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短編小説その②駅でテレワークしたかっただけなのに


ゴリ子はアパレル社長で、YouTubeチャンネル登録者数も100万人をこえる人気インフルエンサーである。更に、大学の教授も勤めていてなんでこんなに忙しくなってしまったのか分からないくらいに忙しい。今日も、朝からまず、事務所で来季の新作のデザインと素材選び、そしてその後休む暇もなくYouTubeの撮影を行った。そして、今緊急でPCを開いて対応が必要だ。いつもなら車で移動しているから、すぐにできる。しかし、今日の様な忙しい日に限って運転手が体調を崩した。秘書によると、タクシーでの移動よりも電車の方が早いので、とても久しぶりにこの電車に乗ったのだ。電車とは本当に空気も悪くて変な人がたくさんいる。特にこのずっと回っている電車。とても臭い人もいた。なんてことだ。そして、テレワークのできるスペースを探している。と、電話ボックスくらいの大きさのスペースを見つけた。丁度開いていたので、駆け込んで、すぐさまパソコンを開いた。

「霧が発生する恐れがあります。」

この、ボックスの表に書いている言葉だ。

ゴリ子は用事を済ませ、ボックスから出ようとして。そしたら、ボックス内に霧が蔓延している事に気付いた。しかもかなり濃い霧だ。こんな霧が発生することがあるのだろうか。こんな霧、小学生くらいの時に行った火災訓練の煙ハウスぶりだ。でも何の臭いもしない。どうやら、火災ではないようだ。安心してさっさとこのボックスから出ようとノブに手をかける。なぜかこのドア少しさびている。容易には開かなくなっている。霧もおかしいがこのボックス自体かなりおかしいのだ。

ギギーーーー

あけたらまず鼻に先ほど、電車にいた臭い人の5000倍くらいの刺激臭がする。そして、目の前に広がったのは

真っ暗だった。何が起きているのかさっぱり分からなかったが、周囲の異変が異常であり気が気でない。スマホのライトをつけた。ざっと見渡して分かった事は、ここは、廃れた駅構内だった。場所は変わっていないのだが、人の姿はどこにもなかった。そして、水が流れている。この刺激臭の原因はこの、この水路のようだ。ゴリ子は霧の発生する駅のテレワークスペースで作業しただけで、廃駅に迷い込んでしまったのだ。もしかしたら、何千年後の世界かもしれない。


霧の発生する恐れのある、テレワークスペースにご注意いただきたい。



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