見出し画像

エビフライの形をした雲を見たことがあるだろうか?(ある者は挙手をせよ)

私はある。自慢げに言う、私はある。それはそれはエビフライだった。くるんと背を丸めた先割れ尻尾のおいしそうなエビフライを朝9時過ぎの空に見つけた。タイトル画像がその当時の写真だ。エビフライの雲を見つけた私は私自身が、なんとかわいい人間なんだろうと思った。


雨が降っていない空にも小さく虹が浮かんでいるのも、太陽の周りにまあるくくっきりとハロ現象(下部分のみ二重の虹だった!)が起こっているのもこの目で見た。ひらがなの「ひ」のかたちをした雲が夕暮れに浮かんでいたとき、あのひとに教えたいとカメラを構えたがうまく撮れなかった。

私はいつもぼんやり空を見上げている。職場から出てきてまず一番星を見つけることがまずひとつめの帰り支度だ。藍色とクリーム色がまだじんわり混じり合っていると少し得した気持ちになる。ふたつめはマフラーを巻くこと。みっつめに夕飯のことを考えて、今日は帰りにあれを買って帰ろうと思ったことはだいたい忘れている。

私はいつもなにかを探している。足元のどんぐり、キレイな植物、変な形の雲、昨日より色が落ちた木々、オシャレなスニーカーを履いた人、落ちている片方の手袋はとりあえずフェンスにかけておく。

まっすぐ前を向いて歩くことができない大きな子どもなのだ。下を向いたり、上を向いたり、横を向いたり。まっすぐ前を向いているときに正面から人が向かってくることが気まずくて苦手だ。だれがおまえの顔なんか見るかと思われるだろうがそうは言っても苦手なのだ。私も向かってくる人の顔を必ず見てしまうので、きっとあちらもそうだと思い、工事現場の大きなクレーンに視線を移してやり過ごす。見慣れた標識を見つめてみたり、いつも通るおうちからはみ出た大きなかぼちゃのツルは何度も見た。そうしているうちにある日突然わたしはエビフライになった。いや、私がエビフライになったのではない。あれはエビフライだと思った。二本目のエビフライにはまだ出会えていない。


今日の夜空は明るくて浮かぶ雲がよく見える。

私はいつも何かを探している。高くて遠くに並ぶうろこ雲、ひらがなの『ひ』の雲、キレイな夕暮れ、日の当たるところから色付いていく木々、車の窓にくっついたカタツムリ。楽しいことを見つける才能は私だけのものだ。いつもぼうっとイイものを探す私が、私はとても好きだと思う。


2021.11.23 umi

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集