性格形成は家庭環境とは無関係? (2)
○親が裕福だと子供は成績が良い?──私たちの常識を突き崩す双生児法
ちなみに私は双生児法を全面的に否定したいとは思っておらず、むしろ私たちの誤った常識を突き崩してくれる手法になると理解している。その例として双生児法の紹介を兼ねて安藤寿康氏の「格差と学業成績―遺伝か環境か」というタイトル記事(注1)の概要を示してみる。なお詳細は直接HPを参照して頂きたい。
〔教育社会学や教育経済学から、「親の学歴や社会階層が子どもの学習環境と学力を大きく規定し、教育格差を再生産している」という指摘がなされている。この指摘は(今回、安藤氏が資料とした)首都圏1472組の小学生双生児における親の収入や学歴、子どもの学業成績などに関する調査結果とも矛盾しなかった。
調査結果は親の所得が高いほど、子どもの学業成績はよく、学習時間も長く、塾などに通う割合も高いことを示した。このため「親の収入が低いと子どもの学習環境は恵まれず、学業成績も悪くなる」という印象を持ってしまう。
しかし調査結果のグラフは、社会経済的な階層間の差以上に、大きな階層内のばらつきの存在を示している。グラフから教育環境とその成果において、階層の格差は確かにあるものの、教育社会学などが強調するほど階層の境目は明確ではなく、むしろ同じ階層の中にも階層間の差を上回る大きな個人差があることが分かる。(つまり教育社会学や教育経済学の指摘は正しいとはいえない。)
そこで同じ階層内にある、学業成績や学習経験の大きな個人差の要因は何にあるかを、双生児法を用いて遺伝要因と環境要因に分けて検討した。すると学業成績に関しては低学年で70%以上、高学年でも65%程度が遺伝要因で説明され、また共有環境による要因の影響はないという結果になった。〕