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シーホーク2

1977年に就航した初代「シーホーク」の成功を受け2年後の1979年、東海汽船は更に大型の高速船導入を決めた。それが今回紹介する「シーホーク2」である。
初代「シーホーク」が我が国において初めて外洋に面した旅客航路を開拓した本格的な大型軽合金製高速艇になるのだが、前項「シーホーク」でも記した通り就航後は当初の予想を大幅に上回る輸送量を上げ、旅客積み残しのケースも増えた為に計画より早期に大型艇投入の要求が高まり、シーホーク2の建造が実現したという経緯がある。

本船は初代に引き続き船舶整備公団、東海汽船の共有として 発注され、三菱重工下関造船所において建造、1980年2月13日進水、同年5月15日引渡された。
基本は稲取~伊豆大島航路に投入されていたが多客期には熱海~大島、伊東~大島航路にも赴いた。


シーホーク2 竣工パンフレット
(表紙  筆者所蔵)

シーホーク2の概要
全長 48.30m   型幅 8.20m
総トン数 519.94t
旅客定員(椅子席) 401名   乗組員 6名
主機関  過給機付き高速ディーゼル 2基
最大出力  2,420馬力 / 1,425回転
最高速力 30.59kt
航海速力(70%載貨状態、常用出力15%・シーマージン) 26.5kt
航続距離  約370km/ 26.5kt


シーホーク2 竣工パンフレット
(見開き  筆者所蔵)

本船の仕様要求は初代の実績から旅客定員を400名以上とする事、現行スケジュールが守れる事、就航可能な海象限界が上がる事等が上げられた。海象限界は先代の波高2.5mに対し3.0mとなる事を想定し基本計画が組まれた。

シーホーク2 一般配置図
(世界の艦船より)


本船は長甲板室を有する平甲板型船で、初代の船体中央が一段高くなったのに対し上甲板室内はすべてフラットな二層の旅客室となり客席はすべて椅子席で定員は401名。 先代では新幹線普通車並の寸法とピッチであったが、本船ではさらに改善が図られた。特に上甲板下の客室Dはリクライニングシートとなりグリーン車並とした。客室は上甲板上船首よりA室(75名)、B室(118名)、C室(144名)、D室(64名)で、椅子の配置は横方向で3-6-3とした。
上甲板上の客室は窓と椅子の配置を考慮したが、上甲板下の客室Dは窓を配置できないので他室よりもゆったりさせ、リクライニングシートとともにテレビが設置されていた。また先代にはなかったインテリアの特徴として客室Dの前壁には大島のシンボルである椿の花をモチーフとした灰色杭火石のレリーフを、客室Bの前壁には三原山と椿の花を原色で表わしたレリーフが設置されていた(竣工パンフレット他参照)。
また上甲板室上部の操舵室後部には船室外に出られる展望台が設けられた。

東海汽船 シップガイドより
(筆者所蔵)

伊豆諸島海域では約10年間活躍したが、その中でも特筆されるべき出来事はやはり1986(昭61)年11年に発生した伊豆大島三原山カルデラからの割れ目噴火による全島民の島外避難であろう。
以下簡単に本船の避難活動を時系列で記しておく。
1986年11月21日  16:15
三原山カルデラからの割れ目噴火発生
この時定期便として大島を出航し稲取に向かっていた本船を東海汽船大島支店長の判断で臨時便の運航を決定し稲取で定期便旅客を降ろした後大島に引き返す。
避難第一船として19:02元町港を出港、観光客388名が稲取へ向かう。
その後すぐに大島に引き返し避難第三船として20:45、島民400名を乗せ稲取へ(第二船はシーガル、20:13発熱海へ島民386名)。

噴火避難当時の様子
(報道映像より)


再び大島へ向かい第五船として23:08発稲取向け島民334名(第四船はかとれあ丸、21:37発伊東へ島民1,300名)
0:19発東京向けさるびあ丸2,092名
3:05発東京向けすとれちあ丸2,435名
そして避難最終便として再び本船は大島へ向かい、6:54に最後まで避難船の接岸支援、避難誘導に当たっていた東海汽船職員72名を乗せ熱海へ向かった。

本災害において実に4往復の避難支援を行ったシーホーク2の活躍は伊豆半島の稲取や伊東、熱海との距離が近いと言う事もあったが高速船の機動力による迅速な避難の実績とその必要性をはっきりと示した。その事は後の行政による防災対策策定、東海汽船の経営計画においても大きな影響を及ぼしたのは言うまでもない。

船による避難の様子
(報道映像より 映ってる船はさるびあ丸)

先代と共に東海汽船の高速船隊整備の礎を築いた本船であるが、1994年に売却されパナマ籍となった後中国方面へ行ったとされるがその行方は判然とせず残念な限りである。
彼の地でも人々に愛され幸せな人生ならぬ「船生」を送ってくれたであろうと願う他ない。

シーホーク2  テレホンカード
(筆者所蔵)









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