オセロ世界選手権2024の見どころ
はじめに
こんにちは、現役オセロ世界チャンピオンのうみがめです。
来週には元世界チャンピオンとなっている私が、今年の世界選手権の見どころを整理していこうと思います。
オセロ世界選手権の基本情報
大会情報
今年の World Othello Championship (WOC) 2024 は 10/25~27 の3日間、中国の杭州で開催されます。
執筆時点では、22カ国から選抜された80人の選手がエントリーしています。
昨年は98名の選手が参加していたことを思うと、参加者数は若干少ない見込みです。
中国開催ということもあってか、特に欧米の参加選手の数が少なく、有力選手にも欠場が目立つように見受けられます。
日本からは国内タイトル戦を制した5名の選手が参加予定です。
Day 1, 2 は全選手ごちゃ混ぜの予選ラウンド13回戦で、Day 3 の決勝トーナメントの進出者を決めます。
Day 3 には予選上位4名、女流上位4名、ジュニア上位4名が決勝トーナメントに進出し、それぞれ決勝トーナメントを行い優勝者を決定します。
配信情報
中国と日本の時差は1時間なので、日本時間では10:00~20:00で試合が行われます。
アジア開催は日本人にとって観戦しやすい時間帯ですね。
例年注目の対局は Live Othello games で配信されるので、自分も有給休暇を取ってリアルタイムで観戦予定です。
他にも、代表選手の高梨九段がなにかしら配信を画策しているようです。
youtube での配信になるのかはちょっと怪しそうですが、一応チャンネルを貼っておきます:https://www.youtube.com/@Othello_jump
日本代表は大活躍と予想
さて、同じ日本人選手としてはどうしても日本代表の活躍を期待してしまいます。
結論から言うと、今年は日本代表が無双すると予想しておきます。
日本代表選手の実力は折り紙つき
例年、日本代表選手は優勝候補の実力者揃いですが、今年も最強の5人が集まっています。
高梨悠介九段:過去に5回の世界チャンピオンを経験している絶対王者。日本代表は久しぶりですが実力は衰え知らずで、日本レーティングも現在1位。レジェンドすぎて特に語ることなし。
栗田誠矢八段:昨年の世界選手権で3位、予選13戦全勝という驚異的な成績は記憶に新しいです。国内でも常に全国入賞レベルの結果を残しており、私見では優勝候補筆頭。
奈良颯馬七段:昨年の全日本選手権決勝で私を撃破し、初の日本代表権を獲得した若き才能。決勝戦の内容は彼の完勝で、正確な読みに圧倒されました。昔から彼を知っており、個人的に活躍が嬉しい選手でもあります。
木下央子六段:昨年の女流チャンピオンで、過去に2度女流チャンピオンを経験。昔からずっと強い選手ですが、最近より一層結果を残しています。自分が世界選手権に出た2回ともご一緒したご縁があり、一番応援している女流プレイヤーです。
富田陽三段:今年の小学生グランプリで優勝し、代表権を得たジュニアの選手。決勝では昨年のジュニア世界チャンピオンの川副三段を撃破しています。自分の周囲では代表権を得る前から話題になっていた選手で、高段者を終盤の読み合いでねじ伏せた棋譜をいくつも残しています。
と、世界チャンピオン経験者だったり、それを倒した選手ばかりが揃っています。
海外の有力選手に欠場が多数
一方で、先述の通り強豪プレイヤーの欠場が相次いでいます。
昨年の決勝トーナメントに進出した AUNCHULEE Rujipas や BORASSI Michele, 一昨年進出した JUIGNER Arthur や PIHLAJAPURO Katie、他にもヨーロッパチャンピオンの末國誠九段などが軒並み不参加となっています。
逆に中国開催ということで、中国の強豪 SONG Yan 選手の参加は注目ですが、全体で見るとライバルが少ない大会です。
参加選手の少なさは日本代表に追い風
参加人数が少ないことは、実力のある日本代表が予選13ラウンドを戦う上で追い風です。
100人近い参加者がいた昨年の予選では、通過のボーダーラインは9.5勝で、その中でもポイント上位2名でプレーオフが行われました。
一方で参加者が減るとボーダーラインが下がるため、不意の一敗のダメージが軽減されます。今年は9勝でも予選通過できるかも。
事故的な負けに対してリカバリーが効くこと、そうした保険があるおかげで、実力が100%出せるとも限らない世界の舞台で心の余裕を持って戦えることは、実力の高いプレイヤーにとって有利に働くでしょう。
以上のように、日本代表選手の大活躍が見込まれる土壌が揃っています。
世界選手権の個人的注目選手
日本代表についてはすでに紹介したので、注目のマッチアップとなる海外選手を抜粋して紹介したいと思います。
レーティング上位を満遍なくというよりは、個人的な注目選手なので、抜け漏れはご容赦ください。
無差別
SONG Yan : OWC2014での優勝で世界を獲ったことで知られる中国の強豪プレイヤー。日本人7人+SONG Yanの決勝トーナメントの衝撃が印象的。ナチュラルな変化からの腕力勝負に長けた棋風は、今年の日本代表と共通項か。対局中に石を3枚ずつ積んで並べる「万里の長城」は今年も見られるか。
DU Zhouzi:正直にいうと自分はあまりよく知らないプレイヤーだったのだが、中国の国内大会では SONG Yan と互角の戦いをしているように見える、個人的な注目プレイヤー。情報求む!
