違ってたり破損していたりして返品する場合もこちらで同時に可能になります。

荷物の受け取りデモをドラッグストアの店頭でしている様子

また当社は同様のシステムをネット販売を推進したいスーパーやドラッグストアにも展開することで小売事業者を荷物の受け取りポイントのみに留めることなく、事業顧客にもしております。

Pargoの会社概要
Pargoのビジネスモデル

5.南アフリカ発、グローバル。健康でオシャレなブランドの拡大

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、南アフリカのケープタウンは世界の住みたい街ランキングで1位になったことがあるほどの素敵な都市です。(差別の歴史の上に出来上がっていると思うと少し複雑な気持ちにもなりますが、めちゃくちゃ綺麗な都市です)例えるならサンフランシスコやシアトル、シドニーのようなイメージになります。
そんな街から始まった飲料ブランド、BOSが南アフリカ発、世界への挑戦を仕掛けています。

BOSの商品たち。美味しいフレイバードルイボスティードリンクが魅力
ルイボスティーの茶葉も販売されています。

皆さんルイボスティーはご存知でしょうか?ノンカフェインであることから妊婦さんへのギフトなどに贈られたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
実はルイボスは南アフリカだけで栽培される植物でして、世界のルイボスティーの原産は全て南アフリカです。
元々コーヒー関係の事業を展開していて、それをRedbullを運営する企業に売却した代表が、南アフリカで新しい事業を展開すべく、南アフリカならではの健康的なお茶であるルイボスティーをブランド化して展開していくことを決めました。
とにかく南アフリカのルイボスティーは美味しいです!抗酸化作用もあり、ノンカフェインであることで親しまれている側面もあるかとは思いますがシンプルに美味しい。
いわゆる茶葉の市場でいくと、紅茶対ルイボスは50:50ほどのマーケットシェアになるほど現地では親しまれているお茶になります。
そんな市場が遥か昔から存在しており、当然大手お茶メーカーもひしめく中、どうやってBOSは成長を遂げてきたのか。
そのヒントは、
① 最終製品として健康的でカジュアルなブランディングを仕掛けたこと
② 競合市場をお茶市場から清涼飲料水市場に変えたこと
にあると思っています。
ルイボスティーは南アフリカでは茶葉で飲むのが当たり前な商品である一方で、アメリカなどでは最終製品としてのアイスティーなどのドリンクとして販売されています。
当然南アフリカでも茶葉で暖かいお茶を淹れるのが当然であり、アイスティーとしての文化は多くなかったところ、さまざまなフレーバーアイスティーを持ち込んだのがBOS。打倒リプトン!というところで市場シェア2位までこの10年で登り詰めてこられています。また驚くべきはDay1からグローバルブランドとすることを目指しており、既に全体の売上の30%は欧州(主にはフランスとドイツ)での売上となります。
今はアメリカとオーストラリアにも進出し始めており、日本をはじめとしたアジアでの展開も見据えているそうです。
ちなみにルイボスティーの輸入額で言うとなんと日本が世界で1位!
日本企業との協業推進も我々で手がけていけたらと思っております。
余談ですがBOSの投資家にはサッカー好きなら知っている、元マンチェスターユナイテッドの監督、ファーガソンさんもエンジェル投資家として入っている会社です。
オーガニックで健康的なルイボスティーを南アフリカから世界のブランドへと広げていく挑戦はまだ始まったばかりです。見逃せません!

BOSの会社概要
BOSのビジネスモデル

<番外編>南アフリカのメンタルヘルス事情

アパルトヘイト政策の名残を受けて、所謂ホワイトカラーの方々でも精神的な負担が大きく、鬱症状をはじめとして、14-24歳までの若年層も、4割近くが鬱経験やパニック障害の経験があるとも言われており、非常に大きな課題になっています。
一方でメンタルヘルスの治療を受けられるのは15%程度に過ぎません。社会においてリーチする術がなかなかなかったり、コストとしてもそこまで負担できる方々が多くないのが現状です。また、そもそものメンタルヘルスにかけられる医療予算は総医療予算の僅か5%にしか過ぎず、そこも課題になっています。
スタートアップのOllie Healthはまさにこの課題に真っ向から立ち向かうスタートアップです。
自社で独自のLMMを開発し、なるべくユーザーに寄り添うコミュニケーションをとりながら、ユーザー個別のガイドとして活躍しています。
ユーザーの希望を聞きながらオンラインでプロのカウンセラーとのマッチングをしたり、apple watchなどのデバイスから生体データもとりながら日々のパフォーマンス状況なども観測します。
南アフリカから始まり今では17カ国で展開。法人向けの福利厚生サービスとして展開。
企業がメンタルヘルスのサポートをするための予算は設定しながらも、電話相談窓口などに予算が割かれていて、実情としては誰もつかえていない、というような課題にアプローチしています。
面白かったのは、特に若年層の利用が多いことや、AIへのチャットでの相談時間が想定よりも長く、AIだからこそ気にせず本音を出せる傾向があるという話が出ておりました。

Ollie Healthの会社概要
Ollie Healthのビジネスモデル


ちょっとしたメモのつもりが大分長くなってしまいましたがいかがでしょうか。
社会課題がまだまだ大きいこのアフリカの地では、それ故にスタートアップの起こすうねりが非常に大きくなっています。

まだまだ流通視察の様子など、書ききれないことも多いのですが、長くなってきたのでこの辺で!!

引き続きこういったアフリカのスタートアップや市場のリアルを知りたい、またはビジネス展開をしたい、という方は是非ご連絡ください!!

共にアフリカへの橋を架けて参りましょう!!

<余談:ケープタウン>
前述の通り、ケープタウンはめちゃくちゃ綺麗です。
街並みもそうですし、海も近く、気候も良くて、景色も良く、ご飯も美味しくて、主にヨーロッパからの移住者が非常に多いエリアになります。地元民からすると首都のヨハネスブルクの方が給与水準は高いものの、家賃はケープタウンの方が5倍ほどの金額がするというほど、家賃が高騰してしまっております。背景として観光客を相手にしたAirBnBが23000件ほどあり、これが他欧米都市と比べても多い件数とのことでした。
ケープタウンは特殊な市場ということもあり、完全に独自経済圏が生まれてきているのが垣間見えます。

自然と気候が素晴らしい場所です

<余談:フードイノベーション>
ケープタウンにあるフードイノベーション施設も視察してきました。
設備が非常に整っており、他の国のそれとはまた違う特徴があり面白かったです!
ここも追ってレポートさせてください!

広がる巨大なシェアキッチン
プロの調理師になるためのレッスンも
キッチンの外には実際に食品の販売が可能な小売エリアも併設

こちらもまた反響が多ければ報告会をやろうと思いますので興味ある方がいらっしゃれば教えてください!!

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