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めいさ80

「初代シーホーク」、「シーホーク2」と来たのでいよいよ「シーガル」について書こうと思ったのだが、これがまた特殊な船で「半没水型双胴船」と言われる双胴船型でのデビューとなった。本船はそもそも東海汽船が計画し建造した船ではなく、1979(昭54)年に三井造船と日本舶用機器開発協会が共同で開発した同船型において世界初の実用船として建造された「めいさ80」をその各種試験後に三井造船から傭船したものである。 先ずはシーガルの紹介に先立って半没水型双胴船とは何ぞや?  そしてその開発の経緯も各種資料を引用しながら今回は記したいと思う。


半没水型双胴船とは?
SSC(Semi-Sub-merged Catamaran)もしくはSWATH(Small Waterplane Area Twin Hull )と呼ばれ、その形状は排水量の主要部分を魚雷型の没水船体として水面下に配し、この没水部と水面上の上部構造物とを流線形状のストラットで結合したものである。

通常の双胴船とSSC(SWATH)との船型の比較
(Wikipediaより)

このような形状を有する半没水型双胴船の特徴として
①波浪中での船体の揺れが小さい
②波浪中での速力低下が小さい
③高速性能が優れている
④甲板面積が広くとれる
⑤荷役効率および作業効率を高める事が出来る
等が挙げられる。

1962年 マサチューセッツ工科大学教授P.モンデルは、"Novel Ship Types" を評価した論文の中で単胴型半没水船を取り上げ、また1965年には東京大学の元良教授が半没水船の基本原理に関する論文を発表している。1969年にはR.レオポルド氏(当時リットン・インダストリーズ社、後にアメリカ海軍)は"TRISEC"と称する半没水型双胴船についての論文を発表した。
その後三井造船において1973年に至るまで基礎研究ならびに各種の水槽模型実験を実施、1974〜75年にはカーフェリーについて、フィージビリティ・スタディを行なった。その間1973年には、アメリカ海軍が実験支授船として排水量190トンの半没水型双胴船のSSPカイマリノ Kaimalinoを建造し、優れた耐航性能を実証した。

アメリカ海軍の実験支援船「カイマリノ」
(U.S.NAVY)

1976年からは三井造船と日本舶用機器開発協会との共同研究により海洋支援船の設計を含む総合的な研究を実施し、1977年には全長約12mの実験艇「マリンエース」が建造され、海上運転などによって抵抗推進性能をはじめ、船体運動性能、フィン制御システムの機能、船体強度などが確認された。

国内初のSSC実験船「マリンエース」
(船の科学館にて)

これらの開発研究で蓄積された技術をもとに完成したのが 「めいさ80」である。

めいさ80
(日本財団図書館より)

めいさ80 主要目
全長 35.9m   垂線間長31.5m
幅 17.1m   深さ 5.8m
吃水 3.2m   総トン数 692.8t
主要構造  耐触アルミ合金
航行区域  限定沿海
乗客定員  446名    乗組員 7名
最大速力  約27ノット
主機関   富士 SEMTディーゼル2基
連続最大出力  8,100 P S

船名の「めいさ」は英語のMesa(一段高くなったテーブル状の山頂の意)から取られているが、同時にMitsuiEnginerin&Shipbuldingのイニシャルに80年代のエース(Ace) という抱負と期待を込めたものであったという。

 本船は2年間に亘る試験船としてデータ採取を行なった後、東海汽船に傭船され 「シーガル」と命名、1981(昭56)年9月にいよいよ伊豆七島航路にデビューするのである。

この時点では東海汽船の船隊ではないので少し異端の記事となってしまったが、本船の特性上SSCの説明も避けては通れないので、ほとんどが資料からの引用だがワンクッション置いてめいさの紹介をさせてもらった。

次回は「シーガル」の概要と、三井SSCのその後について少しだけ触れたいと思う。


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