LI Chun Wan:海外強豪には珍しく(?)オーソドックス寄りの序盤から堅いオセロを打つ常連プレイヤー。2019年のWOCで佐谷七段とPD進行を並べて終わった試合は定期的に語り草になっている気がします。僕はこのタイプのオセロが好みなので、結果を残して欲しいプレイヤー。
EKLUND Oskar:10年ほど前から世界選手権常連の、スウェーデン代表プレイヤー。出始めた頃は脅威ではなかったが、年々強くなっているのを感じ、近年は予選上位に絡んでいる気がする。自分の見る限りでは得意な序盤を使い続けて練度を上げた職人タイプで、そろそろ対策が必要なプレイヤーの一人かも。
DE GRAAF Jan C.:オランダ代表のイカしたおじさん。人の良さが全身から溢れ出している。世界選手権常連の一人だが、正直去年までは中堅選手の印象だった。が、昨年の快進撃やその試合内容は目を見張るものがあり、今大会でも暴れるのではないかと期待している。名前を挙げた中では特に、日本だと珍しいタイプの変化をしてくるプレイヤーかも。
女流
WILLIAM Joanna:過去に三度女流チャンピオンに輝いているオーストラリアのプレイヤー。WOCの出場は久しぶりだが、直近のアジア太平洋選手権では谷田七段に白星をあげており、実力は衰えていないようだ。
DONG Zhen:過去に二度女流チャンピオンに輝いている中国のプレイヤー。2016年の世界選手権では木下六段を倒して優勝している。WOCを含め近年の大会出場記録がないので実力がわからず、怖い…
ジュニア
KOH DING SHENG Calvin:シンガポール代表で昨年度のジュニアファイナリスト。昨年時点では日本の川副三段が圧倒していたが、まだ大会参加歴が短い中で決勝まで進んでいることは注目に値する。ジュニアは成長速度が段違いなので、今年はまた一段と伸びている可能性あり。
DUFOUR Daniel:オランダ代表のジュニアプレイヤーで、昨年もセミファイナルまで進出している。おそらく3回目の世界選手権で、ジュニアではもっとも経験豊富なのではなかろうか。レーティングも順調に伸びており、今年も活躍が楽しみな選手。
おわりに
以上、個人的な見どころとなる選手をピックアップしてみました。
世界選手権前は勝手にこういう妄想をしているのですが、今回はこれを記事にしてみた次第です。
主に個人戦に興味があるのでその話ばかりしてきましたが、団体戦はまあ日本が勝つだろうと思っています。
ライバルとしては中国の層が厚いですが、日本代表の安定感を考えると、なかなか負けることはなさそうかなという印象です。
最後にこういう妄想を楽しむゲームがあるので宣伝しておきます。
この Fantasy Othello では、合計レート制限と各国1名制限を守りながら勝数を最大化するドリームチームを予想するゲームが楽しめます。
注目選手を決めているとより楽しめると思うので、皆さんも自分の推しの選手を見つけてみてはいかがでしょうか?
それでは、大会を楽しみましょう!
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