音に埋もれたい
今月開催予定だった音楽会が中止になった。
このご時世だからなのだけれど
私は所用にてその音楽会には最初から不参加にしていた。
年に一度の舞台。
20人ほどで20分ほど演奏するだけなので
そんなに大きなものではない。
けれどアンサンブルが大好きな私は
毎年それを楽しみにしていた。
アンサンブルが好きなのは
その中に身を置く感動を味わってしまったから。
自分の楽器が隣の人とハモっていく。
ベースや中間音域の生み出すハーモニーに
自分の音が乗っていく。
それらをさらに色濃くちょうど良い距離で打楽器が持ち上げてくれる。
複数の人と複数の楽器と無数の音が重なりながら同じ場所に向かっていくというのは
本当に気持ちがいいもの。
最初の一音を生み出す呼吸の一歩前の静けさと
最後の一音の余韻がすっと消えた瞬間の静けさ
この二つはまさに”時間が止まる”と表現するのがぴったりで
ゾーンに入っているような感覚になる。
鳥肌が立つことも少なくない。
もう3ヶ月ほどアンサンブルをしていない。
ふとあの瞬間の身体に染みついた感覚を思い出すことがある。
もう一度って思ってしまう。
誰かと共に奏でられる日はいつ訪れるだろう。
アンサンブルの楽譜を指でなぞり
頭の中で音を鳴らしながら
その時を待っている。